【テクニカルレポート】セミミクロフロー領域におけるカラムサイズの影響
本記事は、和光純薬時報 Vol.61 No.3(1993年7月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
近年、分析試料の微量化に伴う高感度化、LC-MS への対応、及び移動相溶媒の節約の目的で、カラム壁方向への溶質の拡散が抑制可能な内径 2 mm 程度のセミミクロカラムの使用が増しています。しかし、カラムの内径が小さくなれば、①使用時の圧力が高くなり装置やカラムの劣化を速める原因となったり、②カラムへの最適充填が困難となり理論どおりの性能が発揮されないなどの問題がありました。
今回これらの問題を解決し、より使いやすいカラムサイズの選定を目的に、セミミクロフロー領域におけるカラムサイズの影響について検討を行いました。
カラム容量をほぼ一定とし、内径と長さを種々変化させた 5 種類のパックドカラムを調製後多環芳香族化合物の分析から、カラムの基本性能の検討を行いました。その結果を表 1 に示しましたが、内径 3.2 ~ 4.0 mm、長さ 75 ~ 100 mm のカラムサイズの時最大の段数(N/m)が得られ、この範囲で充填効率が最大になるものと思われます。また、分析圧は内径 2.1 mm に比べて 1/3 以下となり、使用時の操作性が改善されることになります。
表 1. 種々のカラムサイズにおける理論段数(N)と圧力(P)の変化
Column Size | V (µL) (*1) | N (*2) | N/m | P (kg/cm2) (*3) |
---|---|---|---|---|
2.1 mm I.D. × 225 mm | 779 | 11,300 | 50,000 | 46 |
2.6 mm I.D. × 150 mm | 796 | 7,200 | 48,000 | 20 |
3.2 mm I.D. × 100 mm | 804 | 7,200 | 48,000 | 13 |
4.0 mm I.D. × 75 mm | 942 | 4,500 | 60,000 | 7 |
4.6 mm I.D. × 50 mm | 831 | 2,800 | 56,000 | 4 |
*1 : Column volume
*2 : Calculation for Naphthalene peak
*3 : Practical value
[Conditions]
Eluent : 60%CH3CN in H2O
Flow rate : 0.25 mL/min. at 40 ℃
Sample : Uracil, Benzene, Naphthalene
図 1 にグラジエント法による PTH-アミノ酸の分析例を示しましたが、2.1 mm I.D. × 225 mm カラムより、3.2 mm I.D. × 100 mm カラムの方が分離性能、圧力とも有利になっています。
以上の検討結果から、内径 2 mm 程度のカラムより内径が太く、長さの短いカラムの使用は、セミミクロフロー領域においても有効な分析手段になるものと思われます。