【テクニカルレポート】セミミクロカラム使用時の注意点について
本記事は、和光純薬時報 Vol.65 No.3(1997年7月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
前報において、内径2 mm程度のセミミクロカラムの利用は、内径4~6 mmの汎用カラムに比べ (1) 約5倍程度の感度アップが望めること、(2) 溶媒使用量の減少によりランニングコストが下がり、環境にも優しく、LC/MSにも接続可能であるなど有用性が高いことを説明した。しかし、実際の取扱いにおいては、ハード及びソフト面でいくつかの注意が必要である。
ハード面からみれば、現在市販されている装置はほぼ完成された感はあるが、オートインジェクターを使用するか、手動で注入するかによってもピーク形状や保持時間に差が生じる。図1.に多環芳香族化合物(PAHs)を分析した場合を例に示したが、オートインジェクターの使用により、初期に溶出される成分のピークの切れの悪化と保持時間の延びが認められる。これはオートインジェクターに取付けられたサンプルループの容量に原因があり、通常の使用において全く問題にならない要因でさえも、低流量領域での使用においては大きな問題となる。
ソフト面からみれば、"試料を何に溶かし、どのくらい注入するか"が最大のポイントであり、これらの影響もまた初期に溶出される成分のピークの形状に顕著に認められる。図2.にPAHsを極性の異なる溶媒に溶解し、同一量注入した場合のクロマトグラムの違いを示した。親水性が高く水に易溶な試料を水、もしくは移動相の初期溶媒に溶解して取扱う場合にはさして問題とならないが、PAHsのように疎水性の高い試料を、移動相より溶出力の強い溶媒に溶かして取扱う場合には"何に溶かすか"が重要となり、特に強溶出溶媒に溶かすことはピークのブロード化につながり、避けなければならない。また同一溶媒に溶かした場合においても、できる限り少量を注入する方がピーク形状の改善につながる。
以上、セミミクロカラムの使用時の注意点について説明したが、セミミクロカラムの特性と汎用カラムとの違いを十分に認識したうえで使用すれば、有効な分析手段になりうると考えている。