siyaku blog

- 研究の最前線、テクニカルレポート、実験のコツなどを幅広く紹介します。 -

【テクニカルレポート】セミミクロカラムの有用性について(汎用カラムとの分離比較)

本記事は、和光純薬時報 Vol.65 No.2(1997年4月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。

近年、微量成分の高感度検出、環境問題に起因する移動相溶媒の使用制限から、内径2 mm程度のセミミクロカラムの利用度が増している。セミミクロカラムは、汎用の分析カラムに比べ表1に示した利点と効果がある。

しかし、この利点を生かし十分に期待される効果を発揮させるためには、ハード及びソフト面での注意が必要である。表2に主な注意点を示したが、ハード面からみれば、現在市販されている装置は、それ自体セミミクロカラムに対応できるよう設計されているため、内径の細い配管に変更(0.25 mmから0.1 mm)するだけで十分に使用可能である。この際、検出器のセルはセミミクロ用に変更しない方が感度的に有利である(セミミクロ用セルは光路が短いため感度が不足する)。

  • 表1.セミミクロカラムの利点と効果
    利点 効果
    1) 検出感度の向上
    2) 移動相流量の低下(溶媒消費量の減少)
    約5倍程度の感度アップ
    ランニングコストの低下
    環境問題に対応可能
    LC/MSに対応可能
  • 表2.セミミクロカラム使用時の注意点
    1) ハード面
    • 低流量域においてポンプの流量精度が高いこと
    • 微量試料の再現性ある注入が可能なこと
    • カラム外のボイドボリュームが最小であること
    • ミキサー容量が適正であること(グラジエント分析の場合)
    2) ソフト面
    • 試料の溶解液が適正であること
    • 試料の注入量が適正であること

ソフト面からみれば、"試料を何に溶かし、どのくらい注入するか"が最大のポイントになる。詳細は次号にて紹介するが、試料はできる限り移動相組成(グラジエント分析の場合は初期濃度)に近い溶媒に溶解し、少量注入することが効果的である。

汎用カラムとの比較例として、発がん性物質や変異原性化合物を多数f組む多環芳香族化合物(PAHs)の一斉分析用に開発したWakosil-PAHsカラムを用いた16種類のPAHsの分離比較を図1に示した。両者とも試料の注入量(絶対量)は同一であるが、その検出感度と必要溶媒量には有意な差が認められる。

図1.16種類の多環芳香族化合物(PAHs)の分離比較
Conditions

Column
Wakosil-PAHs
Eluent
A:H2O, B:CH3CN
0-15 min B:50%, 15-45min B:95% (linear), 45-55min B:95%
Gradient Mixer Vol.
500 µL
Temp
40 ℃
Detector
UV 254 nm, 0.256 aufs
Instrument
Shimadzu LC-10A system
Sample
①Naphthalene, ②Acenaphthylene, ③Acenaphthene, ④Fluorene, ⑤Phenanthlene, ⑥Anthracene, ⑦Fluoranthene, ⑧Pyrene, ⑨Benz[a]anthracene, ⑩Chrysene, ⑪Benzo[b]fluoranthene, ⑫Benzo[k]fluoranthene, ⑬Benzo[a]pyrene, ⑭Dibenz[a,h]anthracene, ⑮Benzo[ghi]perylene, ⑯Indeno[1,2,3-cd]pyrene
Inj. Vol.
5.0 µL

以上、内径2 mm程度のセミミクロカラムの有用性と取扱時の注意事項について説明した。内径がさらに小さいミクロカラムの場合は、インジェクター、配管径と長さ、ミキサー容量、検出器のセルの交換などハード面の改善と、微量試料の取扱いへの対応などソフト面での困難解消が要求され、日常のルーチン分析には内径2 mm程度のセミミクロカラムが最適と考えている。

キーワード検索

月別アーカイブ

当サイトの文章・画像等の無断転載・複製等を禁止します。