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【連載】Talking of LAL「第47話 エンドトキシン試験法の国際調和」

本記事は、和光純薬時報 Vol.70 No.2(2002年4月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第47話 エンドトキシン試験法の国際調和

エンドトキシン試験法が 1980 年に米国薬局方(USP)に収載にされて以来、各国の局方にエンドトキシン試験法が収載されてきました。わが国でも、日本薬局方(JP、1988 年)、JIS(1992 年)、生物学的製剤基準(1993 年)にエンドトキシン試験法が収載されています。

近年、3 極の薬局方(USP、欧州薬局方(EP)、JP)の国際調和作業が行われており、エンドトキシン試験法は最終段階に入ったと思われます。今回は、このエンドトキシン試験法の国際調和について考えてみましょう。

国際調和の作業手順は、7 つのステージがあります。すなわち、調和対象項目を選定し、担当薬局方を指定するステージ 1(Identification)、3 薬局方を比較検討し、第一次案を作成するステージ 2(Investigation)、第二次案を作成するステージ 3(Proposal)、調和案を作成するステージ 4(Official Inquiry)、調和案を改訂して合意文書を作成し、調和合意署名を行うステージ 5(Consensus)、合意内容を各薬局方へ取り込むステージ 6(Adoption)、各薬局方に合意内容が反映されるステージ 7(Implementaion)です。

エンドトキシン試験法の国際調和は、1993年にJPが担当薬局方として作業が開始され、1994 年に第一次案が、1995 年に第二次案が、1996 年に調和案が提出されてきました。1997 年には合意文書が提出され、3 回の改訂を経た後、1999 年 9 月に調和合意署名が行われました。

2001 年 1 月には USP 及び EP が、合意文書に準拠して改正を行っています。JP でも 2001 年 4 月に発行された第十四改正日本薬局方(JP14)で、合意文書の内容が取り入れられています。すなわち、エンドトキシン試験法の国際調和は、現在ステージ 6ということになります。

合意書の内容を少し見てみましょう。

リムルス試薬は、Limulus Amebocyte Lysate ではなく amebocyte lysate となっています。これは、リムルス試薬の原料となるカブトガニが、アメリカ大陸に生息する Limulus polyphemus とアジア大陸に生息する Tachypleus tridentatus のどちらでも使用できるようにとの配慮と考えられます。

JP でも、13 局の「LAL 試薬」が「ライセート試薬」に変更されています。このシリーズも「Talking of LAL」から「Talking of AL」に代えた方がよいのか考えてしまいます。

方法としては、ゲル化法と光学的方法(比濁法と比色法)の 2 つが収載されています。トキシノメーター法は、光学的方法の中の比濁法に分類されます。複数の方法を採用しているため、異なる方法で異なる結果が得られる可能性が考えられます。このような場合は、ゲル化法によって最終の判定を行うことが定められています。

操作方法では、ライセート試薬と試料を等量混合すること、シングルテスト(single test vials)の場合は試料を直接添加することとなっていますが、その容量や試験管サイズの規定は特にありません。これは、これまで内径 10mm の試験管に試薬と試料を 0.1mL ずつ添加しなければならなかった規定がなくなり、試験方法に自由度が出てきたことになります。

光学的方法では、反応干渉因子試験におけるエンドトキシン回収率の規定が 50% から 200% に統一されました。これは、ゲル化法の誤差に配慮した結果かなと考えてしまいます。

その他、従来の JP13 や FDA のガイドライン(1987)とは異なる点がいくらか見られますが、詳しくは次回に譲ることにしたいと思います。いずれにしても、エンドトキシン試験法が公式に登場して 20 年、国際調和に取り組まれて 9 年が経過しています。日本でも多くの製剤にエンドトキシン試験法が適用されようとしています。

このように、一つの試験法が公式に採用され、広く行き渡り、国際的に統一されて行くには、長い時間が必要であることが判ります。そして、その陰には関係者のたゆまぬ努力があってこそ、国際調和が実現してゆくのだと思います。

エンドトキシン試験法は、局方の国際調和合意文書にサインされた最初の項目だと聞いています。この間、国際調和の担当薬局方として努力された方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。今後、ステージ 7 に向けて、私たちも協力していこうではありませんか。

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