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いまさら聞けない!? 関心が高まる有機フッ素化合物(PFAS)を解説

PFASとは

PFASは、有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称(Per and Poly fluoroalkyl substances)をいい、炭素の数やフッ素の結合位置などで4700種以上の化合物が含まれています。
PFASは撥水・撥油性、難燃性、耐薬品性などの化学的性質を持ち、その性質から工業製品から日用製品にまで幅広く使用され、私たちの生活に欠かせない化合物となっています。

  • PFASの代表的な使用例
    • フライパンなどのフッ素加工剤
    • 食品包装紙(耐油紙)
    • 防水・防汚スプレー
    • 消火器(泡消火剤)
    • 半導体の表面処理剤   など

PFASの中でも代表的なPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は幅広い用途で使用されてきました。また、PFOSよりもアルキル鎖が短いPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)についてもPFOSと類似した性質を持つことから多く使用されてきました。

  • PFOSPerfluorooctanesulfonic Acid)
  • PFOA (Perfluorooctanoic Acid)
  • PFHxS (Perfluorohexanesulfonic acid)

図 PHOS, PFAS, PFHxSの化学構造式

環境・人への影響

PFASは便利な一方で、その難分解性、高拡散性から、生物・人への影響が懸念されています。

難分解性

PFASは化学的に極めて安定であることから自然界ではほとんど分解されず、半減期は数十年と言われています。このことから、永遠の化合物、フォーエバーケミカル(Forever Chemical)とも呼ばれます。分解されないため、廃棄されると長期間環境中に滞留することとなります。

高拡散性

PFASは水溶性のため環境中に放出された場合、水系を通して広範囲に拡散しやすい性質があります。人の生活圏から離れた極域に生息するホッキョクグマからの検出例があることからも、拡散性の高さが分かります。

健康への影響の懸念

PFASは生物への蓄積も確認されており、人の血中・母乳などからも検出されています。また、コレステロール値の上昇、発がん、免疫系等との関連性が報告されていますが、科学的知見が不十分であることから、国は引き続き国内外の最新の情報収集、検出状況の把握を進めることとしています。

排出削減の動き

PFASは環境や人への影響が懸念されていることから、世界的に排出削減に向けた動きが進んでいます。環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念される残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の、製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定しているPOPs条約では、PFASのうちPFOS、PFOAとそれらの代替物質であるPFHxSについて製造・使用、輸出入を制限または禁止としています。

POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)での規制状況
  2009年 附属書B (制限) PFOSとその塩およびPFOSF
  2019年 附属書A (廃絶) PFOAとその塩及びPFOA関連物質
  2022年 附属書A (廃絶) PFHxSとその塩及びPFHxS関連物質
附属書A(廃絶):製造・使用、輸出入の原則禁止
   附属書B(制限):製造・使用、輸出入の制限

POPs条約(経済産業省)


POPs条約を締結している日本では、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)によってPFOS、POFAの製造・輸入等の規制をしています。

日本での規制状況

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
  2010年 第一種特定化学物質 PFOSとその塩およびPFOSF
「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました(厚生労働省)
  2021年 第一種特定化学物質 PFOAとその塩
「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました (経済産業省)

基準の制定

PFOS、PFOAは規制されるまで長期にわたり生産、使用されていたことから、排出量が多く、環境水や水道水から検出される例があります。健康への影響が懸念されていることから、日本を含む各国で飲料水や環境水中のPFOS、PFOA濃度について指標が示されています。

米国
第一種飲料水規則 (米国環境保護庁 EPA)
  水道水の生涯健康勧告値・・・PFOS + PFOA 合算で70 ng/L (2016年)

2023年3月にはEPA より、法的拘束力のある水道水のMCL(最大汚染レベル(Maximum Contaminant Level)案 PFOS 4.0 ng/L、PFOA 4.0 ng/Lが示されています。

米国 EPA のニュースリリース(2023 年3月 14 日)について(厚生労働省)



EU
改正EU飲料水指令 (欧州化学物質庁 ECHA)

  PFAS Total・・・0.50 μg/L※1 Sum of PFAS・・・0.10 μg/L※2 (2021年)
※1 パーフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の合計値
※2 ANNEX III Part B point 3 にリストアップされている20種類のパーフルオロアルキル
化合物とポリフルオロアルキル化合物の合計値

Directive (EU) 2020/2184 of the European Parliament and of the Council of 16 December 2020 on the quality of water intended for human consumption (recast) (Text with EEA relevance)



日本
水道法

  水質管理目標値(暫定目標値) PFOS及びPFOA合算・・・50 ng/L (2020年)

水質汚濁に係る環境基準
  要監視項目 指針値(暫定) PFOS及びPFOA 合算 0.00005 mg/L(50 ng/L) 以下 (2020年)


水道水質基準について(厚生労働省)
「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて」(第5次答申)について(環境省)


PFASの環境や健康に及ぼす影響への関心の高まりと、指標が示されたことから、PFASの検査、分析需要が高まっています。

富士フイルム和光純薬の取り組み

当社ではPFOS・PFOAが水道法の要検討項目から水質管理目標設定項目への変更、目標値(暫定)の設定、それに伴う、固相抽出-LC-MS法の公示(目標31)と、PFHxSが要検討項目に収載されたことを受け、水質管理目標の検査方法に対応した混合標準液、内部標準液をラインアップしました。

3種有機ふっ素混合標準液(各2 μg/mLメタノール溶液)

水質管理目標設定項目・要検討項目で測定対象となっている直鎖型の値が明確なPFAS(PFHxS、PFOS、PFOA)の混合標準液です。

3種有機ふっ素混合内部標準液(各2 μg/mLメタノール溶液)

水質管理目標設定項目 別表17の2に掲載されている直鎖型の値が明確なPFAS(PFHxS-13C6、PFOS-13C8、PFOA-13C8)の混合内部標準液です。

当社ではこれら標準液を在庫販売しており、全国の検査需要にお応えできる体制を整えております。
さらに、基準値等の設定がない、PFOA、PFOS以外のPFASとその安定同位体標識化合物についても、標準液をラインアップしております。

AccuStandard社・CIL社 PFAS分析用試薬
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/category/03063.html

PFAS分析に関連する製品(標準液、標準品、前処理カラム、溶媒)はこちらからご覧いただけます。
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/category/00353.html

【参考】

日本薬学会 環境・衛生部会 環境・衛生薬学トピックス (日本薬学会)
https://bukai.pharm.or.jp/bukai_kanei/topics/topics23.html

PFOS及びPFOAに関する対応の手引き (環境省)
https://www.env.go.jp/content/000073850.pdf

PFOS、PFOAに関するQ&A集 (環境省)
https://www.env.go.jp/content/000150400.pdf

PFOAとその塩及びPFOA関連物質の有害性の概要(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/kagakubusshitsu/anzen_taisaku/pdf/r03_s01_02.pdf

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