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キレイを取り巻く環境の変化

本記事は、キッコーマンバイオケミファ株式会社 関 智章 様に執筆いただいたものです。

キッコーマンバイオケミファ(株)は、ATPふき取り検査試薬のメーカーとして、30年近く衛生検査事業を展開してきました。そのような中でも特に、2020年は国内の衛生検査業界にとって大きな転換点となっています。衛生管理とそれに関わる環境の変化について、食品衛生と環境衛生の観点から簡単にお話をいたします。

はじめに

最近の食品業界とそれを取り巻く環境を見てみると、検査に対する関心が高まっていることは間違いありません。

新型コロナウイルスの流行により、感染対策という観点から、環境衛生に対する関心が非常に高まっていますが、食品業界においても以下の要因から、食品衛生に対して同様の傾向が見られます。

  1. ① 各国で衛生検査に関する法規制が強化されている。
  2. ② 減塩やClean Label(抗生物質・人工保存料減)などのトレンドに伴い微生物管理への関心が高まっている。
  3. ③ アレルギー疾患の増加に伴いアレルゲン管理に対する要求が厳しくなっている。

食品業界における衛生管理の厳格化

食品衛生法が15年ぶりに改正され、2020年6月よりその一部が施行されました。その中でも大きな改正点として、すべての食品等事業者を対象とした「HACCPに沿った衛生管理の制度化」が挙げられます。HACCPとは食品の安全性を確保する為に開発された衛生管理の手法ですが、これまでは主に大規模な食品製造事業者(食品工場や大量調理施設など)にしか導入が進んでいませんでした。今回の改正により、小規模な食品工場に止まらず、スーパーマーケットや飲食店を含む、すべての食品関連の事業者が導入を義務付けられました。

こうした背景の中、中小事業者においても、食品衛生に関わる検査の需要が高まっています。大規模な食品製造事業者と異なり、専門的なスタッフや検査機器を有さない中小事業者の場合、外部の分析機関やコンサルティング業者に、検査や衛生管理業務の一部を委託しているケースがあります。一方で、コストやリードタイム等を理由に、検査業務の自前化を検討するケースも少なくありません。

環境衛生に対する関心の高まり

かねてより病院や福祉施設では、院内感染対策が課題となってきました。こういった施設では咳やくしゃみといった飛沫感染の他に、手指を介した接触感染も対策が重要視されています。特に院内環境や不特定多数が触れる高頻度接触面(手すり、ドアノブ、トイレや病室等の手が良く触れる場所ほか)に関しては、清拭による清掃や消毒が推奨されています。

ウイルスや病原性微生物は環境表面で一定期間生存することが知られていますが、感染対策には、環境表面の汚染状況の把握や、清拭・清掃の有効性の検証が欠かせません。こういった場面でも、リアルタイムに現場の衛生状態をモニタリングする手法として、簡易・迅速検査キットが活用されています。

新型コロナウイルスの発生以降、これまでこういった感染対策とは馴染みの薄かった一般事業者や施設においても、感染リスクをできるだけ少なくする、環境衛生管理が求められるようになりました。それに伴い、これまで日常的に行われてきた清掃業務においても、清掃品質の評価や検証に簡易・迅速検査キットが取り入れられ始めています。

今後について

現在のような環境下において、衛生管理の対する社会全体の関心、需要は、ますます高まっています。食品衛生、環境衛生どちらの分野においても共通しているのは、これまで関心のなかった人や関係性が低かった人達も衛生管理に向き合わなければならなくなったという点です。

これまでも検査時間の短縮や、衛生管理の効率化を求めて、簡易・迅速検査キットはそれぞれの業界で重用されてきました。今後は、"比較的簡単に"、"現場でできる"という2点を理由に、簡易・迅速検査キットの普及と活用が進むと予想されます。

参考資料

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