【クロマトQ&A】:LC/MSの移動相に使用される溶媒・試薬類の種類、グレードについて教えて下さい
本記事は、Analytical Circle No.35(2005年1月号)に掲載されたものです。
LC/MSの移動相に使用される溶媒・試薬類の種類、グレードについて教えて下さい。
最近は不揮発性の成分を含む移動相が使用できるMSもありますが、①不揮発性成分が析出するため除去する必要がある、②イオン化が抑制され感度が低下するなどの理由からLC/MS用の移動相は揮発性成分の方が望ましいといえます。主に用いられる移動相成分として有機溶媒、水、緩衝液があります。
有機溶媒はとくに制限はありません。メタノール、エタノールなどのアルコール、アセトニトリルやアセトンなどを使用します。ただプロトン移動を起こしにくい有機溶媒はイオン化効率の点からLC/MSには不向きといえます。ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエンやTHFなどが挙げられます。これらは、プロトン移動に関与し任意の比率で混じりあう、他の有機溶媒(メタノール、アセトニトリルなど)をポストカラムで混合することで使用が可能になります。
緩衝液の調製には、揮発性の酸、塩が用いられます。具体的には、ぎ酸、ぎ酸アンモニウム、酢酸や酢酸アンモニウムなどの酸・揮発性塩と、ピリジン、トリメチルアミンやアンモニアなどの揮発性塩基を組み合わせた緩衝液が使用されています。TFA(トリフルオロ酢酸)は揮発性ですが、強酸であるためイオン化を妨害して感度低下を招くためあまり用いられていません。その他塩酸、パーフルオロ酪酸などもイオン化を抑制することが知られています。最近ではイオン源の進歩によりTFAなどの強酸でも感度低下の起こらない装置もあります。
溶媒・試薬類はLC/MS分析に適した品位を有するグレードを選択します。通常はHPLCグレードのものを使用します。それ以外のグレードを使用する場合、できるだけ純度が高く分析を妨害する成分の少ないものを選択します。安定剤の有無や種類も確認します。
最近、LC/MS用の溶媒、試薬が市販されるようになっています。LC/MS分析でノイズの原因となる微量不純物を低減したもので、LC/MS分析適合性試験を実施、ノイズレベルを保証しています。図1にHPLC用とLC/MS用の比較例を示します。LC/MS分析に適した製品を使用することで、より高感度な分析が期待されます。
メタノール
測定条件
System | :Finnigan LCQ Duo(イオントラップ型) |
Ionization | :ESI |
Scan mode | :Full MS |
Mass range | :m/z 50-2000 |
Polarity | :Positive/Negative |
グラジエント条件 | :流速100 µL/min |
時間(分) | 0 | 4 | 8 | 15 | 15.1 | 25 |
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0.1 v/v% CH3COOH / H2O | 30 | 30 | 0 | 0 | 30 | 30 |
0.1 v/v% CH3COOH / CH3OH | 70 | 70 | 100 | 100 | 70 | 70 |