【テクニカルレポート】陰イオン界面活性剤の簡易分析
本記事は、和光純薬時報 Vol.72 No.3(2004年7月号)において、和光純薬工業 試薬研究所 吉田 貴三子が執筆したものです。
水道水の水質基準の改定および試験方法の見直しに伴い陰イオン界面活性剤*の分析法は、流路型吸光光度法から高速液体クロマトグラフ法へ改定された。この改定法では、分離用カラムにオクタデシルシリル基を化学結合したシリカゲルを充填したカラム(ODSカラム)又は、これと同等の性能を有するものを使用したHPLC-蛍光検出法が採用されている。
この方法に従って、分離用カラムにWakopak® Navi C18-5,4.6 x 250mm(ODSカラム)を使用して陰イオン界面活性剤測定用標準液(炭素数C10~14:和光純薬製)および洗剤を希釈して分析したところ、炭素数および分岐の状態により多数のピークとして検出された(図1)。
一方で、水質基準では陰イオン界面活性剤をトータル量として規定していることから、検出感度の向上および定量計算法の簡略化を考えるとピークの本数は少ないほど優位となる。
そこで、炭素数のみを認識して、しかも分岐の状態を認識しない充填剤を設計しWakopak® WS AS-Aquaとして開発した。Wakopak® WS AS-Aquaを使用して上記と同一の標準液を分析した時のクロマトグラムを図2に示したが、当初の設計通りに炭素数C10~14の陰イオン界面活性剤を5本のピークに検出し、しかも検出感度の向上も認められた。
各標準液濃度10 ppm~200 ppmの範囲で作成した検量線は直線を示し、公定法通りに濃縮処理した試料の定量下限に相等する1 0ppm (2µg/Lの検水を500倍濃縮)の標準液を測定したときの再現性は、CV=0.1~0.5% (n=5)、ODSで分析した時のピーク面積との相関はR2=0.9995~0.9999で良好な結果が得られた。
以上、Wakopak® WS AS-Aquaを分離用カラムに使用するとODSカラムを使用した場合に比べて、測定後の定量計算が容易になることに加えて、検出感度の向上が認められるため検水の濃縮率を抑えることができるなど利便性が高い方法と考えられる。
水質基準の改定と試験方法の見直しを機会に、流路型吸光光度法からHPLC法への切り替えを検討される際に、本カラムを検討に加えていただき有用性を確認していただければ幸いである。
参考資料
平成15年7月22日厚生労働省告示第261号 別表第24
*陰イオン界面活性剤(Sodium Decylbenzenesulfonate:C10、Sodium Undecylbenzenesulfonate:C11、Sodium Dodecylbenzenesulfonate:C12、Sodium Tridecylbenzenesulfonate:C13、Sodium Tetradecylbenzenesulfonate:C14)