【テクニカルレポート】HPLC による残留農薬の迅速分析について
本記事は、和光純薬時報 Vol.62 No.1(1994年1月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
ゴルフ場に散布される農薬による水質汚染が社会的な問題となっています。このため、平成 2 年には厚生省、環境庁によりゴルフ場使用農薬の水質目標(指針値)が設定されました。また最近では厚生省による水質基準の改正、及び環境庁による環境基準の改正に伴い、測定項目に農薬が追加設定され、その測定が義務づけられました。
一部の農薬(アシュラム、オキシン銅、チウラム)については HPLC 法による分析が行われていますが、近年検体数の増加から多成分同時分析に対するニーズが高まっています。これらニーズに応えるべくポーラスポリマーをベースとした専用カラムが市販されていますが、価格、耐久性、分離性能において十分に満足できるものとは思われません。
そこで今回シリカゲルをベースとした専用カラムの開発を目的に検討を行った結果、シアノプロピル基結合型の高純度シリカゲルを用いれば極性差の大きい農薬成分を効率良く分析可能で、しかもオキシン銅のピークテーリングを最少に抑えることができることを見出し、ワコーパック WS Agri-9 の開発に成功しました。
分析例として標準品(アシュラム、オキシン銅、MCPP、チウラム、シデュロン、イプロジオン、TPN、ペンシクロン、ペンスリドの 9 種類)を添加した河川水 500 mL を固相抽出カラムにより濃縮し、アセトニトリル 5 mL で溶出した時のクロマトグラム(注入量 10 µL)を図 1 に示しました。
全 9 種類の農薬を 25 分以内に分析可能であり、各標準品 100 ng 注入時の再現性は保持時間、ピーク面積とも良好(CV = 0.2%↓、2.0%↓、n = 11)な結果が得られました。また 5-1000 ng (ベンスリド:10-1000 ng)注入範囲における検量線は原点を通る直線を示し、相関係数はいずれも 0.999 以上と満足できる結果が得られました。
以上、ワコーパック WS Agri-9 は各種農薬を再現性良く迅速に一斉分析することが可能であり、有用性が高いものと考えています。