【テクニカルレポート】HPLC による合成抗菌剤の一斉分析
本記事は、和光純薬時報 Vol.63 No.2(1995年4月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
スーパーマーケットの店内に一歩足を踏み込めば、その物品の豊富さに驚かされ、さらに国内はもとより世界各国から運ばれてくる食肉、魚介類を始めとする畜水産物の種類の多さと安さに驚かされる。これら豊富な畜水産物が安定に供給される背景には、家畜の飼育方法の改良、魚介類の養殖方法の進歩は言うまでもなく、配合飼料の利用や各種抗菌性物質(合成抗菌剤および抗生物質)の効用が挙げられる。
合成抗菌剤は家畜や魚の感染症予防と治療の目的に使用され、畜水産物の生産性向上に必須の要素となっている。しかし、これらの合成抗菌剤の畜水産物への移行、残留は人体への悪影響が予想されるため、薬事法によりその使用基準が、また、食品衛生法によれば残留してはならない、と規定されている。
これらの合成抗菌剤 21 種類の試験方法は、日本薬学会第 114 年会 公衆衛生協議会資料(平成 6 年 3 月)衛生試験法に記載されている。今回、Wakosil-II 5C18HG 充填剤を用いて、本試験法に準拠した方法での一斉分析の検討を行った。
以下に測定条件と各標準溶液(濃度:2 ppm)を 20 µL 注入した時のクロマトグラムを示した。なお、本分析系での検出限界は 0.2 ppm であった。
合成抗菌剤の分析
カラム:Wakosil-II 5C18HG(4.6 × 150 mm)
1)イソクラティック条件
移動相 | 測定波長 | 合成抗菌剤 |
---|---|---|
Ⅰ CH3CN/25mM NaH2PO4 = 15/85 (V/V) | 265 nm | 1) SID 2) CLP 3) SDZ 4) STZ 5) CDX |
226 nm | 6) TPC | |
Ⅱ CH3CN/25mM NaH2PO4 = 25/75 (V/V) | 265 nm | 7) SMR 8) SMPD 9) SDD 10) SIZ 11) SMMX 12) FZD 13) SMXZ 14) OXA |
Ⅲ CH3CN/25mM NaH2PO4 = 38/62 (V/V) | 320 nm | 15) MRT |
265 nm | 16) SQ 17) SDMX 18) DFZ 19) NA 20) PMA | |
Ⅳ CH3CN/25mM NaH2PO4 = 70/30 (V/V) | 350 nm | 21) NCZ |
流速:0.5 mL/min.カラム温度:40℃
検出器:紫外吸収検出器(SPD-10A, 島津)
サンプル:20 µL 注入
2)グラジエント条件
標準溶液の調製
各標準品をメタノールに溶解して 100 µg/mL の標準原液とする。各標準原液 2.0 mL をとり、移動相 A 液を加えて 100 mL とする。本液 1 mL は合成抗菌剤 2 µg を含有する。移動相 A 液で適宜希釈して分析に用いた。最終濃度は 2, 0.5, 0.2 ppm で測定した。クロマトグラムは 2 ppm の場合を示した。
【1】合成抗菌剤 21 種の分析
【2】合成抗菌剤 21 種の一斉分析
合成抗菌剤
参考資料
日本薬学会第 114 年会 公衆衛生協議会資料(平成 6 年 3 月)衛生試験法