MassivEV™ EV Purification Column PS
MassivEV™ EV Purification Column PS
ドキュメント
製品概要
MassivEV™ EV Purification Column PSは大容量の細胞培養上清からエクソソームなどの細胞外小胞(EV)を単離・精製するためのカラムです。専用バッファー MassivEV™ Purification Buffer Set (別売, コードNo. 295-96601)と共に使用します。EVの膜表面に存在するホスファチジルセリン(PS)に対してカルシウム依存的に結合するTim4タンパク質を使用した「PSアフィニティー法」1)によって高純度なEVを簡便に精製できます。
ライセンスについて
本製品は研究用途でご使用ください。営利・商業目的にご使用される場合には、当社(ffwk-labchem-tec@fujifilm.com)までお問い合わせください。
特長
- 大容量(10 mL~Lスケール)の細胞培養上清から高純度なEVを効率良く単離・精製可能
- タンジェンシャルフローろ過(TFF)システムのような高価な装置は不要 ※ 別途ペリスタポンプが必要となります
間葉系幹細胞の細胞培養上清 200 mLからEVを単離・精製した場合の比較表 (当社調べ)
MassivEV™ | TFF+陰イオン交換クロマトグラフィー | TFF+サイズ排除クロマトグラフィー | |
---|---|---|---|
精製できるEV | PS陽性EV | フラクションにより異なる | フラクションにより異なる |
純度 | 高い | 低い | 低い |
精製段階の工程数 | 1工程 ∟PSアフィニティー法 |
2工程 ∟TFFシステム ∟陰イオン交換クロマトグラフィー |
2工程 ∟TFFシステム ∟サイズ排除クロマトグラフィー |
回収したEV粒子数 (参考値) | 1.7x1011 particles | 1.1×1011 particles | 0.7×1011 particles |
精製段階にかかる時間 | 8時間 | 10時間 | 10時間 |
サンプル
細胞培養上清(MSCなど): 10 mL~ L スケール
処理能力
1 mL (コードNo. 131-19491) | 5 mL (コードNo. 137-19493) | |
---|---|---|
処理サンプル量※1 | 200 mL | 1 L |
動的結合容量※2 | 5×1011 particles/mLレジン | 2.5×1012 particles/5 mLレジン |
原理
PSアフィニティー法は、EVの表面に存在するホスファチジルセリン(PS)と特異的に結合するTim4タンパク質を利用した当社独自のEV単離手法です。
PS-Tim4結合の高い特異性とキレート剤によるマイルドな溶出で高純度なEVをインタクトな状態で単離できます。
図1 MassivEV™ EV Purification Column PS (PSアフィニティー法)による細胞外小胞の単離・精製の原理
プロトコル
下記は標準的なプロトコルの概要です。詳細な手順は取扱説明書をご確認ください。なおサンプル反応時の流速を 2 倍にして操作時間を短縮する方法もございます。詳細は取扱説明書(時短 Ver.)をご覧ください。
01
任意の細胞を培養し、細胞増殖とEV産生を行い、細胞培養上清を回収する。
(>2時間)
02
細胞培養上清にEV Binding Enhancerを添加する。
03
遠心分離もしくはフィルターによって夾雑物を除去する。
04
室温以上の温度(25-28℃)になるように細胞培養上清を加温し、フィルターでろ過する。
(>7時間)
05
カラムを室温に戻し、Washing Bufferをカラムに流す。
06
細胞培養上清をカラムに流し、EVのPSとレジンのTim4タンパク質を反応させる。
07
EV Binding Enhancer/Washing Bufferをカラムに流し、レジンを洗浄する。
08
EV Elution/EV-Stabilizer Bufferでカラム内のEV Binding Enhancer/Washing Bufferを40%置換する。
その後、EV回収用チューブをセットし、EV Elution/EV-Stabilizer Bufferを流してEVを回収する。
09
Washing Bufferを流した後、20%エタノール/Storage Bufferを流す。カラム上部にパラフィルムを巻いて冷蔵(2-10℃)で保存する。
(30分~ 1時間)
10
ゲルろ過もしくは限外ろ過によってバッファー交換を行う。
カラム処理における器具・装置の接続例はサポート資料をご覧ください。
【プロトコル】 MassivEV™ EV Purification Column PSを用いた細胞外小胞の大量精製
(Youtube 3:26)
データ
性能データ
間葉系幹細胞(MSC) 細胞培養上清からのEV単離・精製
骨髄由来MSCを増殖培地(MSCulture™/10% FBS)およびEV産生培地(EV-Up™)で培養し、細胞培養上清を回収後、0.22 μmのフィルターでろ過した。ろ過処理後の細胞培養上清 200 mLをサンプルとして、以下4つの方法でEVを単離・精製した。また精製後のEV溶液はNanoparticle Tracking Analysis (NTA)、ELISA、BCA法にてそれぞれ解析した。
<単離手法>
- MassivEV™
- MassivEV™ EV Purification Column PS / MassivEV™ Purification Buffer Set (PSアフィニティー法)
- TFF
- タンデンシャルフローろ過(500 kDa)のみ
- TFF+AEX
- タンデンシャルフローろ過(500 kDa)+陰イオン交換クロマトグラフィー
- TFF+SEC
- タンデンシャルフローろ過(500 kDa)+サイズ排除クロマトグラフィー
(1) NTAによる粒子解析
[結果]
MassivEV™はTFFと比較して粒子数は少ないものの、TFF+AEXやTFF+SECと比較して多くの粒子を得ることができた。
(2) CD63およびCD81 ELISAによるEVの回収率 (n=3)
[結果]
MassivEV™は従来法と比較して高いEV回収率を示した。
(3) タンパク質 1μgあたりの粒子数
EVの純度を示す指標の1つとして、タンパク質あたりの粒子数が有効であることが報告されている5)。回収したEV溶液の総タンパク質量をBCA法で、粒子数をNTAでそれぞれ測定し、タンパク質 1μgあたりの粒子数を比較した。
[結果]
MassivEV™は従来法と比較してタンパク質 1μgあたりの粒子数が多く、より純度の高いEVが回収できていることが示唆された。
参考文献
- Nakai, W. et al.: Sci. Rep. 6(1), 1(2016).
A novel affinity-based method for the isolation of highly purified extracellular vesicles - Mansouri, N. et al.: JCI insight, 4(21), e128060(2019).
Mesenchymal stromal cell exosomes prevent and revert experimental pulmonary fibrosis through modulation of monocyte phenotypes - Angioni, R. et al.: Int. J. Mol. Sci., 21(22), 8874(2020).
Administration of human MSC-derived extracellular vesicles for the treatment of primary sclerosing cholangitis: preclinical data in MDR2 knockout mice - Perets, N. et al.: Mol. Autism, 11(1), 65(2020).
Exosomes derived from mesenchymal stem cells improved core symptoms of genetically modified mouse model of autism Shank3B - Théry, C. et al.: J. Extracell. Vesicles, 7(1), 1535750(2018).
Minimal information for studies of extracellular vesicles 2018 (MISEV2018): a position statement of the International Society for Extracellular Vesicles and update of the MISEV2014 guidelines
FAQ
キットの使用について
- 本製品で測定する際に必要な試薬、器具、装置は何ですか。
-
本製品で測定する際に必要な試薬、器具、装置は以下の通りです。
<試薬>
- MassivEV™ Purification Buffer Set (コードNo. 295-96601)
- 細胞増殖用培地 (コードNo. 132-19345 / 133-19331)
- EV産生用培地 (コードNo. 053-09451 / 298-84001)
- 99.5%エタノール
- 超純水
<器具・装置> ※手法によって要/不要が異なります。取扱説明書をご確認ください。
- 遠心分離機
- セルストレーナー(例: FALCON, コードNo. 640-50471, メーカーコード 352340)
- 5 μm フィルター(例: GVS社, メーカーコード 1215396)
- 0.8 μm フィルター(例: GVS社, メーカーコード 1214568)
- 0.22 μm フィルター(例: Corning社, コードNo. 649-02211, メーカーコード 431118)
- インキュベーターもしくはウォーターバス(37℃加温できるもの)
- ペリスタポンプ(例: Repligen社, メーカーコード ACJR-U10-R)
- 送液チューブ (サポート資料参照)
- 回収用チューブ(例: Corning社, コードNo. 643-00151, メーカーコード 430791)
- 限外ろ過膜【100kDa/PES 素材】(例: ザルトリウス社, メーカーコード VS0141)
- ゲルろ過カラム(例: Cytiva社 メーカーコード 28918004)
- 送液に使用するチューブに推奨はありますか。またチューブの接続方法はどのようにすればよいですか。
- 流速を制御でき、圧力に耐えられるものであれば、特に推奨はございません。ご使用のペリスタポンプに適合したチューブをご使用ください。
なおチューブの接続方法は以下の資料をご参照ください。
サポート資料: MassivEV EV Purification Column PS における精製システム例
- 細胞培養上清の前処理について、遠心分離とフィルターはどのように使い分ければ良いですか。
- 研究室の設備や既にお使いの器具・装置などを考慮して選択します。サンプルやアプリケーションによって使い分ける必要はございません。
- バッファー交換について、ゲルろ過と限外ろ過はどのように使い分ければ良いですか。
- 動物への投与を実施する場合には、ゲルろ過を推奨しております。
- 溶出時に得られるEV溶液の液量はどれくらいですか。
- 1 mLカラムの場合は4 mL、5 mLカラムの場合は20 mLとなります。
- パラフィルムを巻いたカラムはどれくらいの期間保存することができますか。
- 当社での検討では約1.5ヶ月保存できることを確認しています。
- カラムを繰り返して使用することは可能ですか。
- 同一サンプルの場合、カラムは繰り返し使用することができ、当社では5回(通常使用1回、繰り返し使用4回)まで使用できることを確認しています。
なお再使用する場合には、洗浄1(取扱説明書 【操作方法】⑤)から行います。
トラブルシューティング
- カラムにエアーが混入した場合、どのように対処すれば良いですか。
- 20%エタノールまたは 70%エタノールを下記流速で通液することで、カラムに混入したエアーを除去できる場合がございます。ただし、長期間もしくは複数回エアーが混入した場合は、レジンの性能が劣化する可能性がありますのでご注意ください。詳細は取扱説明書をご覧ください。
<流速>
1 mLカラムの場合:0.85 mL/min
5 mLカラムの場合:4.25 mL/min
ライセンスについて
- 本製品を営利目的に使用できますか。
- 本製品は研究用途でご使用ください。営利・商業目的にご使用される場合には、当社(ffwk-labchem-tec@fujifilm.com)までお問い合わせください。
概要・使用例
概要 | PS法を用いた、数十mL以上の培養上清からEVを簡便、高純度にワンステップでアフィニティー精製可能なプレパックカラムです。 動物実験に十分量のEVを精製可能な仕様でRUOグレード品として製品化しました。 |
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物性情報
「物性情報」は参考情報でございます。規格値を除き、この製品の性能を保証するものではございません。
本製品の品質及び性能については、本品の製品規格書をご確認ください。
なお目的のご研究に対しましては、予備検討を行う事をお勧めします。
製造元情報
別名一覧
- MassivEV™ Exosome Purification Column PS
- 掲載内容は本記事掲載時点の情報です。仕様変更などにより製品内容と実際のイメージが異なる場合があります。
- 製品規格・包装規格の改訂が行われた場合、画像と実際の製品の仕様が異なる場合があります。
- 掲載されている製品について
- 【試薬】
- 試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。
- 試験研究用以外にご使用された場合、いかなる保証も致しかねます。試験研究用以外の用途や原料にご使用希望の場合、弊社営業部門にお問合せください。
- 【医薬品原料】
- 製造専用医薬品及び医薬品添加物などを医薬品等の製造原料として製造業者向けに販売しています。製造専用医薬品(製品名に製造専用の表示があるもの)のご購入には、確認書が必要です。
- 表示している希望納入価格は「本体価格のみ」で消費税等は含まれておりません。
- 表示している希望納入価格は本記事掲載時点の価格です。