PSアフィニティー法と磁気ビーズによる細胞外小胞/エクソソーム単離・精製キット

MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2

エクソソームをはじめとする細胞外小胞 (EV: Extracellular Vesicle) は、さまざまな細胞から放出されるナノスケールの膜小胞であり、核酸 (mRNA、miRNAなど) やタンパク質を離れた細胞に受け渡すなど細胞間情報伝達におけるコミュニケーションツールとして注目を集めています。EV研究において、EVの単離・精製はその後のデータを左右する重要な工程ですが、改善すべき課題が多く存在します。例えば、従来の超遠心分離法やポリマー沈殿法では、多くの夾雑物が混入することにより、後の実験に影響を与えることが明らかとなっています。一方、抗体アフィニティー法や密度勾配遠心法では、高純度なEVの精製が可能であるものの、インタクトな状態のEVを精製することができず、EVが持つ本来の生理機能を解析できないといった問題があります。

当社はEVの膜表面に存在するホスファチジルセリン (PS) に結合するTim4タンパク質を利用したアフィニティー法である「PSアフィニティー法」を金沢大学 ナノ生命科学研究所の華山教授と共同で開発しました。本技術を製品化したMagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2は細胞培養上清、血清、血漿などのサンプルからEVを高純度かつ簡便に単離・精製できるキットです。

製品概要

MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2

MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2は細胞培養上清、血清、血漿などのサンプルからエクソソームをはじめとする細胞外小胞 (EV) を高純度かつ簡便に単離・精製できるキットです。EVの膜表面に存在するホスファチジルセリン (PS) とカルシウム依存的に結合するTim4タンパク質を応用することで、インタクトかつ高純度なEVの単離・精製を実現しました。本製品の原理であるPSアフィニティー法は、2024年に公開されたEV研究の国際標準ガイドラインであるMISEV2023でもEVの分離手法の1つとして紹介されています1)。

特長

  • 新規アフィニティー法 (PSアフィニティー法) によりEVを単離・精製
  • 従来の超遠心分離法よりも高純度なEVを高い収量で回収
  • ダメージの少ないインタクトなEVが取得でき、様々なアプリケーションに利用可能
  • 磁気ビーズによる簡便操作で、多検体処理と高い実験再現性を実現

サンプル

  • 細胞培養上清
  • 血清
  • 血漿 (ヘパリン、EDTA、くえん酸)
  • 尿
  • 糞便
  • 唾液 など
※ 脳脊髄液などからEVを単離した報告もあります。

原理

PSアフィニティー法は、金沢大学 ナノ生命科学研究所の華山教授と共同で開発したEVの表面に存在するホスファチジルセリン (PS) と特異的に結合するTim4タンパク質を利用した独自のEV単離手法です2)。PS-Tim4結合の高い特異性とキレート剤によるマイルドな溶出で高純度なEVをインタクトな状態で単離できます。

図1 PSアフィニティー法によるエクソソームの単離・精製
図1 PSアフィニティー法によるEVの単離・精製

PSアフィニティー法は大量精製や多検体精製にも対応

当社ではPSアフィニティー法を利用したEV大量精製カラムと多検体用精製キットもラインアップしております。

製品 サンプル種 サンプル量 同時処理可能なサンプル数
MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2 (本製品)
PSアフィニティー法と磁気ビーズ (マグネットスタンド) を組み合わせたEV単離・精製キット
細胞培養上清
体液 など
1 mL以下
限外ろ過による濃縮などで
最大50 mLまで対応
1~数十サンプル
MagCapture™ EV Isolation Kit PS for HTS
PSアフィニティー法と磁気ビーズ (自動抽出機器) を組み合わせたEV単離・精製キット
細胞培養上清
体液 など
5 mL以下
KingFisher™ Flex
96ウェルプレート: 1 mL以下
24ウェルプレート: 1-5 mL
数十~96サンプル※
※KingFisher™ Flex
MassivEV™ EV Purification Column PS
リッタースケールの細胞培養上清に対応したEV大量精製カラム
細胞培養上清 リッタースケール
10 mLから対応
1

プロトコル

以下はプロトコルの概要です。詳細なプロトコルは本ページの「添付文書」をご覧ください。

サンプル前処理プロトコル

本製品でLarge EVsもしくは
Small EVsが単離可能なサンプル

細胞培養上清

血清・ヘパリン血漿・尿・唾液

EDTA血漿・くえん酸血漿

※2 large EVsの取得
遠心分離 (10,000 x g, 30 min) して得られる沈殿をTBSに懸濁してサンプルとして使用してください。

エクソソームの単離/抽出/精製キット:
MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2
(Youtube, 7:48)

データ

従来手法との比較

プロテオミクス解析によるヒト血漿由来EVのタンパク質同定数およびEV Enrichment Scoreの比較

プロテオミクス解析によるヒト血漿由来EVのタンパク質同定数およびEV Enrichment Scoreの比較
<データ提供> 公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター 植田先生

ヒト血漿200 μLから各手法でEVを単離し、LC/MS Orbitrap Fusion Lumos with FAIMS Pro (DIA、120分) を用いてプロテオミクス解析を行った。EVの純度は同定した全タンパク質の総量における、EVマーカータンパク質の総量の割合 (EES: EV Enrichment Score、以下式参照) で比較した。

[結果]
本製品は、他の手法と比較してタンパク質の同定数が多かった。
またEESも高く、高純度なEVが単離できていることが示唆された。

サイズ排除クロマトグラフィーとの回収率比較

サイズ排除クロマトグラフィーとの回収率比較

骨髄由来MSC (BMMSC) の細胞培養上清およびヒト血清、ヘパリン血漿から本製品 (PS) もしくはサイズ排除クロマトグラフィー (SEC) でEVを単離・精製した。EVの回収量はCD9-もしくはCD63-Capture ヒトエクソソームELISAキット(ストレプトアビジンHRP)で測定した。

[結果]
本製品はSECよりも高いEV回収率を示した。

超遠心分離法で単離したEVとの抗炎症活性比較新潟大学大学院 医歯薬総合研究科 消化器内科学分野 寺井先生、土屋先生 (現 山梨大学) との共同研究

脂肪由来MSC (ADMSC) をサプリメントを添加したEV産生培地 EV-Up™ MSC EV産生用基礎培地,AFで培養した。その後、細胞培養上清から本製品もしくは超遠心分離法でEVを単離・精製した。単離したEVをマウス由来初代培養単球に添加し、炎症マーカーであるTNF-α (M1マーカー) と抗炎症マーカーであるCD206 (M2マーカー) の発現量をリアルタイムPCRで測定した。

TNF-α (炎症マーカー)
CD206 (抗炎症マーカー)

[結果]
本製品 (PSアフィニティー法) を用いることで、超遠心分離法よりも抗炎症活性の高いEVが得られた。

各サンプルからのEV単離・精製

血清・血漿

各種ヒト血液サンプルから本製品でEVを単離・精製した。EVの回収量はPS Capture™ エクソソームELISAキット (ストレプトアビジンHRP) で測定した。なお溶出バッファーは2種類の濃度 (1xおよび2x) で検討した。

[結果]
本製品によってヒト血清、血漿サンプルから高効率でEVを回収できた。
特に血漿サンプルは高濃度 (2x) の溶出バッファーを使用することで回収率が向上した。

細胞培養上清

>HEK293

HEK293を10% FBS含有D-MEM培地で増殖後、サプリメントを添加したEV産生培地 EV-Up™ MSC EV産生用基礎培地, AFで3日間培養した。その後、細胞培養上清から本製品でEVを単離・精製した。Input、フロースルー (FT)、単離後のEV溶液 (EV) 中のCD63シグナルを、CD63-Capture ヒトエクソソームELISAキット (ストレプトアビジンHRP) で測定し、EVの回収率を比較した。

[結果]
MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2は高いEV回収率を示した。

>COLO201

COLO201細胞培養上清から本製品を用いてEVの単離・精製を行った。単離したEVもしくは同量の溶出バッファー (50 μL) を、あらかじめ播種したヒト正常線維芽細胞へ添加し、48時間経過時点での細胞形態変化を測定した。

精製EV(0.7x107 particles)
溶出バッファーのみ
無処理

[結果]
本製品で単離・精製したEVや溶出バッファーを添加しても、細胞の形態変化や顕著な細胞死はほとんど観察されなかった。
したがって本製品で溶出したEVはそのまま細胞添加に使用できることが示唆された。

※ 溶出バッファー中にはEDTAが含まれています。EDTAが影響を与える場合には、限外ろ過などによるバッファー交換が必要です。

ライセンスについて

本製品は研究用途でご使用ください。営利・商業目的にご使用される場合には、当社 (ffwk-labchem-tec@fujifilm.com) までお問い合わせください。

参考文献

製品一覧

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MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2

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