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NMR Chemical Shifts ー溶媒のNMR論文より

本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しています。

NMR溶媒の論文として有名なあの論文、皆様も見たことあるかと思います。各種溶媒の各種重溶媒中での NMR データが一目でわかる便利な情報源です。そこで、NMRのケミカルシフトが掲載されている論文4報を紹介し比較していきます。

生成物の分析に一般的に用いられるのがNMRであり、純度や構造の決定には欠かせない分析手法です。その際に、ときには溶媒が残存していたり、不純物(脂質や可塑剤、シリコングリースなど)が混入することがあります。その際に便利なものが、「各種溶媒の各種重溶媒中での NMR データをまとめた論文」です。これにより生成物のピークなのか溶媒ピークなのかを判別することができます。合成系の研究室には一枚は印刷してあるはずです。

1.J. Org. Chem., 62, 7512-7515 (1997). DOI:10.1021/jo971176v

元祖のNMR溶媒の論文で、著者はイスラエルのバル=イラン大学のProf. Abraham Nudelman氏です。ドラッグデリバリーなど、薬化学が専門です。1994年にバル=イラン大学の教授となり、2008年には名誉教授となった大御所の先生です。2020年9月現在、65.8万回の閲覧回数を持ち1997年に公開されたにもかかわらず、未だにJOCの12カ月間の「Most Read Articles」の一位です。

2.Organometallics, 29, 2176-2179 (2010). DOI:10.1021/om100106e

2010年に掲載された論文で、有機金属錯体の合成で使うtetrahydrofuran-d8, toluene-d8, dichloromethane-d2, chlorobenzene-d5, and 2,2,2-trifluoroethanol-d3などの重溶媒が新たに追加されています。著者は、ワシントン大学とカリフォルニア工科大学のチームに加えて、JOCの元祖を執筆したイスラエルのバル=イラン大学のチームです。責任者は、ワシントン大学のKaren I. Goldberg教授で有機金属錯体が専門。2007年よりワシントン大学の教授となっています。

2020年9月現在、47.2万回の閲覧回数を持ち、こちらもOrganometallicsの「Most Read Articles」の一位です。

3.Org. Process Res. Dev., 20, 661-667 (2016). DOI:10.1021/acs.oprd.5b00417

OPR&Dからも2016年に現代版NMR溶媒の論文が掲載されました。こちらでは、2-Me-THF, n-heptane, and iso-propyl acetateといった実際の産業で使われる環境負荷の小さい溶媒の化学シフトを収録しています。筆者は、ダウ・アグロサイエンスのチームです。

表には、使用が推奨される溶媒か問題のある溶媒かどうかも付加されています。2020年9月現在、14.8万回の閲覧回数です。Org. Process Res. Dev.の「Most Read Articles」の一位です。オープンアクセスとなっています。

4.Green Chem., 18, 3867-3878 (2016). DOI:10.1039/C6GC00446F

コンセプトは、グリーンケミストリーに関連のある溶媒のデータです。OPR&Dと少し似ています。筆者は、イギリスの製薬会社であるGSKとフランスの合成会社、C2M AUROCHS Industrieに加えてイスラエルのバル=イラン大学のチームです。OPR&D同様、GSK Solvent Sustainability Guideに基づき、溶媒の環境への負荷をランク付けしています。

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