【クロマトQ&A】:アルデヒド類分析用のHPLCカラムについて
本記事は、Analytical Circle No.58(2010年9月号)に掲載されたものです。
Wakopak®にはDNPH※誘導体アルデヒド類を分析できるカラムが2種類ありますが、違いを教えてください。
※DNPH:2,4-Dinitrophenylhydrazine
カラム① Wakopak®Wakosil DNPH (高分離能)
カラム② Wakopak®Wakosil DNPH-Ⅱ (迅速分析)
どちらもDNPH誘導体化アルデヒド類(低分子カルボニル化合物)を分析する目的で開発されたカラムです。
大気汚染防止法(2種)、悪臭防止法(6種)、EPAなどで測定の対象とされている15種のアルデヒド類を一斉分離することが出来ます。
従来より、DNPH誘導体化アルデヒド類の分析法としてGC法が実施されています。GC法では、15種のアルデヒド類をブチルアルデヒドのn-とiso-の異性体を区別して16成分として分離できます。
しかし、未反応のDNPH試薬を除去する処理が必要です。未反応のDNPH試薬の除去処理が必要なく、より簡便な分析法としてHPLC法が実施されています。HPLC法では、ブチルアルデヒドの異性体n-とiso-、を分割することが難しく、通常1ピークとして検出しています。この2成分をHPLCカラムでも分離することを実現したカラムが、①Wakopak®Wakosil DNPHです。専用溶離液を用いることで16種のアルデヒドを分離できます。(図1) しかし、分析時間がやや長いという点で迅速分析を要望される場合には不向きなカラムになっています。
分離よりも分析時間のスピード化を重視して開発されたカラムが、②Wakopak®Wakosil DNPH-Ⅱです。分離を犠牲にしたと言っても、ブチルアルデヒドの異性体n-とiso-、が1ピークになりましたが、それ以外の分離は、カラム①を用いた分離と遜色のないものとなっています。(図2)
GC法からの移行で、今までどおりブチルアルデヒドの分離を重視される場合にはカラム①がおすすめです。分析時間の短縮が目的の場合にはカラム②を推奨いたします。どちらも専用溶離液を使用することで、実試料の分析の際にベースラインの変動や不明ピークの溶出を抑える効果があります。
Column① : Wakopak®Wakosil DNPH, 4.6 mmφ x 250 mm
Eluent : A) Wakosil DNPH Eluent A, B) Wakosil DNPH Eluent B
0-16min, Bconc. 10 %
16-35min, Bconc. 10-90 %
35-45min, Bconc. 90 %
Flow rate : 0.6 mL/min. at 37℃
Detection : UV 360 nm, 0.016AUFS
Column② : Wakopak®Wakosil DNPH-Ⅱ, 4.6 mmφ x 150 mm
Eluent : A) Wakosil DNPH-Ⅱ Eluent A, B) Wakosil DNPH-Ⅱ Eluent B
0-10min, Bconc. 0-100 %
10-16min, Bconc. 100 %
Flow rate : 1.0 mL/min. at 35℃
Detection : UV 360 nm, 0.050AUFS
ピークNo. | 化合物名 | |
---|---|---|
カラム① | カラム② | |
1 | 1 | Formaldehyde-2,4-DNPH |
2 | 2 | Acetaldehyde-2,4-DNPH |
3 | 5 | Propionaldehyde-2,4-DNPH |
4 | 4 | Acrolein-2,4-DNPH |
5 | 3 | Acetone-2,4-DNPH |
6 | 7 | iso-butylaldehyde-2,4-DNPH |
7 | 7 | n-butylaldehyde-2,4-DNPH |
8 | 6 | Crotonaldehyde-2,4-DNPH |
9 | 9 | iso-valeraldehyde-2,4-DNPH |
10 | 10 | n-valeraldehyde-2,4-DNPH |
11 | 8 | Benzaldehyde-2,4-DNPH |
12 | 14 | Hexaldehyde-2,4-DNPH |
13 | 11 | o-Tolualdehyde-2,4-DNPH |
14 | 12 | m-Tolualdehyde-2,4-DNPH |
15 | 13 | p-Tolualdehyde-2,4-DNPH |
16 | 15 | 2,5-Dimethylbenzaldehyde-2,4-DNPH |
アルデヒド類(低分子カルボニル化合物)は大気、室内大気や飲料水、食品中などの生活環境にも依存しています。アレルギー症状やシックハウス症候群などの健康被害を引き起こす原因物質とされており、さらには発がん性の可能性が示唆される物質として注目されています。