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【クロマトQ&A】:急にピーク形状が異常になり、うまく分析できなくなった。原因と対処方法を教えて下さい

本記事は、Analytical Circle No.38(2005年9月号)に掲載されたものです。

HPLCカラムを使用しています。これまで問題もなく分析できていましたが、ピーク形状が異常になりうまく分析できなくなりました。原因としてどんなことが考えられますか。また対処方法を教えて下さい。

ピーク形状が異常になる原因としては様々な要因が考えられます。図1は簡単なHPLCの構成図ですが、ここではその構成要因毎に対処方法を示します。

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図1.HPLC図
図1.HPLC図

溶離液

まず溶離液の組成(溶媒組成、pH、緩衝液濃度など)が正しいかどうかチェックします。また調製後長時間経過した移動相を使用していると異物が混入したり微生物が繁殖したりすることがあります。新たに調製した溶離液で分析を行い確認します。

ポンプ

ピークがブロードになったり溶出が遅くなったりした場合、ポンプのトラブルで溶離液が設定どおり流れていなかったり配管などから液がリークしていることが考えられます。まず設定した流量で流れているか確認してください。次に圧力が正常かまた液漏れを起こしていないか確認します。圧力が高い場合カラムが原因である場合がありますので、後で述べる方法で対処します。

試料・インジェクター

試料が分解していたり濃度が変化していることがあります。また試料を溶解する液が溶離液より溶出力が強い場合ピーク形状が異常を起こすことがあります。それ以外に注入した試料量が多すぎて過負荷になりピークのテーリング・リーディング・ブロード化を起こすことがあります。このような場合、試料溶解液を溶離液より溶出力の弱い液に変え(通常溶離液が望ましい)、注入量や試料濃度を下げ分析します。その他インジェクターのコンディショニングが不十分な事も原因である事がありますので、コンディショニングを十分行なってから分析を行ないます。

カラム

ガードカラムまたは分析カラムの劣化が原因でピークのテーリング・リーディング・ブロード化、ピーク割れ、ゴーストピークの出現、圧力上昇が起こります。対策として、まずガードカラムを外して測定してみます。これで回復すればガードカラムの劣化が原因ですのでガードカラムを交換します。回復しない場合分析カラムの劣化が原因と考えられます。分析カラムの劣化には①カラム入口側に発生する空隙(ボイド)、②充てん状態の不均一による溶離液の不均一な流動、③充てん剤表面の修飾基の分解・切断、④主に入口付近の不純物や高濃度試料による汚染があります。①~③が原因の場合一旦発生するとそのカラムは通常回復しませんので新品のカラムに交換します。④の場合各カラムの取扱説明書などを参考にカラムを洗浄します。カラムの洗浄を行なっても回復しない場合は新品のカラムに交換します。

その他

カラム温度が設定からずれピークの溶出位置が変わる場合がありますので確認を行ないます。またカラムや溶離液の交換時などコンディショニングが不十分な場合があります。その他カラムと検出器を接続する配管が長すぎたり内径が大きすぎたりするとピークがブロードになる場合があります。これらは装置やカラム・溶離液を交換した場合特に注意が必要です。また配管とカラムの接続が不適切で先述の液漏れやボイドが発生している可能性があります。

いずれにせよ日頃の点検が重要であり、バリデーションなどを十分実施することにより、トラブルが発生した時対処が容易になると考えられます。

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