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【テクニカルレポート】ふっ素化シリコン修飾カラムWakopak® Fluofix-Ⅱの分離特性

本記事は、和光純薬時報 Vol.73 No.4(2005年10月号)において、和光純薬工業 試薬研究所 福本 昌巳が執筆したものです。

現在、一般的なHPLC分析には、主として全多孔性球状シリカゲルを基材とした化学修飾型充てん剤が使用され、その中でもODS充てん剤(C18、オクタデシルシリカゲル)が最も普及しています。しかし、ODS充てん剤も万能とはいかず、それを補完する形で炭素鎖長の異なる充てん剤や、イオン交換基、親水性基などの異なる修飾基をもつ充てん剤、あるいはこれらを合わせもつ充てん剤が開発されています。

当社では、これらの充てん剤に加え、分岐状のフルオロアルキル基を高純度全多孔性球状シリカゲルに化学修飾したふっ素化シリコン修飾カラムをWakopak® Fluofix 120E(エンドキャッピング型)、Wakopak® Fluofix 120N(非エンドキャッピング型)を上市して多様な分析に対応しています。

今回、このFluofixシリーズの機能向上と汎用性の拡大を目的に開発したWakopak® Fluofix-Ⅱは、シリカゲルへのふっ素化処理方法を改善して合成した充てん剤を高密度にパッキングしたHPLC用カラムであり、従来のFluofix充てん剤が持つ大きな撥水性、撥油性による化学的安定性はもちろんのこと、剛直なフルオロカーボン鎖による位置異性体などの構造認識能、ハロゲン間の親和性に由来するハロゲン、特に含ふっ素化合物の分離能力などの特性を引き継ぎ、それらを従来以上に発揮できる充てん剤です。

その特長をまとめれば、1)選択性の向上、2)ハロゲン化合物の認識能の向上、3)塩基性化合物への適応範囲の拡大、4)汎用性の拡大となり、以下、分析例を示しながら説明します。

第1には、特異な選択性です。図1、図2に芳香族炭化水素の分離比較を示しましたが、ODS充てん剤にくらべ、Wakopak® Fluofix-Ⅱは、C4充てん剤とほぼ同等の保持力しかありません。しかし、従来のアルキル型充てん剤では認識できなかった含ふっ素化合物の認識など、異なった分離特性を示します。また、従来品より保持能を増大させていますので、選択性と汎用性が高くなっています。

図1. 芳香族化合物の分析1
図1. 芳香族化合物の分析1
図2. 芳香族化合物の分析2
図2. 芳香族化合物の分析2

第2には、ハロゲン特に含ふっ素化合物の認識性です。Wakopak® Fluofix-Ⅱは、ハロゲンを含む化合物、特に含ふっ素化合物の認識性が高く、分子内のふっ素の増加により保持時間が大きくなります。図3にフルオロベンゼン類のクロマトグラムを示しましたが、ODS充てん剤で分離できないふっ素原子1、2個の差を認識し、o-、m-、p-位の位置異性体までも分離することが可能です。

図3. フルオロベンゼン類の分析
図3. フルオロベンゼン類の分析

第3には、塩基性化合物への適応範囲の拡大です。図4のフルオロアニリン類の分析において、Wakopak® Fluofix-Ⅱは、従来品及びODS充てん剤に認められるp-フルオロアニリンのブロードでテーリングしたピーク形状の改善を達成しています。

図4. フルオロアニリン類の分析
図4. フルオロアニリン類の分析

第4には、汎用性の拡大があります。図5にO-メチル化カテキン類の分析例を示しましたが、Wakopak® Fluofix-Ⅱは、ODS充てん剤と同様な分離を示し、特別な分析だけでなく、一般的な分析にも適応可能なことを示唆しています。

図5. O-メチル化カテキン類の分析
図5. O-メチル化カテキン類の分析

以上のように、Wakopak® Fluofix-Ⅱは、ハロゲン特にふっ素原子の認識性と大きな構造認識性により、含ふっ素化合物、構造異性体などODS充てん剤では分離が困難な場合はもちろんのこと、汎用性の向上に伴い広い範囲の分析に使用が期待できます。

参考文献

  1. 和光純薬時報, 69(4), 7 (2001).
  2. 和田忠昭:和光純薬時報, 70(4), 16 (2002).

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