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【連載】Talking of LAL「第60話 エンドトキシン試験法への適応」

本記事は、和光純薬時報 Vol.73 No.3(2005年7月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第60話 エンドトキシン試験法への適応

これまでにも何度かエンドトキシン試験法のバリデーションについて考えてきました。今回は、実際のエンドトキシン試験に関して、実用的な方法という観点から考えてみたいと思います。

エンドトキシン試験を行う最も大きな目的は、その製品ロットが「エンドトキシン試験法」に適合するかどうかです。しかし、目的をもう少し細かく分けてみると、ロットの合否の他に、試験結果の信頼性、試料の性質のトレンド、試験の経済性などの要素が出てきます。

試験結果の信頼性に関しては、そのロットが試験に影響を与えていないか、使用した試薬に問題はないか、使用したエンドトキシンの活性は確かかなどの点で問題がないことを確かめる必要があります。

試料の性質のトレンドは、主にその製品の試験に対する影響の動きを観察することにより、試験が無効になるリスクを予測し、事前に対応するためのものです。

試験の経済性は、できるだけ無駄な測定を省いてコストを低くすることです。この時、試験がうまくいっていることを説明できるだけの測定は残す必要があります。

これらのことを考慮しながら、どのような試験方法が実際的なのか考えてみましょう。

ゲル化法では、陰性対照(NC)、陽性対照(PC)、陽性製品対照(PPC)、製品(P)の4種類が通常測定されます。NC は LAL 試薬と使用する水の異常を発見するため、PC は使用するエンドトキシンの活性が正常であることを確かめるため、PPC は製品が試験を阻害していないか、Pは製品中のエンドトキシン量が規格内であるかどうかを知るために測定を行います。

ゲル化法の測定はこの 4 種類の試料の測定で十分に目的が達成できると考えられます。ここで日常の試験でさらにサンプル数を減らすことができないか考えてみましょう。減らすことができるのは、その試験が不合格の場合に製品の安全性に問題が出るリスクの少ないものです。

NC が不合格の場合は使用している水の汚染か LAL 試薬の汚染が、PC が不合格の場合はエンドトキシンの失活か LAL 試薬の失活が、PPC が不合格の場合は試料の阻害が強いか LAL 試薬の失活が、Pが不合格の場合は製品の汚染か使用している水または LAL 試薬の汚染が考えられます。

この中で最もリスクの少ないサンプルは NC、次に PC だと思います。これらのサンプルが不合格になる場合は、PPC 及び P も不合格になる可能性が高く、製品の安全性に影響する可能性が低いと思われます。

従って、どうしてもサンプル数を減らさなければならない場合には、NC と PC を減らすのが得策といえるでしょう。もちろん、局方に対応した試験の場合は、これらを省くことはできません。

定量的な光学的方法の場合はどうでしょう。局方では試料溶液(P に相当)、検量線の中点濃度のエンドトキシンを含む試料溶液(PPC に相当)、3 濃度以上のエンドトキシン溶液(検量線に相当)、エンドトキシン試験用水(NC に相当)を測定することになっています。

筆者が疑問に思うのは、日常の試験で必ず検量線の測定が必要かということです。1987 年に発行された FDA ガイドライン1)では、保存検量線を認めており、日常の試験では PC 及び PPC を測定することになっていました。筆者もこの考え方には賛成で、各ロットの LAL に対して検量線を一度確立したら、日常試験では PC 及び PPC を測定すれば、測定条件の有効性を確保できると思うのです。

PC の測定値がある範囲に入っていることが検量線の有効性を示しているという考えは、理解しやすいと思うのですがいかがでしょう。もし、検出しなければならないエンドトキシン濃度が PC の濃度より低い場合に、その濃度が検出できるかどうかが心配というのであれば、PC の濃度を検出したいエンドトキシン濃度に設定する方法もとれると思います。

筆者のお奨めとしては、毎日 1 回の NC と PC の測定、P と PPC は n=2 で測定するというものです。もちろん、検量線はそれ以前に確立されているという前提です。これは、筆者の局方へのチャレンジではありません。最低限証明したいことを考えた場合、このような方法もあるのではないかという提案です。

局方に従うのであれば、検量線の測定は避けられません。しかし、検量線 3 点以上の測定のタイミングについては記載がありませんので、朝一番に検量線を作成して、その後のサンプルは P と PPC のみ測定という方法は受け入れられるかもしれません。

筆者の提案から、さらにどうしてももう少し節約したいというのであれば、ゲル化法の時と同じ理由で NC と PC を省くのがリスクが少ないと思います。

試験法は、調べたい事項とリスクから必要な測定サンプルが決まってきます。もちろん、必要なサンプルすべてについて測定を行えば、十分なデータが得られるでしょう。しかし、何とか楽をして、安く物事を成し遂げたいという人間の願望は、技術の発展にとって必要なものだと思うのです。このあたりも考慮して、リスクが少なく経済的な方法を提案していきたいものです。

参考文献

  1. Guideline on Validation of the Limulus Amebocyte Lysate Test as an End-product Endotoxin Test for Human and Animal Parenteral Drugs, Biological Products, and Medical Devices, Food and Drug Adm.(1987).

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