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【テクニカルレポート】Presep®-C DNPH のアルデヒド誘導体抽出挙動について

本記事は、和光純薬時報 Vol.71 No.4(2003年10月号)において、和光純薬工業 試薬研究所 久保田 守が執筆したものです。

Presep®-C DNPH は、大気および室内空気中のアルデヒド類専用捕集管として開発され、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)をコーティングしたシリカゲルがカートリッジカラムに充填されている。

この捕集管の一般的な使用法として、目的の気体を捕集管に通気させてアルデヒド類を捕集、誘導体化後、有機溶媒で抽出して機器分析用試料とする。

本誌(和光純薬時報) Vol.71, No.2 では、捕集管にポータブル吸引ポンプを接続して、気体(空気)を捕集管に通す際に生じる吸引抵抗に関する測定結果を報告した。今回、捕集管にアルデヒド類を気化させて添加後、アセトニトリルを用いて抽出した場合の、溶媒温度と通液速度がアルデヒド誘導体抽出に与える影響について検討したので報告する。

実験概略

ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド約 2.5 µg (*1)を、室温下(27 ℃)において通気速度 1 L/min の N2 ガスの中で気化後、Presep®-C DNPH 1 本毎に添加させ、10 分間通気した。約 1.5 時間静置後、アセトニトリル(当社アルデヒド分析用)の流速を約 1、3、5 mL/min、溶媒温度を 25 ℃以外に 1 mL/min のみ 3 ℃(初期温度)に設定して抽出、2mL 毎に計 10 mL まで分取後、各フラクションの DNPH 誘導体および未反応 DNPH を HPLC (*2)で測定した。

*1: アルデヒド添加量は、当社工場内の屋外大気を 144 L(0.1 L/min × 24h)採取した際に捕集されたホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの量を参考にした。
*2: HPLC 条件
Column : Wakosil-II 5C18 RS (4.6 x 250 mm), Eluent : CH3CN/H2O = 60/40 (v/v), Flow rate : 1 mL/min, Temp : 40℃, Detection : UV 360 nm, Inj. Vol. : 10 µL

結果とまとめ

溶媒温度

抽出溶媒温度の影響について 3 ℃(初期温度)と 25 ℃で比較した結果、3 ℃溶媒では溶解度が低いため、各成分いずれも 2.4 mL に持ち越される割合が高くなった(図 1、2 参照)。

通液速度

通液速度を変化させた場合、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドは速度を上げても抽出率は低下せず、0.2 mL で 97 ~ 99 % の高い値を示した。未反応 DNPH は、通液速度の増加とともに抽出率が低下した(図 2 ~ 4 参照)。

  • Fig.1 抽出速度1ml/min(27℃), 溶媒3℃
    Fig.1 抽出速度1ml/min(27℃), 溶媒3℃
  • Fig.2 抽出速度1ml/min(27℃), 溶媒25℃
    Fig.2 抽出速度1ml/min(27℃), 溶媒25℃
  • Fig.3 抽出速度3ml/min(27℃), 溶媒25℃
    Fig.3 抽出速度3ml/min(27℃), 溶媒25℃
  • Fig.4 抽出速度5ml/min(27℃), 溶媒25℃
    Fig.4 抽出速度5ml/min(27℃), 溶媒25℃
グラフの凡例
まとめ

以上の結果より、アルデヒド捕集量が上記レベル程度ならば、通液速度 5 mL/min でも 2 ~ 4 mL の溶媒量で 99 % 以上の高い抽出効果が得られた。

Presep®-C DNPH は、上記レベルあるいは低濃度領域のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド分析において少量の溶媒で抽出が可能であり、分析時間の短縮化、高感度分析に貢献できると考えられる。

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