【テクニカルレポート】Wakosil 充てん剤でアミノ酸組成分析はできるか?
本記事は、和光純薬時報 Vol.60 No.1(1992年1月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
アミノ酸組成分析用に開発された Wakosil-PTC カラムと専用溶離液 A, B の組合せからなる PTC-アミノ酸分析システムが最適となります。
アミノ酸組成分析方法には、アミノ酸を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離した後、ニンヒドリンや o-フタルアルデヒド(OPA)等で発色または発蛍光させて検出するポストラベル法と、あらかじめアミノ酸をフェニルイソチオシアナートやダブシルクロリド等で標識した後、HPLC で分離分析するプレラベル法の二つに大別されます。
ポストラベル法は高分子量のタンパクの解析や多くの試料をルーチンに分析する場合に適していますが、アミノ酸自動分析装置のような高価な専用装置が必要になり、研究者がタイムリーにアミノ酸分析結果を得たい場合には適した方法とは言えません。
一方プレラベル法は、用手法による前処理操作が必要になりますが、アミノ酸数 200 程度までのポリペプチドの解析には最適となり高感度で短時間にタイムリーに結果が得られるという利点を持っています。
ワコー PTC-アミノ酸分析システムは、汎用型リニアグラジエント装置付の HPLC 装置があるならば、何時でも・どこでも・必要な時に分析結果が得られるという特徴を持っています。酸加水分解した試料の PTC 誘導化方法と標準アミノ酸のクロマトグラムを図 1 に示しました。また、各種アミノ酸のフェニルアラニンに対する相対的な溶出位置を表 1 にまとめました。
以上 PTC-アミノ酸組成分析法は、タンパク・ペプチドの構造解析に重要な手法であるばかりでなく、食品中などの遊離アミノ酸の分析にも有効な方法となります。図 2 に醤油中の遊離アミノ酸の分析データを示しました。
PTC 誘導体化方法
前述ように本 PTC-AA システムはアミノ酸の PTC 誘導体化物を HPLC により同定、定量する方法です。従って、試料中の遊離アミノ酸、あるいはタンパク質をその構成アミノ酸にまで加水分解した試料をあらかじめ PITC により標識しなければなりません。ここに記した方法は当社において行われている方法です。
- 試料(10 pmol ~ 500 nmol 程度)およびアミノ酸混合標準液 H 型 10 µL(25 nmol)をエッペンドルフチューブにとる。
- 減圧下に乾燥する。
- エタノール/精製水/トリエチルアミン(TEA)混合液(2/2/1)20 µL を加え攪拌する。
- 減圧下に乾燥する。
- エタノール/精製水/TEA/PITC混合液(7/1/1/1 : 用時調整)20 µL を加え攪拌する。
- 室温にて 20 分間反応させる。
- 減圧下に乾燥する。
- 分析まで冷凍保存する。
- 分析時に溶離液 A に溶解して分析する。(標準アミノ酸の場合 1 mL に溶解し、10 µL インジェクションすると 250 pmol に相当する。試料は適当量の溶離液 A に溶解して分析する。)
注)
- 試料を標識する際には必ず標準液も同時に標識し、その標準液の分析結果を用いて試料中のアミノ酸の定量計算を行います。
- 標識した試料は乾燥状態では冷凍保存(-20℃)により、3 ヶ月程度は使用できます。溶離液 A に溶解したものは、冷凍保存により数日間は使用できます。