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【クロマトQ&A】逆相フラッシュクロマトグラフィーで分取するための最適分離条件を決める方法はありますか。

本記事は、Analytical Circle No.7(1997年12月号)に掲載されたものです。

逆相系フラッシュクロマトグラフィーで分取を行いたいのですが、最適分離条件を決めるいい方法はありますか。

非常に有効な簡易精製方法であるフラッシュクロマトグラフィーは、従来から行われているオープンクロマトグラフィーに比べ、短時間で、高精度に分離精製が可能である等の特長があります。

分離条件の設定は、順相系ではTLCが汎用されており、Rf値から容易に分離条件の設定が可能です。

一方、逆相系フラッシュクロマトグラフィーではHPLC、特に粒度の影響を受けにくいグラジエント法で条件を設定する方法が有効です。

全成分を分取したい場合と、ある特定の成分のみを分取したい場合で分離精製条件は異なりますが、設定の手順は同じです。その手順を示します。

[1]フラッシュクロマトグラフィーによる分取

  1. 全成分の溶出パターンの確認
  2. 特定の成分を分取したい場合、その成分の分取に最適となるグラジエント条件の検索
  3. フラッシュクロマトを想定した多段階溶出法によるクロマトパターンの確認
  4. フラッシュクロマトへのスケールアップ
  5. フラクションの確認

[2]高精度精製処理(再フラッシュ、HPLC分取など)

以下にBIOTAGE社製、FLASH 40S System(充てん剤:Wakosil 40C18)を使用した、大黄末成分の全成分分取を例に説明します。

図1.操作法概略
図1.操作法概略

図1に示した方法で得た抽出液を上記の手順に従い精製しました。図2に手順1.の状況、図3に手順3.の状況、図4に手順5.の状況を示します。条件検討用HPLC充てん剤は、Wakosil 40C18と基本特性が同じWakosil 5C18を使用し、多段階溶出法でカラム体積の2倍量(約200 mL)毎に溶離液を切り換えました。

図2.全成分の溶出パターンの確認
図2.全成分の溶出パターンの確認
図3.多段階溶出法による解析
図3.多段階溶出法による解析
図4.フラクションの確認
図4.フラクションの確認

分取した各フラクションの成分は、HPLCによる条件検討結果との相関性に優れ、分離も目的通りに達成されています。

さらに手順[2]に従い単一成分として分取することも可能です。図5は、高精度精製に適したHPLC充てん剤(例:Wakosil Prepシリーズ)を使用せず、再フラッシュ法でフラクションNo.5の精製を行い、最終的に得られた精製物のクロマトグラムです。

図5.最終精製物のクロマトグラム
図5.最終精製物のクロマトグラム

逆相系フラッシュクロマトグラフィーは、今回の大黄末のような水に易溶性の成分を取り扱う場合に、特に有効な手段と考えられます。

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