【連載】Talking of LAL「第27話 日本薬局方のエンドトキシン試験法」
本記事は、和光純薬時報 Vol.65 No.2(1997年4月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。
第27話 日本薬局方のエンドトキシン試験法
日本薬局方のエンドトキシン試験法が改正されました。今回は、この新しいエンドトキシン試験法について考えて見ましょう。
平成 8 年 4 月に公布された第十三改正日本薬局方1)(以下 13 局)では、エンドトキシン試験法に定量的な方法が取り入れられました。従来のゲル化法の重要性は変わりませんが、定量法が認められたことによって、エンドトキシン試験の方法の選択に幅ができ、各試料により適した手法の選択が可能になったと思われます。
13 局のエンドトキシン試験法の構成は表 1 の通りです。今回新たに追加された項目として、最大有効希釈倍数の求め方、ゲル化法の定量試験法、光学的方法(比濁法、比色法)があります。従来より行われていた、ゲル化法・比濁時間分析法・合成基質法というリムルス試験の手法の分類は、13 局ではゲル化法及び光学的方法となりました。また、試料としては、医薬品及び医薬品容器という分類になりました。
リムルス試験におけるエンドトキシン測定では、測定者(測定施設)の技術的な確認と日常検査について規定されています。この考え方は、近年 GMP 等でも取り入れられてきたバリデーションの考え方に基づいていると思われます。すなわち、まず測定が正常に行われていることを科学的データに基づいて示し、日常の検査を行います。
日常検査でも、測定の信頼性を確かめるために、エンドトキシン溶液の陽性対照と試料の陽性対照を測定します。この考え方は、13 局のエンドトキシン試験法をはじめ、各国の薬局方や FDA の規定2,3)で取り入れられています。
具体的には、まず測定が正常に行えることを示すために、ゲル化法では表示感度の確認、光学的方法では検量線の直線性の確認を行います。さらに、各試料について反応に与える影響が許容範囲内であることを示すために、エンドトキシンの添加回収試験を行います(反応干渉因子試験)。
具体的な実施例は次回に考えることにして、今回の改正における主な注意点を挙げてみましょう。
(1)結果に疑いのある場合はゲル化法によって最終の判定を行うこと。
(2)器具は 250 ℃で少なくとも 1 時間乾熱すること。
(3)プラスチック製品を使用する場合は汚染及び本法に対する干渉がないことを確認すること。
(4)試料溶液の pH は 6.0~8.0 に調整すること。
このとき緩衝液の使用も可能であること。
(5)ゲル化法における限度試験法では最大有効希釈倍数で希釈した試料を使用すること。
(6)光学的方法(定量的方法)では反応干渉因子試験で使用した試料濃度
(λ を m に変えて求めた最大有効希釈倍数)を使用すること。
(7)検量線のエンドトキシン濃度が実数目盛りの場合は 75~125%、
対数目盛りの場合は 50~200%を許容範囲とすること。
(8)光学的方法における判定は、m 値を基準として行うこと。
今回の改正は、エンドトキシン試験法の国際的な調和もにらんでおり、種々の新しい内容が盛り込まれています。特に、これまでリムルス試験のバリデーションにおいて大きな役割を果たしてきた FDA のガイドラインやガイダンスの考えとは若干の相違があることに注意が必要です。
今後、国際的な調和がさらに進められるとは思われますが、現時点ではどの国の薬局方に準拠しようとするかを考慮して、試験条件を設定する必要があります。
参考文献
- 第十三改正日本薬局方, 一般試験法, p.39 (1996).
- Guideline on Validation of the Limulus Amebocyte Lysate Test as an Endproduct Endotoxin Test for Human and Animal Parenteral Drugs, Biological Products, and Medical Devices, Food and Drug Adm. (1987).
- Interim Guidance for Human and Veterinary Drug Products and Biologicals, Food and Drug Adm. (1991).