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【連載】Talking of LAL「第24話 合成基質法」

本記事は、和光純薬時報 Vol.64 No.3(1996年7月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第24話 合成基質法

現在主に使用されているリムルス試験の手法として、ゲル化法1)、比濁時間分析法2)-4)、合成基質法5), 6)があることは、第 4 話でお話ししたとおりです。

今回は、これらの手法の中から合成基質法について考えてみましょう。合成基質法としては、最初に開発されたエンドポイント合成基質法5), 6)に加え、カイネティック合成基質法7), 8)が実用化されています。

合成基質法では、カブトガニの凝固カスケード系の因子である Clotting Enzyme に対する特異性の高い合成ペプチド基質をリムルス試験に転化しています。この合成ペプチド基質は、凝固酵素の天然基質でもある Coagulogen の水解部位のペプチドシークエンスをもとに考案されたもので、C 末端に Gly-Arg のシークエンスを持つという特徴があります6)

実際に使用されている合成ペプチド基質は C 末端に p-ニトロアニリン(pNA)のような発色基を結合させてあります。エンドトキシンやβ-グルカンによって活性化したリムルス試薬中の Clotting Enzyme が合成基質を水解し、発色基を遊離します。

遊離した発色基の量を比色定量することによって、エンドトキシンやβ-グルカンの量を算出します。実際に使用されている合成基質としては、Boc-Leu-Gly-Arg-pNA や Ac-Ile-Glu-Gly-Arg-pNA があります。

合成基質は Clotting Enzyme 以外の酵素によって水解されたり天然の基質と競争的に水解される可能性を持っており、実際のリムルス試薬中での反応は、他のリムルス試験と同様、非常に複雑です。しかし、色は測定者の視覚に強く訴えるものがあり、比色測定も比濁測定に比べ、波長の組み合わせ等で高度の測定技術を使用できる可能性があります。

エンドポイント合成基質法は、合成基質を含むリムルス試薬と試料を一定時間反応させ、生じた発色基の量を指標としてエンドトキシンまたはβ-グルカン量を測定する方法です。また、試料と一定時間反応させたリムルス試薬に合成基質を添加する方法もあります。

エンドポイント法の場合、酸などを添加して反応を停止したのち、発色量を測定するのが一般的です。pNA を発色基とする合成基質を用いた方法では、遊離した pNA をさらにジアゾ化し、黄色の pNA を赤色のアゾ色素にして、より長波長で測定する方法も使用されています。

カイネティック合成基質法では、比濁時間分析法と同様に発色がある一定の値に達するまでの反応時間を測定する方法(比色時間分析法)7)と発色の時間あたりの変化量を測定する方法8)があります。

合成基質法の測定装置としては、マイクロプレートリーダーや分光光度計が一般的ですが、最近開発された青色 LED(高輝度発光ダイオード)を搭載したトキシノメーター(和光純薬)を用いると、比濁時間分析法と同様の操作で黄色発色合成基質法を行うことができます。

従来のトキシノメーターは、赤色 LED を搭載しており、黄色の発色を検出することはできませんでした。青色 LED 搭載トキシノメーターの発売により、合成基質法でも、比濁時間分析法の利点を利用できるようになったわけです。

今後、合成基質法も用途に応じた測定方法を選択できるようになっていきそうな気配がします。現在、リムルス試験の選択肢が揃ってきており、今後、価格も含めて、目的にあった測定方法を考えていく時代になっていくのではないでしょうか。

参考文献

  1. Cooper, J. F. et al. : J. Lab. Clin. Med., 78, 138-148 (1971).
  2. Jorgensen, J. H. and Alexander, G. A. : Appl. Environ. Microbiol., 41, 1316-1320 (1981).
  3. 大石晴樹 他:薬学雑誌, 105, 300-303 (1981).
  4. Oishi, H. et al. : J. Parenter. Sci. Technol., 39, 194-200 (1985).
  5. Nakamura, S. et al. : J. Biochem., 81, 1567-1569 (1977).
  6. Iwanaga, S. et al. : Haemostasis, 7, 183-188 (1978).
  7. Lindsay, G. K. et al. : J. Clin. Microbiol., 27, 947-951 (1989).
  8. 田村弘志 他:医学の歩み, 166, 811-812 (1993).

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