【テクニカルレポート】生体試料直接分析用充填剤の開発の試み その2
本記事は、和光純薬時報 Vol.64 No.3(1996年7月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
前報において、血清などのタンパク質を多量に含む生体試料中の成分を、前処理操作することなく直接分析可能な充てん剤として、新規にGPN6-Silicaを開発したことと本充てん剤を前処理カラムとして利用した場合のカラムスイッチング分析への応用について説明した。そこで本報では、血清中の尿酸の直接分析法について説明する。
血清中の尿酸濃度は、痛風、Lesch-Nyhan 症候群をはじめとする種々の疾患との相関が認められ、臨床検査分野では重要な測定項目となっている。尿酸の測定は、酵素法であるウリカーゼ-ペルオキシダーゼ法が主流となっているが、尿酸測定値の施設間差是正、精度管理の目的でHPLCを用いる勧告法が制定されている。この勧告法によれば、前処理として過塩素酸による除タンパク操作後、ODSカラムにより分離する方法が採用されている。
今回、筆者らは直接分析への応用を試み、勧告法との相関性について検討した。図1. に尿酸標準液、血清検体、及びウリカーゼ処理後の血清検体を分析した時のクロマトグラム例を示したが、尿酸ピークは最初に溶出する血清タンパクと良好に分離し、しかも、ウリカーゼ処理後に尿酸の溶出位置に不明成分の溶出ピークはなく有用性が示唆された。なお、血清検体は0.22 µm メンブレンフィルターにて濾過後、5 µLをHPLCに注入した。
Conditions
Column:GPN6, 4.6 φ x 150 mm
Eluent:CH3CN/0.2M NaH2PO4, Na2HPO4 (pH 6.0) = 2/100 (V/V)
Flow rate:0.5 mL/min. at R.T.
Detection:UV 284 nm, 0.32 AUFS
Sample:Serum 5 µL
図2. に人血清60検体測定時の勧告法との相関性を示したが、相関係数0.99と良好であった。また、標準液 1 mg/dL、5 mg/dL、10 mg/dL を分析した時の再現性は連続11回測定において、平均標準偏差は1.5 %、0.7 %、1.0 %と良好であり、尿酸濃度 0-50 mg/dL 範囲において、検量線は原点を通る直線を示した。
連続500回使用による圧力上昇は僅かであり、理論段数の変化も認められなかった。その時のクロマトグラムの変化を図3. に示した。
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n R.T. min. N Press. kg/cm2 1 3.959 2500 23 200 3.971 2400 24 300 3.974 2400 27 400 3.976 2400 29 500 3.937 2300 33
以上、2報に分け、生体試料直接分析用新規充てん剤:GPN6-Silicaの開発の試みと有用性について紹介した。用手法による血清の前処理操作は、時間、労力もさることながら各種病気への感染の可能性があり、できうるならば血清検体との接触の機会を最小にすることが重要な要素である。
今回、開発を試みたGPN6-Silicaが、これら問題の解決に少しでもお役に立てればと考えている。