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【連載】Talking of LAL「第21話 水中のエンドトキシンはどこまで測れるか」

本記事は、和光純薬時報 Vol.63 No.4(1995年10月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第21話 水中のエンドトキシンはどこまで測れるか

リムルス試験によるエンドトキシン測定法は、主に医薬品の安全性試験として発展してきました。医薬品に許容されたエンドトキシンレベルは、例えば「注射用水」の場合 0.25EU/mL であり、現在のエンドトキシン検出技術から考えると、かなり高濃度であると思われます。

もちろん、測定への影響が強い薬剤の場合は希釈が必要ですから、実際にはかなり低濃度のエンドトキシンを測定する必要があります。また、製造用の水の管理等においては、試料中のエンドトキシンが規格値以下であるだけでなく、定量的に推移を観察することが要望されます。

すなわち、エンドトキシン測定において、どの程度微量の測定が可能であるかを知ることも重要になってきています。そこで今回は、低濃度のエンドトキシンを測定するというテーマでお話ししたいと思います。これに伴って、今回の単位は、EU/mL ではなく、EU/L を使うことにします。

現在、和光純薬で販売している商品の中で、最も感度の高い商品は「リムルス ES-Ⅱシングルテストワコー」です。この商品をトキシノメーター上で用いれば、通常の使用方法でも、60 分測定で 4EU/L、測定時間を延長すれば 1EU/L 程度の測定が可能です。

筆者らは、さらに測定条件を検討し、試料の添加量を増やすことによって、さらに高感度の測定ができることを明らかにしました1)。試料の添加量を増やすと、LAL の濃度が下がることによる感度の低下と、反応液中のエンドトキシン濃度が上がることによる感度の上昇の両方の影響が現れます。

図1.リムルスES-Ⅱシングルテストワコーを用いたエンドトキシンの高感度測定

測定感度は、試料添加量を 25%~30% 上げることによって 2 倍程度上昇しました。この方法は、測定に対する影響が大きい試料には利用できませんが、水のような試料では効果的です。実際に、リムルス ES-Ⅱシングルテストワコーに 0.25mL の試料を添加する方法(通常、0.2mL を添加)で水中のエンドトキシン測定を試みたところ、1EU/L のエンドトキシンが 90 分以内に検出できました(図1)。

さらに低濃度のエンドトキシンを検出したいときには、前回ご紹介したパイロセップ法が利用できます。パイロセップ法の特徴であるエンドトキシンの濃縮効果を利用してトキシノメーターで測定すると、10mL の試料を濃縮した場合、1EU/L のエンドトキシンを 30 分以内に、3 時間測定では 0.015EU/L まで検出可能でした2)

このレベルになると、他の方法でエンドトキシンの存在を確認することが困難であるため、リムルス試験による測定値が絶対値として正しいかどうかを証明することはできません。今後、低濃度エンドトキシンの測定値の信頼性が問題となってくるかもしれません。

このように、最近リムルス試験の感度の向上はめざましく、従来のゲル化転倒法で測定していた 0.03~0.25 EU/mL の千分の一以下のエンドトキシンを定量的に検出できるようになっています。高感度の測定になると、水の汚染、器具の汚染、環境からの汚染、操作上の汚染に十分気をつける必要がありますし、その管理レベルも高くなければなりません。

現在、前述のような高感度測定ができるようになった背景には、リムルス試験の周辺環境が整備されてきたということがあるように思われます。今後、周辺器具や周辺技術も含めて、リムルス試験がさらに広い分野で利用できるよう努力したいと考えています。

参考文献

  1. 井尻晴久他:日本防菌防黴学会第20回年次大会要旨集, p.34 (1993).
  2. 土谷正和他:日本防菌防黴学会第22回年次大会要旨集, p.121 (1995).

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