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【テクニカルレポート】皮膚及び毛髪のダメージ修復性保湿剤

本記事は、和光純薬時報 Vol.92 No.1(2024年1月号)において、弊社 マテリアル戦略部 小林 理子、岡本 佳樹に執筆いただいたものです。

1.はじめに

いつの時代も美しく健康な肌や髪は人々の憧れである。
しかしながら、我々を取り囲む環境には紫外線をはじめとする多くの外的ストレスが存在しており、特に昨今、肌ではマスクによる擦れや蒸れ、髪ではヘアカラーやパーマ、ドライヤーやアイロンによる熱など、さまざまなストレスによりダメージを受けている。
肌や髪のダメージを受けた部位を集中的に修復させることができれば、美しく健康な肌や髪を取り戻す修復ケアがより効果的に実現できる。
皮膚角質層(角層)表面や毛髪表面はダメージを受けるとアニオンサイト(マイナスに帯電している部分)が増加することが知られている。当社の化粧品原料であるキュアベリスト®(ポリメタクリロイルリシン)は生体親和性の高いアミノ酸誘導体ポリマーである。ポリマー中のアミノ酸基が皮膚や髪のアニオンサイトに選択的に吸着し、ストレスを受けた肌や髪のダメージ部位を集中的に保護することが期待される。本稿では、当社の化粧品原料であるキュアベリスト®の皮膚のダメージ部位への吸着効果と、毛髪に適用した際の髪質改善効果を紹介する。

2.皮膚のダメージ部位への吸着効果

図1は種々のダメージを与えた角層に対するポリマーの吸着性を表している。

図1.各種ポリマーのダメージ角層への吸着

健全な角層、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)でダメージを与えた角層、UVでダメージを与えた角層の3つについて、各種ポリマーの水溶液で処理し、それぞれに対するポリマーの吸着量を縦軸に示した。

塩基性アミノ酸のリシン誘導体であるキュアベリスト®は、中性アミノ酸のアラニン誘導体や酸性アミノ酸のグルタミン酸誘導体といった他のアミノ酸誘導体と比較した際に、特にダメージを与えた角層に顕著に多く吸着していることがわかる。また、ホスホベタイン構造を側鎖に持つポリマーであるポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(poly(MPC))やカチオン性のコリン誘導体よりも、キュアベリスト®が選択的吸着性に優れているといえる。

3.髪質改善効果

1)櫛通り改善効果

フォースゲージに各処理をした毛髪を取り付け、毛先の20cm根元側から毛先までの測定区間における櫛の間を通る際の加重を測定することで、キュアベリスト®の機能を比較評価した(図2)。③、④は、ダメージ毛を0.1%キュアベリスト®水溶液に浸漬処理したサンプルである。

図2.各種毛髪における櫛通り改善効果

ダメージ毛と比較してキュアベリスト®で処理したダメージ毛は、最大の荷重が3分の1以下に低下し、キュアベリスト®水溶液に浸漬後に水洗したダメージ毛では最大の荷重がさらに小さくなった。これは水洗によりダメージ層に選択的に吸着したポリマーが残存し、過剰なポリマーが除去されたことによると推測される。

2)まとまり改善効果

先の試験で使用した毛髪に対し官能試験をおこなった。ダメージ毛はギシギシと指に絡まるのに対し、キュアベリスト®水溶液で処理した毛髪では指に絡むことなくさらさらと滑らかであった(図3)。

図3.毛髪の外観(左:ダメージ毛、右:キュアベリスト®水溶液浸漬(水洗有り))

3)キューティクル改善効果

SEM観察において、ダメージ毛と比較して0.1%キュアベリスト®水溶液に浸漬したダメージ毛はキューティクルが整い、表面状態が均一化されており、毛髪への高いコンディショニング効果が認められた(図4)。

図4.毛髪のキュアベリスト®浸漬有無の比較(SEM写真)

4.まとめ

キュアベリスト®の皮膚におけるダメージ部位への吸着効果、ならびに、毛髪における櫛通り改善効果、まとまり改善効果、キューティクル改善効果を確認した。キュアベリスト®の効果は水で洗浄を行っても維持されており、優れた吸着性が持続性を有することを示唆している。これはキュアベリスト®のアミノ酸がペンダント型に結合したポリマー構造となっているため、ダメージ部位に多点吸着することで吸着性が向上していることによると推測される。

5.おわりに

キュアベリスト®はアミノ酸に由来する両イオン性の構造を有しており、皮膚や毛髪のダメージ部位への高い選択的吸着性を示した。本稿では髪への効果を中心に紹介したが、キュアベリスト®はヒアルロン酸と同等の吸湿性とヒアルロン酸より優れた保水性を有するとともに、肌のダメージ角層へ吸着することから、肌状態の改善効果も確認している。
キュアベリスト®はスキンケア、ヘアケア問わず、高いダメージ修復性が期待できる化粧品材料である。

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