【構造式検索TIPS】知って得する徹底使いこなし術④
- 知って得する徹底使いこなし術① ~ChemDrawからのコピペ、官能基略語の活用~
- 知って得する徹底使いこなし術② ~官能基の種類によるand /not検索~
- 知って得する徹底使いこなし術③ ~候補化合物のリスト化、検索履歴の呼び出し~
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知って得する徹底使いこなし術④ ~類似構造検索、スーパーストラクチャー検索~ ⇐ いまココ!
構造式検索がリニューアルしてさらに使いやすくなりました。使い方については右上の「検索の使い方」から確認いただけます。また、アイコンについては、描画画面下の「描画アイコンの説明」をぜひ参考にしてみてください。
概要
「構造式検索TIPS ①」では
ChemDrawからのコピー&ペーストと官能基略語の活用をご紹介しました。特定の構造が完全に決まっている完全一致検索の場合に有効です。
「構造式検索TIPS ②」では
誘導体を条件付きで一括検索したい場合や、特注合成ページをご紹介しました。化合物の検索と実験、どちらも効率的に進めたい方はこちらをご活用いただけます。
「構造式検索TIPS ③」では
検索の結果で得られた化合物群から、必要な化合物だけを絞り込む方法や、過去の描画情報を再活用する方法についてご紹介しました。手早く、漏れなく検索する一連の手順です。
そして、今回の「構造式検索TIPS ④」では
検索の種類によって、結果がどのように変わってくるかについて、実際に試してみながら、使用感をお伝えしようと思います。検証する検索方法は、「類似構造検索」と「スーパーストラクチャー検索」です。
類似構造検索
"類似構造検索"は、描画した構造式と類似する化合物を全て検索する方法で、画面右上の検索の種類から選択できます。入力フォームの中に○○%と入力して類似度を指定して検索します。この数値を変えていった場合、検索結果がどのように変化していくかを検証してみました。
検証方法
以下のように4種類の異なる置換基を持つ芳香族化合物を描画して"類似構造検索"を選択し、類似度を50~90 %まで変更した時の化合物の数、化合物群の構造にどのような傾向があるかを検証しました。
結果
それぞれの類似度での検索件数は以下のようになりました。なお、ヒット件数は2021年12月現在の結果です。
①類似度90%
描画した構造の塩酸塩が1件ヒットしました。ほとんど完全一致検索と同じ結果といえます。
②類似度80%
OHがOMe基に置換された化合物を含む2件がヒットしました。NH2基を反応点とする想定であれば、市販されている試薬から2つの誘導体が合成できることになります。
③類似度70%
4置換の構造に対して、およそ3つの置換基の位置と種類が正しい検索結果になり、16件がヒットしました。類似度を下げた分だけ検索結果も広くなっています。その結果、3置換、5置換の化合物も入ってきました。結合位置や置換基を少し変更した誘導体もいくつか合成できるということが分かり、選択肢が増えました。ライブラリー構築に使える化合物もいくつか見つけられそうです。
など
④類似度60%
4置換の構造に対して、およそ3つの置換基の種類は合っていますが、置換基の位置が異なる化合物も候補に入ってきました。検索結果は大幅に増加して120件となりました。バリエーションは豊富ですが、実際に使えるかどうかは曖昧なので、この中から適切な構造を選択して、詳細を確認する必要がありそうです。一覧から選択した化合物の詳細を表示する手順については【構造式検索TIPS③】でご紹介しています。
など
⑤類似度50%
およそ2つの置換基の種類は合っていますが、その他は様々な置換基を持つ化合物が入ってきました。件数はさらに増えて818件になりました。ここまでくると、全部を見るのも大変になってくるので、少し広げすぎなのかもしれないですね。
など
結論
今回の化合物では類似度60~70%あたりが最適でした!
実際に使ってみると、想定していた骨格以外の化合物も一括して提案されたような感覚でした。類似度を上手に調節すれば、試薬を購入して合成できる化合物の範囲が割と明確にイメージできます。
また、官能基の位置や種類にはこだわらずに候補化合物を選択したい場合や、まずは入手可能な試薬を軸にして合成計画を立てようとしたい場合は、この類似構造検索によるややファジーな化合物群を眺めてみると、何かヒントが得られるかもしれないです。ただ、あまり類似度を下げると候補化合物も多くなるので、件数を確認しながら適度に類似度を調節する使い方をおススメします。
スーパーストラクチャ―検索
"スーパーストラクチャ―検索"は、置換基そのものやフラグメントを単位とした検索方法で、画面右上の検索の種類から選択します。構造的に意味のあるフラグメントまで分解して、それぞれの結果を表示します。例として2置換の芳香族化合物の検索で検証してみました。
検証方法
p-アミノフェノール (CAS RN®: 123-30-8) の構造を描画して"スーパーストラクチャ―検索"をかけ、その結果を確認してみました。
結果
8件の検索結果がヒットしました。なお、ヒット件数は2021年12月現在の結果です。
描画した構造式を下図のように切断して、それ自身を含む単位で検索した結果が表示されました。ここに表示された原料の組合せで元の化合物を合成できるわけではなさそうですが、フラグメントを意識した化合物一覧を確認したいときには見やすいです。合成原料を検索するというよりは、分解物のリストとして役に立つようなイメージでしょうか。
結論
逆合成ではないが、試薬を軸とした合成法のヒントや気づきがあるかもしれない。
実際に使ってみると、結合の強さや合成の難易度は一旦考えず、直接入力した構造のフラグメントと、その誘導体が全て表示されたような感覚でした。別の化合物で検索してみると、C-C結合が切断されたフラグメントも多く入ってきたので、現実的ではない場合もありそうです。使用頻度は高くないかもしれませんが、特定の化合物をどうやって合成するか悩んだとき、違う角度から何かヒントがないかなどを自由な発想で考えてみたい時には、一度試してみたくなる検索方法でした。
いかがだったでしょうか?「部分構造検索」や「完全一致検索」しか使ったことがない方も、このような検索の種類があるということも覚えておいていただけると便利なケースがあるかもしれないです。検索機能の使いこなしの一つとして、ぜひご活用ください。
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- 知って得する徹底使いこなし術② ~官能基の種類によるand /not検索~
- 知って得する徹底使いこなし術③ ~候補化合物のリスト化、検索履歴の呼び出し~
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知って得する徹底使いこなし術④ ~類似構造検索、スーパーストラクチャー検索~ ⇐ いまココ!