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有機触媒によるトリフルオロボレート塩の不斉共役付加

本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しています。

概要

米プリンストン大学のMacMillanらによる報告です。彼らによって開発された有機分子触媒、MacMillan触媒1)は、エナール (α,β-不飽和アルデヒド) を基質とし、様々な不斉1,4-付加反応を進行させます。基質と反応して求電子性の高いイミニウム中間体を形成し、付加反応を促進します (LUMO-activation)。複雑な化合物の合成にも用いられるなど、大変実用性の高い触媒です (例:タミフルの合成)。

内容

Organocatalytic Vinyl and Friedel-Crafts Alkylations with Trifluoroborate Salts Lee, S.; MacMillan, D. W. C.: J. Am. Chem. Soc., 129, 15438 (2007).
DOI: 10.1021/ja0767480

今回の論文では、有機トリフルオロボレート塩 (RBF3K) 2)を求核剤として用いています。ボランの結合している炭素が選択的に反応します。

同種の触媒を用いるFriedel-Crafts条件では、インドールの3位が選択的に反応しますが、今回の系はそれと相補的 (2位選択的反応) に用いることができます (下図)。

有機トリフルオロボレート塩を用いた選択的付加反応

ボロン酸も求核剤として使えるようですが、反応点近傍に配位性官能基がないと進行しないそうです。このこともPetasis反応類似のボレート種付加機構を支持しているとのことです。

しかし、PhBF3Kという最も単純な基質が適用外であるということも脚注に記されていました。

本反応系では、フッ化水素酸を添加することがカギになります。これによって基質のプロトン化を行うとともに、副生成物を不溶性のKBF4として沈殿させています。平衡を生成系に傾ける目的で、よく設計された系になっています。

(+)-Frondrosin B全合成への応用結果も報告されています3)。この化合物は不斉点が一つだけとはいえ、既存法によっては制御が難しそうな位置にあります。

マクミラン触媒を(+)-Frondrosin Bの全合成に用いた例

参考文献

  1. Review: Lelais, G.; MacMillan, D. W. C.: Aldrichimica Acta, 39, 79 (2006).
  2. Review: (a) Stefani, H. A. et al.: Tetrahedron, 63, 3623 (2007).
    (b) Molandar, G. A. et al.: Aldrichimica Acta, 38, 49 (2005).
  3. Reiter, M., Torssell, S., Lee, S., MacMillan D. W. C.: Chem. Sci., 1, 37 (2010). DOI: 10.1039/c0sc00204f

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