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【クロマトQ&A】:薄層クロマトグラフィーについて

本記事は、Analytical Circle No.77(2015年6月号)に掲載されたものです。

今回は薄層クロマトグラフィー(TLC (Thin Layer Chromatography))に関するご質問にお答えします。

TLCで使用されるプレートにはどのような種類がありますか。

TLCは支持体(ガラス等)の上に担体(シリカゲル等)を薄膜状に固定した薄層プレートを用いて行うクロマトグラフィーの手法です。薄層プレートの一端を溶媒に浸すと、担体の間隙を毛細管現象により溶媒が移動します。薄層プレート上に試料が存在すると、溶媒の移動に伴い試料も移動します。この時、試料と固定相との相互作用の強さの違いにより、試料により移動する距離が異なるのを利用する事で分離を行います。

薄層プレートの種類、特長・用途

①担体の材質

種類 特長・用途
シリカゲル 最もよく利用されている。吸着クロマトグラフィーモードで使用され、主に酸性または中性化合物の分離に用いられる。
C18(オクタデシル),
C8(オクチル)
シリカゲル表面にアルキル鎖を修飾、逆相クロマトグラフィーモードで用いられ、主に無~低極性化合物の分離に用いられる。
CN, Diol シリカゲル表面をCN : シアノアルキル基、Diol : 1,2-ジヒドロキシ-3-プロポキシプロピル基で修飾。展開溶媒により順相・逆相いずれのモードでも使用される。
NH2 シリカゲルをアルキルアミノ基で修飾。糖、カテコールアミン等の分離に用いられる。
アルミナ 吸着クロマトグラフィーモードで使用され、主に塩基性化合物の分離に用いられる。
ポリアミド樹脂 フェノール類やカルボン酸の分離に用いられる。
セルロース 順相分配クロマトグラフィーモードで、炭化水素の分離に用いられる。

②蛍光物質の有無

種類 特長・種類
無し 蛍光物質を含まない。発色試薬(硫酸、ニンヒドリン、ヨード等)の噴霧によりスポットを検出する。蛍光を発する試料の選択的検出に便利。
単色蛍光物質 紫外線の照射により励起され蛍光を発する。主に254 nmの紫外線照射で緑色の蛍光を発するものが用いられる。
混合蛍光物質 赤、緑、青の蛍光物質が添加されている。広領域紫外線(250~400 nm)の照射により、スポットはその物質特有の紫外部吸収を示し、白色地に赤や青などの有色スポットとして観察される。

③プレート(支持体)の材質

種類 特長・用途
ガラス 耐薬品性に優れており最も幅広く利用されている。他の材質と比べ重く、切断にはガラスカッターなどが必要。
アルミニウム カッター、ハサミで切断できるが、展開溶媒によっては担体が剥離する場合がある。また強酸、強アルカリなどは発色試薬として用いることができない。
プラスチック カッター、ハサミで切断可能で軽い。かさばらずに保管できるが、加熱しすぎると変形する恐れがある。強酸により使用できない場合がある。

④用途

種類 特長・用途
分析 比較的粒子径の小さい担体が用いられる。層厚は薄いものが用いられる。より高分離分析を行うため、試料の濃縮ゾーンを設けたものや、粒径が小さく均一な担体を使用しているタイプもある。
分取 比較的粒子径の大きい担体が用いられる。層厚は厚いものが用いられる。


TLCにおける検出原理、使い分けは?

TLCにおいてスポットの検出は、呈色試薬による発色、紫外線照射などにより行われます。呈色試薬は、無色の物質を可視線を吸収する物質に変えることで検出を行うときに使用されます。呈色する物質が決まっているため特異性の高い検出や、蛍光や発光を発しない物質の検出に用いられます。

紫外線照射で検出を行う場合、1種類の蛍光物質が担体に添加されている薄層プレートと、3種類の蛍光物質が添加されている薄層プレートがあります。

1種類の蛍光物質が添加されている場合、特定波長(例えば254 nm)の紫外線を吸収し特定波長の可視光線(緑色)を放射するプレートは緑に見えます。254 nmの紫外線を吸収する物質のスポットがプレート上にあると、物質が紫外線を吸収するので、プレート上の蛍光物質まで光が届かず可視光を発しないため、暗く消光したスポットが検出されます。異なる物質でも同一または近似のRf値を示すものは区別がつかない場合があるものの、紫外線を吸収する物質のスポットを簡便に検出できるため、広く利用されています。

3種類の蛍光物質が添加されている薄層プレート(製品名:「シリカゲル70FMプレート-ワコー」)は、赤、緑、青に発行する蛍光物質が添加されており、広領域紫外線(250~400 nm)の照射により白色に見えます。ある特定波長の紫外線を吸収する物質のスポットがプレート上にあると、その物質が吸収した以外の透過紫外線により励起された蛍光物質のみが発光し、白色地に有色スポットとして検出されます。そのため同一または近似のRf値を示すものでも色の相違により同定が可能となります。呈色試薬を用いず同定が可能で、医薬品や食品の分析に用いられます。


蛍光物質の混合されたプレートを加熱しても大丈夫ですか。

蛍光物質の混合されたプレートに用いられている蛍光物質は無機蛍光体ですので、加熱により発色することはありません。

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