【クロマトQ&A】:アミノ酸分析法(2):LC/MS-アミノ酸分析(アミノタグワコー)
本記事は、Analytical Circle No.73(2014年6月号)に掲載されたものです。
LC/MSでアミノ酸の組成分析を実施したいと思います。短時間、高感度分析法をご紹介下さい。
汎用的なHPLC-UV検出器を用いる方法として、Wakopak® Wakosil-PTCカラムと溶離液を用いた遊離アミノ酸の組成分析法と試料のPTC-誘導体化方法を紹介いただきましたが、LC/MSに適する方法を教えて下さい。
アミノ酸組成分析法で代表的な方法は、アミノ酸を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離した後、ニンヒドリンやo-フタルアルデヒド(OPA)などで発色または発蛍光させて検出する(1) ポストラベル法と、あらかじめアミノ酸を標識した後、HPLCで分離分析する(2) プレラベル法、また近年、LC/MSの普及によりアミノ酸を誘導体化せずに検出する(3) 直接検出法、の三つに大別されます。LC/MS法は、HPLCで分離し、質量分析計で検出することにより、保持時間が近似したアミノ酸も区別することが出来ます。しかし、アミノ酸をそのままLC/MSで分離、検出する方法では検出感度に限界があります。そこでLC/MSに適した誘導体化試薬を用いたプレラベル法を実施することにより、逆相系カラムでアミノ酸を分離し、高感度な検出が可能になります。
当社では、HPLC-UVに適するプレラベル法、HPLC-MSに適するプレラベル法、に必要な試薬類、標準品、標準液、HPLCカラムなど取り揃えております。
今回、LC/MS-プレラベル法、アミノタグ®ワコーによる高感度、高速アミノ酸分析法をご紹介いたします。
アミノ酸組成分析法は、タンパクやペプチドの研究の場においてはもちろんのこと、食品中の遊離または構成アミノ酸の分析や、各種発酵過程におけるモニタリング、あるいは、尿や血液を試料としたアミノ酸代謝異常症の診断など、各方面、分野において非常に重要な分析方法です。
アミノタグ®ワコー
プレカラム誘導体化LC/MS分析のためのアミノ酸誘導体化分析用試薬です。
遊離アミノ酸をAPDS※で誘導体化した後、逆相系カラムを使用、LC/MSにて分離検出します。内部標準法により高感度でバラツキの少ないアミノ酸組成分析法が可能です。
※APDS:3-アミノピリジル-N-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(3-Aminopyridyl-N-hydroxysuccinimidyl Carbamate)
誘導体化標準操作法
- 反応試薬溶液の調製。
アミノタグ®ワコーのアミノ酸分析試薬(コードNo.014-23841) 100 mgにアセトニトリル(LC/MS用) 5 mLを加え混合し、反応試薬溶液とする。(注:反応試薬溶液は調整後2~10 ℃保存で2週間以内に使用してください。) - アミノタグ®ワコー用ほう酸緩衝液(コードNo.019-23151) 185 µL + サンプル 10 µL + 1)の反応試薬溶液 5 µL
よく混合した後、55~60 ℃で5~15分間加温。 - LC/MSで分析する。(※アミノ酸の濃度により溶離液で希釈。)
液体クロマトグラフィーのカラムに注入し、アミノタグ®ワコー用溶離液(コードNo.010-23061)とアセトニトリル(LC/MS用)によるグラジエント方式により分離溶出させます。
誘導体化反応
APDSアミノ酸LC/MS分析例
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ピークNo. アミノ酸 m/z 内部標準 1 アスパラギン酸 254.1 Asp-IS 2 グルタミン酸 268.1 Glu-IS 3 アスパラギン 253.1 Asn-IS 4 セリン 226 Ser-IS 5 グリシン 196 Gly-IS 6 グルタミン 267.1 Gln-IS 7 ヒスチジン 276.1 His-IS 8 スレオニン 240.1 Thr-IS 9 アラニン 210 Ala-IS 10 アルギニン 295.1 Arg-IS -
ピークNo. アミノ酸 m/z 内部標準 11 プロリン 236.1 Pro-IS 12 シスチン 481.1 Cys2-IS 13 チロシン 302.1 Tyr-IS 14 バリン 238.1 Val-IS 15 メチオニン 270.1 Met-IS 16 リジン 387.1 Lys-IS 17 イソロイシン 252.1 Ile-IS 18 ロイシン 252.1 Leu-IS 19 フェニルアラニン 286.1 Phe-IS 20 トリプトファン 325.1 Trp-IS
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HPLC Conditions
Column : Wakopak® Wakosil-Ⅱ 3C8-100HG, 2.0 mm x 100 mm Eluent : A) アミノタグ®ワコー用溶離液
B) CH3CN/H2O = 60/40 (v/v)
0-0.01 min. B 5-10 %
0.01-1.5 min. B 10-12 %
1.5-1.51 min. B 12-20 %
1.51-7.75 min. B 20-45 %
7.75-7.76 min. B 45-95 %
7.76-8.5 min. B 95 %
8.51-15.0 min. B 5 %Flow Rate : 0.3 mL/min. at 40℃ Inject. Vol. : 5 µL -
MS Conditiosn
ESI、SIM (posモード)
Probe voltage : 4.5kV
Nebulizing gas flow : 1.5 L/min.
Block heater temperature : 220℃
CDL temperature : 250℃
CDL, Q-array voltages : 1.5kV
System : LCMS-2010A(島津)
参考文献
- K. Shimbo, et. al. : Rapid Commun Mass Spectrom, 23, 1483-92, (2009).
- K. Shimbo, et. al. : Biomed Chromatogr., 24, 683-91,(2010).
- K. Shimbo. et.al. : Anal Chem., 81, 5172-9, (2009).
- 和光純薬時報 Vol.79, No.1, 2-4,(2011).