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【クロマトQ&A】:固相抽出カラム用ODS(C18)シリカゲル系充てん剤とポリマー樹脂充てん剤について

本記事は、Analytical Circle No.70(2013年9月号)に掲載されたものです。

試料前処理固相抽出(SPE)カラムには、中極性から低極性化合物の捕集、抽出、クリーンアップに使用されるカラムとして、シリカゲルを基材としたODS(C18)カラムと、同じ逆相系条件で使用するポリマー樹脂カラムがありますが、どのような特長、違いがあるのでしょうか。

当社試料前処理固相抽出(SPE)カラム Presep®シリーズの中で、ODS(C18)と同様の逆相系で使用できるポリマー樹脂を使用した製品については、前回のクロマトQ&Aでご紹介したPresep®RPPシリーズと農薬分析用(Presep®Agri)などがあります。基材にジビニルベンゼン-メタクリレート系ポリマーを採用した、親水性球状多孔性ポリマー樹脂を使用しています。

これらPresep®ポリマー樹脂カラムは、Presep®C18(ODS)では保持し難い極性の高い化合物の捕集が可能である点シリカゲルに吸着しやすい塩基性化合物を回収できる点が大きな違いです。また、ODSより水に馴染みやすい性質を持ち、水系試料の通液中に送液が途切れた際にも保持性能の低下が見られないという利点があります。

極性の異なる化合物を対象とした一斉分析を目的とした前処理にはPresep® RPPを推奨しています。

また、一般的にポリマー樹脂を基材とした充てん剤は、(1) pH使用領域が大きい(2) 粒子径、細孔径を幅広い範囲で制御して製造が出来る(3) 生体親和性が高く、生体試料などの分析において特異的吸着が少ない、などが特長として挙げられます。

Presep®-C C18(ODS) (充てん量 900 mg)とPresep® RPP (充てん量 200 mg)を使用して標準的な薬物8成分(中性化合物:Acetaminophen、Caffeine、Theophirin、酸性化合物:Sulfamerazine、Salicylamide、塩基性化合物:Propranolol、Doxepin、Trimipramine)について添加回収実験の例をご紹介します。

Presep®-C C18では、高極性化合物の保持不足によるカラムからの漏れ、塩基性化合物の吸着によるカラムからの溶出不足が認められました。ポリマー樹脂カラムでは、他社カラムも同様に、極性の異なる化合物を一斉に捕集し、少ない溶媒で溶出が可能でした。

さらに、イオン性化合物を含む一斉分析の場合には、ミックスモードカラムであるPresep® RPP-イオン交換(逆相+イオン交換)が有用です。[前回のクロマトQ&Aを参照]

プロトコル
プロトコル
表1.標準薬物の回収率比較/ポリマー系樹脂カラム
薬物名 平均回収率(%) n = 4
Presep®
RPP
Presep®-C
Agri
A社 B社
p-Acetaminophen 98.8 98.8 97.1 97.2
Caffeine 100.2 100.0 97.4 97.4
Sulfamerazine 100.7 101.5 98.3 100.8
Salicylamide 100.8 100.9 97.9 100.3
dl-Propranolol
Hydrochioride
100.6 98.1 90.5 97.6
Doxepin
Hydrochioride
102.0 99.0 91.3 98.7
Trimipramine
Hydrochioride
99.0 97.2 91.3 97.5
Theophirin 100.3 99.7 97.5 97.9

※充てん剤:200 mg、溶出液:CH3OH 10 mL
※ポリマー系カラムではいずれも良好に捕集、回収が可能

表2.標準薬物の回収率/Presep®-C C18 (900 mg)
薬物名 平均回収率(%) n = 3
通過液 洗浄液 溶出液
5 mL
溶出液
5-10 mL
溶出液
5-15 mL
回収率(%)
p-Acetaminophen 4.8 5.9 59.4 59.4
Caffeine 70.6 70.6
Sulfamerazine 17.8 25.2 30.2 30.2
Salicylamide 6.5 11.0 51.7 1.5 2.0 55.2
dl-Propranolol Hydrochioride 50.2 19.4 12.4 82.0
Doxepin Hydrochioride 58.0 18.4 11.9 88.2
Trimipramine Hydrochioride 61.8 20.8 5.5 88.1

※ODSカラムでは、高極性化合物は一部カラムに吸着されず、漏れを確認。
※塩基性化合物は吸着し、溶出溶媒量が多く必要。

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