【クロマトQ&A】:ミックスモード固相抽出カラム(逆相+イオン交換)について
本記事は、Analytical Circle No.69(2013年6月号)に掲載されたものです。
Presep®RPPシリーズにPresep®RPP-SAX、Presep®RPP-WAX、さらに本誌No.69ではPresep®RPP-WCXが新製品として紹介されていますが、どのように使用すればいいのですか。
ミックスモード固相抽出カラム(逆相+イオン交換)は、逆相系モードでは捕集が難しいイオン性化合物の捕集や中性、塩基性、酸性が混在した目的化合物をイオン性の違いにより分離して抽出する際に有用な固相抽出カラムです。逆相モード、逆相+陰イオン交換モード、逆相+陽イオン交換モード、各カラムの用途、使用例を比較して表1に示します。
分析試料の精製・濃縮などの前処理に固相抽出法(SPE)は従来の液-液抽出法に比べて簡便な手法として、医薬・食品・環境分析など様々な分野で広く採用されています。
当社の固相抽出カラムのなかで "Presep® RPPシリーズ" は、ジビニルベンゼンメタクリレート系親水性ポリマーを基材とした、球状多孔性ポリマー樹脂を採用した固相抽出カラムです。
Presep® RPPシリーズは、親水性逆相系樹脂を使用したカラム(RPP)と、親水性逆相系樹脂にイオン交換基を導入した固相抽出カラムのシリーズです。
Presep® RPPは、シリカゲル系ODS(C18)を充てんしたカラムに比較して、高極性の化合物の捕集能が高いことを特長としています。しかし、逆相モードのカラムは、水系試料の前処理には適していますが、有機溶媒に溶解した試料の前処理には適しません。また、高極性化合物の捕集も充分ではありません。
イオン交換基を有するSPEは、逆相系モードでは捕集できないイオン性高極性化合物の捕集が可能ですが、イオン交換基のみでは、対イオン性化合物は捕集できますが、同じイオン性の化合物および中性化合物は捕集できません。
ミックスモードカラムでは、イオン性化合物と中性およびイオン化していない化合物も同時に捕集することが可能になります。また、逆相系では吸着力が小さく捕集されにくい高極性化合物もイオン化していればイオン交換基で捕集することが可能です。
逆相系ポリマーにイオン交換基を導入したミックスモードカラムでは、酸性、中性、塩基性の化合物を一度に捕集が可能で、溶出条件により、対イオン性の化合物と中性・同イオン性化合物とを分けて溶出することが可能です。また、イオン交換カラムおよびミックスモード(逆相+イオン交換)カラムでは、有機溶媒中のイオン性化合物を抽出することも可能です。
表1.Presep® RPPシリーズ比較(水系試料からの捕集の場合)
項目 | Presep® RPP | Presep® RPP-SAX | Presep® RPP-WAX | Presep® RPP-WCX |
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分離モード | 逆相系分配吸着 | 逆相系分配吸着 +強陰イオン交換 |
逆相系分配吸着 +弱陰イオン交換 |
逆相系分配吸着 +弱陽イオン交換 |
イオン交換基 | ー | 第四級アンモニウム基 | 第三級アンモニウム基 | カルボキシル基 |
試料※ | 水溶液、必要に応じ緩衝液でpHを調整する。捕集に影響しない程度の有機溶媒の添加可能。 | pH中性または抽出目的に適するpHに調整。高極性酸性化合物の捕集にはアンモニア水を1 %添加。 | pH中性または抽出目的に適するpHに調整。ぎ酸を1 %添加。 | pH中性または抽出目的に適するpHに調整。アンモニア水を1 %添加。 |
コンディショニング※ | (1) アセトニトリル、メタノールまたは溶出に使用する有機溶媒→(2)水→(3)試料調製溶媒 *(3)は回収率に影響しない場合は省略可。 |
(1)メタノール→(2)水→(3)試料調製溶媒 *(3)は回収率に影響しない場合は省略可。 |
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洗浄※ | 水または捕集した目的物が溶出しない範囲で有機溶媒を添加した水溶液など。 | 水または捕集した目的の化合物が溶出しない有機溶媒を添加し、イオン交換基の結合を妨げない溶媒。 | ||
捕集※ | 疎水性相互作用で吸着する化合物を捕集。 | 疎水性相互作用で吸着する化合物およびイオン交換に吸着する酸性化合物を捕集。 | 疎水性相互作用で吸着する化合物およびイオン交換に吸着する塩基性化合物を捕集。 | |
溶出溶媒※ | アセトニトリル、メタノールなどの有機溶媒 | 溶出(1) メタノールなどの有機溶媒 中性、塩基性化合物を溶出 |
溶出(1) メタノールなどの有機溶媒 中性、酸性化合物を溶出 |
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溶出(2) 2 %ぎ酸/メタノール 酸性化合物を溶出 |
溶出(2) 1 %アンモニア/メタノール 酸性化合物を溶出 |
溶出(2) 5 %ぎ酸/アセトニトリル/メタノール 塩基性化合物を抽出 |
※汎用的な使用方法を記載していますので、抽出目的成分により記載条件以外の条件でもご使用になれます。