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【クロマトQ&A】:Wakopak ODSカラムの洗浄、保守・保管方法について

本記事は、Analytical Circle No.64(2012年3月号)に掲載されたものです。

HPLC用ODSカラムを使用しています。分析中に①急にピーク形状が悪くなった場合 ②前日まで良好に分析できていたカラムが、同じ分離を得られなくなった場合 ③長期保管していたカラムを使用した際に前回と同じ分離が得られない場合などは、カラムの劣化が原因でしょうか? 洗浄により回復が可能でしょうか?

連続分析中に、ピーク形状が急に以上になった場合は、カラムの突然の劣化よりも、他の要因が起因している場合がほとんどです。しかし、いったん分析を中断し後日、分析を再開した場合や長期使用せず保管していたカラムでは、分析使用後のカラムの保守・保管状況がカラムの劣化に大きく影響してきます。また、どんなに丁寧に使用されてもカラムは徐々に劣化します。急なトラブルを回避して安心した分析のためには、使用後のカラムの洗浄保守、カラムの性能確認、を定期的に実施されることをおすすめします。基本的には、ご購入いただいたカラムに添付されている説明書を参考に分析終了時の洗浄方法を決めて洗浄してください。長期保管の際には、適切な溶媒に置換して保管します。また、分離異常の際には、検査成績書の検定条件を利用して、性能確認をされると良いと思います。当社Wakopak ODSカラムの洗浄、カラム検定条件、保守・保管方法についてご紹介いたします。

カラムの劣化状況として

  1. ピークがブロードになる
  2. ピークがテーリング、リーディングする
  3. 保持時間が変化する
  4. ベースラインの安定性が悪くなる
  5. カラム圧力が上昇する

などが挙げられます。

原因として

  1. 充てん剤に強く保持される物質がカラムに蓄積する
  2. カラムの入り口のフィルターが目詰まりする
  3. カラムの充てん状態が変化している

などが考えられます。

原因1)、2)の場合には、洗浄によりある程度、回復する場合がありますが、3)の場合には、回復は困難です。

洗浄液、検定用溶離液を送液する前に

分析時の溶離液に緩衝液/有機溶媒混液、イオンペアー試薬を添加した溶離液を使用している場合は、緩衝液の塩、イオンペアー試薬が析出しないように除去します。使用中の溶離液と同じ比率に合わせた、有機溶媒/酸性水(0.1 %りん酸添加)をカラム容量の5倍から10倍程度流します。酸性の溶離液に置換することで、カラム内が塩基性に偏らないようにします。その後、状況に合わせて洗浄液または検定用溶離液を送液します。

洗浄液、洗浄方法

洗浄目的は、

  1. カラムに蓄積した化合物を溶解するような溶離液を流してカラムに残留した不純物を溶出する
  2. カラム圧力が高い場合にはフィルターの目詰まりの要因物質を除去する

ことです。残留物の除去、カラム圧力の低下により性能が回復する可能性があります。

カラムに残留、蓄積していると想定される物質が溶けやすい溶出力の強い溶媒として、ODSカラムの場合、メタノール、アセトニトリル、イソプロピルアルコールなどが適当です。塩基性化合物の残留が考えられる場合は、1 %程度の酸(りん酸、酢酸、ぎ酸)を添加すると効果的なこともあります。送液量は、分析時の検出条件でベースラインの安定化を目安にするといいでしょう。カラム圧力が下がらず、カラムin側の目詰まりが推測されるような場合には、検出器との接続を外して、洗浄液を使用時とは逆方向から通常の5分の1くらいのゆっくりした流速で送液します。有機溶媒比率の高い洗浄液から、緩衝液を含む溶離液に変更する場合も塩が析出しない方法で置換してください。

以上、一般的な洗浄方法になりますが、分析ごとに最適な洗浄方法は異なりますので、分析対象の試料に何が含まれているのか、使用している溶離液により適する洗浄を設定してカラムの保守をしていただくことをおすすめします。また、同じODSカラムでも銘柄により使用条件の制限が異なることがありますので、カラムの説明書に則した条件で実施してください。

カラム性能の確認

カラムの初期性能との比較をします。実用されている分析条件で目的化合物の標準物質などの分離を確認する方法と製品に添付されている検査成績書の試験条件で確認する方法が一般的で、おすすめします。

前述の洗浄液から、カラムの性能確認用の溶離液に置換します。実用の溶離液に緩衝液やイオンペアー試薬を使用している際には、洗浄液に置換する場合と逆の要領で析出しないように置換します。

カラム検定条件例

Wakopak ODS, 4.6 mm x 150 mm
Eluent : CH3CN/H2O = 60/40 (v/v)
Flow rate : 1.0 mL/min. 一定温度
Sample : 1) Uracil 2) Benzen 3) Naphethalene (Wakopak Test Mixture RP)
Inject. vol. : 5 µL

カラム性能の確認項目

理論段数N、保持能α、ピーク対称性S、カラム圧力

理論段数、保持能は、初期値の80 %以上保持されていればまだ問題なく使用できます。

ただし、実際の試料の分析において、どこまで使用できる範囲とするかについては、個別に基準を決めて管理していただくことになります。各係数の計算方法は、Analytical Circle No.1 (1996年5月号)に掲載のクロマトQ&Aに掲載していますので参考にしてください。

カラムの保管溶媒

カラムを長期保管される場合は、カラム購入時に封入されている溶媒に置換してください。

当社のWakopak ODSカラムの場合は、60 % CH3CN水溶液です。

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