【クロマトQ&A】:簡便な溶媒削減効果のある分析条件への変更、カラムサイズ4.6mmφ→3.0mmへの変更について
本記事は、Analytical Circle No.52(2009年3月号)に掲載されたものです。
内径 4.6 mmのカラムを使用しています。溶離液を減らし溶媒削減効果のある条件に変更したいのですが検討時間が無く、HPLC装置も現在使用している装置を使用したいと考えています。簡便に溶媒削減効果のある条件に変更する方法を教えてください。
カラムサイズを内径4.6 mmから3.0 mmに変更し、流速を半分に設定することで、今まで通りの分析が可能です。分析時間の短縮にはなりませんが、溶離液、溶媒を削減したい場合に効果的です。同じ充てん剤を充てんしたカラムでは、カラムの断面積に比例して流速を変更するだけで同様の結果が得られます。HPLC装置の変更や分析条件を検討する必要はありません。
4.6 mm I.D. x 150 mmと3.0 mm I.D. x 150 mmのカラムで、カラムの断面積に合わせて流速を変更しカラム基本性能試験を実施した時の、クロマトグラムを図1に、性能比較を表1に示します。断面積に合わせて流速を 0.43 mL/min. に変更した場合、流速を半分の 0.5 mL/min. に変更した場合のいずれも、カラム理論段数、ピーク形状、カラム圧力の変化はほとんどありません。
Column : Wakopak® Navi C18-5
Eluent : CH3CN/H2O = 60/40
Temp. : 35 ℃
Detection : UV 254 nm
Sample : 1) uracil 0.77 mg, 2) benzene 145 µL, 3) naphthalene 20 mg in 100 mL CH3CN/H2O = 60/40 (v/v)
図1.カラムサイズ比較(基本性能試験)
表1.カラムの基本性能比較
カラムサイズ | 断面積(mm2) | 断面積比率 | 流速(mL/min.) | 理論段数(N) | ピーク対称性(As) | カラム圧力(bar) |
---|---|---|---|---|---|---|
4.6 mm I.D. x 150 mm | 5.29π | 1 | 1 | 16000 | 0.95 | 53 |
3.0 mm I.D. x 150 mm | 2.25π | 0.425 | 0.5 | 15300 | 0.94 | 56 |
3.0 mm I.D. x 150 mm | 2.25π | 0.425 | 0.43 | 15400 | 0.94 | 53 |
風邪薬に含まれる成分の分析例を図2に示します。この時の溶出時間と面積値の比較を表2、3にまとめました。流速 0.5 mL/min.にした場合、溶出時間は少し早くなりますが、流速設定が容易で、注入量を半分にした場合面積が一致するという点からHPLC装置の精度の影響が少なく、簡便に移行時の設定が行えます。流速、注入量の細かい設定が可能なHPLC装置では、断面積の比率に合わせ流速、注入量を減少させると内径 4.6 mmの時と同様の結果が得られます。
Column : Wakopak® Navi C18-5
Eluent : CH3OH/0.1 % H3PO4 = 30/70
Detection : UV 260 nm
Temp. : 35 ℃
Sample : 1) acetaminophen 5 mg, 2) caffeine 6 mg, 3) phenol (IS) 20 mg, 4) aspirin 50 mg, 5) ethenzamide 25 mg in 100 mL CH3OH
図2.カラムサイズの比較(風邪薬成分の分析例)
表2.流速変更による検出感度(ピーク面積値)の比較
カラムサイズ | 流速(mL/min.) | 注入量 | Peank area | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
acetaminophen | caffeine | phenol (IS) | aspirin | ethenzamide | |||
4.6 mm I.D. x 150 mm | 1.00 | 10 µL | 1656.55 | 1302.92 | 983.97 | 1395.16 | 588.54 |
3.0 mm I.D. x 150 mm | 0.43 | 5 µL | 1872.23 | 1503.86 | 1143.28 | 1524.83 | 660.64 |
3.0 mm I.D. x 150 mm | 0.50 | 5 µL | 1678.91 | 1316.49 | 996.05 | 1335.33 | 591.86 |
表3.カラムサイズ、流速変更による溶出時間の比較
カラムサイズ | 流速(mL/min.) | 注入量 | R.T. (min.) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
acetaminophen | caffeine | phenol (IS) | aspirin | ethenzamide | |||
4.6 mm I.D. x 150 mm | 1.00 | 10 µL | 2.83 | 4.72 | 7.98 | 12.20 | 15.49 |
3.0 mm I.D. x 150 mm | 0.43 | 5 µL | 2.81 | 4.75 | 7.87 | 11.86 | 15.07 |
3.0 mm I.D. x 150 mm | 0.50 | 5 µL | 2.48 | 4.16 | 6.94 | 10.50 | 13.37 |
3.0 mmより内径の小さいカラムを使用する場合、カラムサイズに合ったHPLC装置への変更が必要になりますが、4.6 mmから3.0 mmへの変更であれば、カラム長が同じならHPLC装置はそのままで同等の分析が可能です。さらに分析対象物の溶出状況によってカラム長を短いサイズに変更しても分析可能な場合は、分析時間の短縮も可能で、溶媒のさらなる削減につながります。
その他、溶媒の変更、充てん剤粒子径の5 µmから3 µmへの変更、さらに小さいカラムサイズへの変更などで溶媒削減の効果が期待できます。変更時に条件検討が必要です。まずは内径 3 mmのカラムを試してみることをおすすめします。