【クロマトQ&A】:薄層クロマトグラフィー(TLC)で使用するシリカゲルプレートとアミノシリカゲルプレートの違いについて
本記事は、Analytical Circle No.53(2009年7月号)に掲載されたものです。
薄層クロマトグラフィー(TLC)で、シリカゲル薄層プレートは使用したことがありますが、アミノシリカゲルプレート(アミノTLC)は、使用したことがありません。NH2シリカゲル60F254プレート-ワコーはシリカゲル70F254プレート-ワコーなどのシリカゲル薄層プレート(シリカゲルTLC)とはどのように使い分ければいいでしょうか。
薄層クロマトグラフィー(TLC Thin-Layer Chromatograpy)はガラスの板の上にシリカゲル、アミノシリカゲル、アルミナ、ポリアミド樹脂などを薄く塗布したもので、主に、反応の進行状況を簡便かつ迅速に確認したり、カラムクロマトの分離条件を検討したり、分離の確認に用いられます。
シリカゲルTLCはシリカゲルを、アミノTLCはアミノシリカゲルを塗布しています。シリカゲルの表面には、ケイ素(Si)に水酸基(OH)が1つまたは2つついた「シラノール基」があり、シラノール基と物質が吸着することで分離します。しかし、このシラノール基は塩基性物質を強く吸着するため、シリカゲルTLCで強塩基性物質を分離した場合、展開溶媒を変えてもスポットのテーリングや吸着したまま展開しない状況が改善できず、良好な分離が得られないことがあります。
アミノシリカゲルは、シラノール基をアミノで修飾することで、塩基性物質とのイオン結合性相互作用を減少させる効果があります。塩基性物質の分離において、シリカゲルTLCでは展開溶媒にアンモニア水、アミン類などの添加が必要となりますが、アミノTLCでは添加せずに2,4,6-トリメチルピリジンや4-ジメチルアミノピリジンのような塩基性物質を分離できます。
アミノTLCはシリカゲルTLCと比較して価格が高くなっています。そこで、シリカゲルTLCとの使い分けとして、まず、シリカゲルTLCで分離してみて、どうしても分離が難しいような場合にNH2シリカゲルTLCでの分離を検討してみることをおすすめします。
強塩基性物質や酸性、中性、塩基性を問わず高極性物質では、シリカゲルTLCではテーリングするなどきれいなスポットが得られない場合があり、アミノTLCを使用すると改善が見られることが多くあります。
まずは、シリカゲルTLC、それで難しいようなら、"NH2シリカゲル60F254プレートワコー" です。
NH2シリカゲル60F254プレートワコーの特長
- 中極性または高極性物質の分離に適しています。
- 強塩基性物質の分離に有効です。
- 緩衝液など水を含む展開溶媒を用いると弱陰イオン交換系のTLCとして酸性物質の分離にも有効です。
- ガラスプレートのTLCですので、多くの検出方法がご使用いただけます。