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【クロマトQ&A】グラジエント分析法でカラムサイズや流速をかえて分析したい。

本記事は、Analytical Circle No.15(1999年12月号)に掲載されたものです。

HPLC でグラジエント分析法を用いて分析しています。カラムサイズや流速をかえて分析したいのですが、変更前と同様のピーク分離を達成するためのポイントを教えて下さい。

ODSなど逆相充てん剤カラムを用いたHPLC 分析では、時間とともに溶媒の混合比を直線的に変化させて溶離するグラジエント分析法が多く用いられています。前回のQ&A、装置を変える場合に続いて、今回はカラムサイズや流速をかえて分析する場合のポイントについて触れたいと思います。

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[1]カラム長さを変える場合(流速条件は同一)(図1)

ポイント:グラジエントの初期濃度と最終濃度を同一とし、グラジエントの時間をカラムの長さに比例して変化させる。

図1.カラムの長さとグラジエント条件の関係

例えば図1 で、カラム長さを(1) 250mm から(2) 150mm に変える場合についてみてみます。長さ250mm のカラムでは分析開始時から15 分間で移動相Bの混合比率を55% から100% に変化させています。それに対し、150mm のカラムでは250mm の3/5 の9 分間で同じく55% から100% に変化させることによりほぼ同じ分離効率が得られているのがお分かりいただけると思います。

イソクラティック分析法の場合、分離の効率はカラム長さに関係し、カラムが長いほど分離は改善されます。それに対しグラジエント条件下で分離される成分の分離効率は、カラム長さにかかわらずほぼ同じであり、カラム長さの影響を受けていません。カラムを短くすれば短時間分析も可能です。

[2]流速を変える場合(カラム長さは同一)(図2)

ポイント:流速を変化させた分、分析時間を長く(短く)する。

図2.流速の変化とグラジエント条件の関係

図2 に、流速を1.5 mL/min から1.0 mL/min に変化させた場合の、グラジエント条件の設定例を示します。(1)から(2)のように流速だけを変化させても、同一のグラジエント勾配では同一分離は得られません。(3)のように流速を遅くした分だけグラジエント時間を元の9 分からその3/2 倍の13.5 分にグラジエント時間を長くすることが必要です。逆に流速を1.0 mL/min から1.5 mL/min に速くする場合は、グラジエント時間を反対に短くすればいいことが分かります。

[3]カラムの内径を変える場合(図3)

ポイント:カラムの断面積を小さく(大きく)するのに応じて

  1. 同一グラジエント勾配なら流速を遅く(速く)する。
  2. 同一流速ならグラジエント時間を短く(長く)する。

図3.カラム内径の変化とグラジエント条件の関係

図3 のように、カラムの内径を4.6 mm から4.0 mm に小さくした場合、(2)のように同一グラジエント勾配なら断面積に比例し流速を遅くすることにより同一分離が得られます。(3)のように同一流速ならグラジエント時間を短くします。カラムの内径を大きくする場合はその逆です。

以上、同一分離を確保することを前提に条件移行のポイントについて説明しました。これらの方法を有効に利用すれば、分離を変えることなく分析条件の移行が容易に達成されます。これらは① LC/MS等でセミミクロカラムを使用する、②短時間分析のためショートカラムを使用する、③分析カラムから分取カラムに移行する等の場合に有効と思われますので参考にして下さい。

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