【クロマトQ&A】内径2mmφのセミミクロカラムを使用したが、一般に言われる様な感度アップが認められません。
本記事は、Analytical Circle No.13(1999年6月号)に掲載されたものです。
Analytical Circle No.8 の記事を見てカラム内径2 mmφのセミミクロカラムを使用しましたが、一般に言われる様な感度アップが認められません。使用している装置は、一応ミクロカラムに対応しているはずなのですが...
No.8 では、セミミクロカラムを利用する事により内径4.6mm に比べて
- 移動相使用量が少なくて済む
- わずかなサンプル量で分析できる
- 検出感度が増大する
など、いくつかの注意点を示しながら有用性を紹介しました。しかし、実際の取扱いにおいては、ハード及びソフト面でいくつかの注意が必要になります。
ハード面に関しては、ご質問内容にも書かれておられるようにミクロカラムに対応しているようですが、もう一つの注意点としてサンプル注入にオートインジェクターを使用するのか、また手動で注入するかによってもピーク形状や保持時間に差が生じます。
図 1. に多環芳香族化合物(PAHs)を 分析した例を示します。
オートインジェクターの使用により、初期に溶出される成分のピークの切れの悪化と保持時間の延びが認められます。これは、オートインジェクターに取り付けられたサンプルループの容量に原因があり、通常の使用において全く問題にならない要因でさえも、低流量領域での使用において大きな問題となります。
ソフト面から見れば、「試料を何に溶かし、どのくらい注入するのか」が最大のポイントであり、これらの影響も初期に溶出される成分のピーク形状に顕著に現れております。
図2. にPAHs を極性の異なる溶媒に溶解し、同一量注入した場合のクロマトグラムの違いを示しました。親水性が高く水に易溶な試料を水、もしくは移動相の初期溶媒に溶解して取扱う場合にはさして問題とはなりません。しかしPAHs の様な疎水性の高い試料を、移動相より溶出力の強い溶媒に溶解した場合には、「何に溶かすか」が重要となり、特に強溶出溶媒に溶かす事は、ピークのブロード化につながってしまい避けなければなりません。
Conditions
Column ; Wakosil-PAHs (2.0 x 250mm)
Eluent ; A: CH3OH/H2O=80/20 (v/v), B: CH3CN 0-4min B: 10%, 4-7min B: 10-100%, 7-20min B: 100% (linear)
Flow rate ; 0.2 mL/min
Gradient Mixer Vol. ; 500 µL
Temp. ; 35℃
Detector ; UV 254nm, 0.128 aufs
Instrument ; Shimadzu LC-10A (Auto Injector)system
Sample ; ①Naphthalene, ②Acenaphthylene, ③Acenaphthene, ④Fluorene, ⑤Phenanthrene, ⑥Anthracene, ⑦Fluoranthene, ⑧Pyrene
また、同一溶媒に溶かした場合においても、できる限り少量を注入する方がピーク形状の改善につながります。
以上、セミミクロカラムの使用時における注意点を説明しましたが、セミミクロカラムの特性と汎用カラムとの違いを十分ご理解いただいた上で使用していただければ、非常に有用な分析手段であると言えます。