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【テクニカルレポート】逆相系フラッシュクロマトグラフィーにおける条件設定方法について

本記事は、和光純薬時報 Vol.65 No.4(1997年10月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。

フラッシュクロマトグラフィーは簡易精製方法として非常に有効な手段であり、従来から行われているオープンクロマトグラフィーに比べ、短時間、かつ高精度に分離精製が可能になるなどの利点がある。シリカゲルを使用する順相系フラッシュクロマトグラフィーの条件設定、及びフラクションの確認にはTLCが汎用され、TLCのRf値から容易に分離条件が推察される。

しかし、逆相系フラッシュクロマトグラフィーの場合には、何か使いづらいとのイメージがあり、「はて、どうしたらいいかな?」「逆相系TLCでは展開に時間がかかるし、相関がとれるかが心配だな」と問われるケースが多い。

この場合、私は「HPLCグラジエント法で条件検討を行って下さい」と答えることにしている。特にグラジエント法と記したのは、グラジエント法の方がイソクラティック法より充填剤の粒度の影響を受けにくいからである。

分離精製条件は、全成分を分取したい場合とある特定の成分のみを分取したい場合により異なってくるが、条件設定の手順は同じである。その手順を示せば、[1]①全成分の溶出パターンの確認、②特定の成分を分取したい場合には、その成分の分取に最適となるグラジエント条件の検索、③フラッシュクロマトを想定した多段階溶出法によるクロマトパターンの確認、④フラッシュクロマトへのスケールアップ、⑤フラクションの確認、[2]高精度精製処理(再フラッシュ法、HPLC分取法など)、の2段階となる。以下、Biotage社製 Flash 40S System (充填剤:Wakosil 40C18) を使用した場合の大黄未成分の全成分分取を例に説明する。

図1.に大黄末からの成分抽出法、及び精製操作法を示したが、その抽出液を使用し上記の手順に従い操作した。図2.に手順①の状況を、図3.に手順③の状況を示した。条件検討用HPLC充填剤としては、Wakosil 40C18 と基本特性が同じWakosil 5C18 を使用し、分取の際の溶出単位をベッドの2倍量(Flash 40S Systemの場合、約200 mL)と想定し、多段溶出法において3分毎(ベッドの2倍量に相当する)に溶離液を切り換えた。

図1.操作法概略
図1.操作法概略

  • 図2.全成分の溶出パターンの確認
    図2.全成分の溶出パターンの確認
  • 図3.多段階溶出法による解析
    図3.多段階溶出法による解析

Flash 40S Systemで分取後、手順⑤の状況を図4.に示した。分取した各フラクションの成分は、HPLCとの相関性も優れ、分離も目的通りに達成されている。

各フラクションを手順[2]に従い単一成分として分取可能である。

この際、ワコーシルPrepタイプを使用するHPLC分取が有効な手段となるが、今回はあえて再フラッシュ法でフラクションNo.5の精製を試みた。最終的に得られた成分の純度を図5.に示したが、2段階フラッシュクロマト法によりここまで精製が可能である。

  • 図4.フラクションの確認
    図4.フラクションの確認
  • 図5.最終精製物のクロマトグラム
    図5.最終精製物のクロマトグラム

逆相フラッシュクロマトグラフィーは、今回の大黄末のように水に易溶性の成分を取り扱う場合に特に有効な方法である。大量の抽出液を1度にチャージしてもカラムのin側で濃縮効果が起こり、十分な分離が達成されている。是非お試し下さい。

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