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【連載】エンドトキシン便り「第3話 Low Endotoxin Recovery(LER)について(3)」

本記事は、和光純薬工業 試薬化成品事業部開発第一本部 BMS 開発部 BMS センター 高須賀 禎浩が執筆したものです。

はじめに

2015 年 9 月 14、15 日にニュージャージー州で Bacterial Endotoxin Summit が 'Low Lipopolysaccharide and Endotoxin Recovery' と題して行われました。その会議において FDA の Dr. Maria Stevens-Riley は 'Ten Things That The FDA Would Like You To Know About Low Endotoxin Recovery (LER)' と題して LER に関する FDA の考え方を示しました。

内容的には今まで FDA が発表してきたことのまとめであり、前回のエンドトキシン便りと重複いたしますが、簡単にご紹介させて頂きます。

2015 年 Bacterial Endotoxin Summit における FDA の発表の内容

①CFR (Code of Federal Regulations: 米国の連邦法令集)では、注射剤はパイロジェンフリーを要求しています。

注射剤の最終製品のリリースに、FDA はパイロジェンフリーを証明するテストを行う事を要求しています(21 CFR 211.167 (a))。

この証明には USP <85> エンドトキシン試験、又は USP <151> ウサギ発熱性試験が使用できます。

②CFR では、BLAs(Biologic license applications: 生物製剤承認申請)にはウサギ発熱性試験を要求しています。

生物製剤の最終製品のリリースに、FDA は USP <151> ウサギ発熱性試験または同等の試験を要求しています(21CFR 610.13(b))。

しかし、ウサギ発熱性試験は 21CFR 610.09 に示されているように同等性が示せれば他の方法に変更できます。

⇒通常、エンドトキシンテストで代用(筆者加筆)。

③エンドトキシンテスト用のサンプルをどのように取り扱うかと保存するか決める事。

2012 年の FDA ガイダンス(Guidance for Industry, Pyrogen and Endotoxins Testing)には

Q3:サンプルの保管や取り扱いは重要ですか?

A3:重要です。(中略)測定可能なエンドトキシンの安定性データに基づいて、エンドトキシンを測定するサンプルの保存方法や、撹拌を含む取り扱い方法を確立する必要があります。(以下省略)

④患者の安全が最優先事項

生物製剤の LER 現象への FDA の対応は「PATIENT SAFETY」への影響を考慮することです。
*LAL 試験は LER によって最終製品中のエンドトキシンを検出できないかもしれない。よってパイロジェンテストとして LAL 試験はいつも信頼性があるとは限りません。

エンドトキシンを添加した製剤が LAL 試験では回収/検出できなく、同じサンプルがウサギを使った USP <151> ウサギ発熱性試験で発熱性を示したとのレポートが意味する事は、

  • 製造プロセスの間、起こるかもしれないエンドトキシン汚染は、In-Process のサンプルをテストするときに検出できないかもしれない
  • 最終製品中のエンドトキシンは USP エンドトキシン試験方法ではリリース時に見つけられない場合があります。
  • LAL 試験方法によってエンドトキシンが陰性だと判断されリリースされた最終製品は、人間に発熱性を示すこともありえます。

⇒FDA は LER 現象を安全にかかわる問題と考えています。

FDA は 2013 年以降の生物製剤の申請の出荷試験において、エンドトキシン試験の妥当性確認を要求しています。

⑤BLA のレビューは微生物部門だけで行っているわけではありません。

⑥現在までに低分子の医薬品で LER の影響を受けているとの情報はありません。

⑦FDA はスポンサー*1の LER に関する情報の提供を期待している。

*1 臨床試験に対して責任を負い主導する者(製薬会社)

以下のスライドは、 BLA のスポンサーにより提供された研究を用い以下の 3 点について LER について議論していきます。

  • エンドトキシンを添加したサンプルからの回収に影響を及ぼすかもしれない要因の概要。
  • これらの要因がどのようにエンドトキシンの回収に影響を及ぼすかについての研究例の説明。
  • 2 つの BLA 製品から LER に対処するために実行された研究の結果。2 つの事例研究。
エンドトキシンを添加されたサンプルからの回収/検出に影響を与える要因
  • LAL テスト法
     ✓光学的定量法 vs ゲル化法
      方法が異なると、異なる結果になることがあり得ます。
      すべての測定方法は、LER 効果に影響を与えることもあります。
  • LAL 試薬
     ✓製造業者の違い
      製造業者が違う試薬は異なる結果になることがあり得ます。
     ✓添加するエンドトキシン
      ⇒RSE vs CSE vs NOE
       どの様なエンドトキシンでも LER 効果に影響を与えることもあり得ます。
  • 製剤の添加物
     ✓クエン酸塩、リン酸とポリソルベートの組合せ。
      LER が認められるのは全てクエン酸ナトリウムとポリソルベートの組合せと、
      リン酸ナトリウムとポリソルベートのすべての組合せです。
  • 製剤のタンパク質
     ✓タンパク質の濃度
      あるケースでは低タンパク質濃度では LER が低いことを示しています。
     ✓タンパク質の電荷
      あるケースではプラスのチャージを持つタンパク質は LER を示しています。
  • テストを行うまでのサンプルの保存温度
     ✓20-25℃ vs 2-8℃
      LER は温度が高いほど早く起こります。
  • テストを行うまでのサンプルの保存時間
     ✓LER は時間に依存する現象です。
      LER はサンプルを保持する時間が長いほど起こります。
      サンプルをすぐにテストすると LER は示さないかもしれない。

(データ〔研究例〕省略)

事例研究1
  • 治療用タンパク質
  • 添加物:ポリソルベート 20(0.01%)とリン酸ナトリウム(50mM)
  • エンドトキシン試験方法:カイネティック比色法(KCA)
  • 添加エンドトキシン:コントロールスタンダードエンドトキシン(CSE)
  • 添加回収試験は 20、100、500 EU/mL、処方された製品、処方されていないバルクを用いて、LAL テストとウサギ発熱性試験を何回も実施。
    (データ省略)
事例研究1の要約
  • LAL テストとウサギ発熱物質試験結果は、ポリソルベートが添加されていないin-process material において一定であった。
     ✓LAL 試験では添加したエンドトキシンは検出された。⇒LER は無い。
     ✓ウサギ発熱性試験は発熱性を示した。
  • CSE を添加された処方済みの製品はカイネティック比色法で LER を示しました、しかし、ウサギ発熱物質試験結果は多様であった。
     ✓100 EU/mL 添加において、あるウサギ発熱性試験では非発熱性でしたが、
      2 回目の検討において発熱性でした。
  • スポンサーは、10 倍の安全係数を考慮して、≦ 1.0 EU/mL(≦ 0.25EU/mg)で、最終製品のエンドトキシン規格を設定しました。
  • スポンサーはポリソルベート 20 を添加して以降の微生物管理を設定しました。
  • FDA は、リリース試験にウサギ発熱物質検査を行うことをスポンサーに要求しませんでした。
  • FDA はエンドトキシンテストに代わる試験方法の開発をするように Post-Marketing Commitment (PMC) を出しました。
事例研究2
  • 治療用タンパク質
  • 添加物:ポリソルベート 80(0.02%)とクエン酸ナトリウム(10mM)
  • エンドトキシン試験方法:カイネティック比色法(KCA)
  • 添加エンドトキシン:工業的に入手可能な高度に精製された LPS、および NOE(Naturally occuring endotoxin)
  • 添加試験は 3 つの異なる商品ロットを用い、LPS と NOE を使用。KCA とウサギ発熱性試験を実施。
    (データ省略)
事例研究2の要約
  • LPS 添加
     ✓LER は KCA 法を用いて 24 時間後には認められました。
     ✓LPS 添加したサンプルはウサギ発熱性試験では非発熱性でした。
  • NOE 添加
     ✓LER は 23 日後でも認められませんでした。
     ✓しかしながら、NOE を添加したサンプルはウサギ発熱性試験では非発熱性でした。
  • NOE を添加したサンプルのウサギ発熱性試験は LAL 試験方法を用いた NOE 添加サンプルの回収/検出結果と矛盾しました。
  • FDA は、カイネティック比色法は適切でないかもしれません。よって他のテスト方法を探すように Post-marketing Commitment を出しました。
NOEs は使用しないように。

FDA はエンドトキシンの添加回収試験に NOE (Naturally Occurring Endotoxin) の使用を推奨しません。

⑨微生物のコントロールが最善の策である。
  • 包括的な微生物コントロールの方策は製品の品質を確実にするのに必要で、工程と製品にエンドトキシン汚染を制限する最高の方法です。
  • FDA は、in-process において微生物コントロールを行い、製造工程における発熱性の物質の「混入点」を最小にすることを推奨します。
  • FDA はポリソルベート等の干渉することが分かっているファクターの添加の前にバルクのテストを推奨します。

微生物コントロールの方針の要素としては

  • 工程中の微生物混入箇所のコントロール。
  • 微生物コントロールを行うための工程のデザイン。
  • 臨床的な品質とリンクした最終製品の規格の設定。
⑩すべてに適応できる方法は無い
  • 現在の規制当局は各々の製品/申請/メーカー毎の方法を採用しています。
  • 我々は、スポンサーから提供されたデータに基づき、製剤原料、製品及び製造工程の申請を評価しています。
先に進むために考えなくてはいけない事
  • 微生物管理のリスク評価
  • リリーステストの規格の一部として製造工程上のコントロール/テストの使用。
     ✓ポリソルベート添加直前の Bioburden やエンドトキシンレベルの in-process material テスト。
     ✓ポリソルベート溶液のエンドトキシンレベル。
  • 最終製品のリリーステストとして USP <151> ウサギ発熱性試験の実施。
     ✓適当な in-vitro での方法が開発されるまでしばらくの間、測定を行う。
  • 代替のテスト方法の開発と使用。
先に進むために規制当局の要望
  • in vitro における LER が in vivo における non-pyrogenicity と一致するか確定させることを求めます。
     ✓エンドトキシンを添加した製品を各時点で UPS <85> LAL テストと USP <151> ウサギ発熱性試験を同時に行います。
     ✓スポンサーはリリースのために使用するエンドトキシン試験方法の妥当性を決めることができます。
  • スポンサーへの Post-marketing commitment の発行はエンドトキシン回収に関する問題に効果的なエンドトキシンテストの開発を期待しています。
  • もしエンドトキシンを添加した製品が USP <85> エンドトキシン試験において LER を示し、ウサギでは発熱性を示した場合、USP <151> ウサギ発熱性試験を行うように。
  • 規制当局の要望の要約
    USP
    BET
    ウサギ発熱性試験 Endotoxin Control Strategy
    Non-Spiked 最終製品 Spiked 最終製品
    No
    LER
    Non-pyrogenic USP LAL
    LER Non-pyrogenic Pyrogenic ウサギ発熱性試験(当面の処置)
    in-vitro のテストを開発
    LER Non-pyrogenic Non-pyrogenic リスク評価を行う。
    ポリソルベートを bulk に加える前にエンドトキシン規格を設ける。原料の EXT の管理。
    in-vitro のテストを開発
    LER Pyrogenic 不適

    結論

    • 生物学的製剤のスポンサーは最終製品の品質の評価に、USP <85> エンドトキシン試験は限界がある事を認識するべきである。
    • 異なる LAL テスト法(例えばゲル化法、比濁法、比色法)でエンドトキシンの添加回収が異なる結果になることもありうる。
    • USP <151> ウサギ発熱性試験は LAL テストで LER を示すエンドトキシン添加製剤は陽性の結果(発熱性)を示すかもしれないし、示さないかもしれない。
    • どの様なバクテリア由来の NOEs であれ USP <85> エンドトキシン試験の局方の標準としては受け入れられない。
    • LAL とウサギ発熱性試験両方に NOE を添加した処方を使用するとき、LER の問題を示すかもしれないし、非常に色々な結果を示すかもしれない。
    • LER 現象に関する更なる深い理解と他の試験アプローチを開発しなくてはいけない。
    • 製造工程における微生物管理は必須である。

    参考文献

    1. Maria Stevens-Rileyatricia. Ten Things That The FDA Would Like You To Know About Low Endotoxin Recovery (LER). Presented at the PMF Bacterial Endotoxin Summit, Iselin, NJ, 2015

    *執筆内容の正確性については万全を期しておりますが、和光純薬工業は利用者が執筆内容を用いて行う一切の行為について、何ら責任を負うものではありません。

    第4話 エンドトキシン(LPS)の不活化と除去

    第2話 Low Endotoxin Recovery(LER)について(2)

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