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【連載】Talking of LAL「第2話 エンドトキシン(後編)」

本記事は、Wako News No.3 (1990年12月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

2-2 Reference Standard Endotoxin と Control Standard Endotoxin

米国薬局方では、米国の定めた国家標準品を Reference Standard Endotoxin (RSE)、RSE に対して標準化された他のエンドトキシン標品をControl Standard Endotoxin (CSE) と定めております1)。CSE は RSE によってその力価を決定する必要があり、力価の決定は LAL のロットまたは CSE のロットが変わる度に行うよう規定されております。すなわち、CSE のロット間はもちろん、LAL のロット間においても CSE の換算係数が変動する可能性を、FDA は考えているようです。この点は、リムルステストを行う上で注意を払うべき点の一つと思われます。

実際、我々の試製した CSE を用いて米国標準品に対する力価を調べたところ、Table 1 に示すように、LAL のロットが変わると相対力価が変わる傾向が認められました2)。やはり、CSE を使用する場合には、試薬のバルクロットが変わる度に相対力価を定める必要がありそうです。このことから、CSE の力価試験回数を減らす意味で、できるだけ大きいロットを使用した方が経済的と言えるでしょう。

Table1. Effect of LAL lot on CSE/RSE conversion.
LAL lot# Sensitivity (EU/ml) Potency (EU/vial)
99-84-331 0.5 4600 ( n = 7 )
96-82-329 0.25 4000 ( n = 2 )
99-07-352 0.125 5800 ( n = 2 )
96-80-327 0.05 4700 ( n = 2 )
99-31-375 0.03 4200 ( n = 3 )

mean 4660 EU/vial
SD 698.6
CV 14.99%


*CSE lot# M-004 was used.
*CSE/RSE conversion using the Toxinometer was performed according to the FDA guideline6).

現在の米国の標準品は、ラクトース及びポリエチレングリコール6000を添加剤とし、E.coli 0113:H10 株由来の LPS から調製された凍結乾燥品です3)。この標品は、Office of Biologics (OB) US Standard Endotoxin (Lot EC-5) 並びに US Pharmacopeia (USP) Endotoxin Reference Standard (Lot F) として採用されております。

さて、日本薬局方では、マンニトールを添加剤とし、E.coli UKT-B 株由来の LPS より調製されたエンドトキシン標準品を採用しております4)。このエンドトキシン標準品は、ウサギ発熱性試験及びリムルステストによる米国標準品との比較から、8 EU/ng と決定されました5)。この値は多くのデータから統計的に求められた数値であり、LAL のロットによって多少変化する可能性があると思われます。また、日本薬局方では CSE について述べておらず、現在のところ、最終試験には国家標準品を使用する必要がありそうです。

以上述べて参りましたように、エンドトキシン標品間の相対力価は LAL のロットによって変わる可能性があります。すなわち、同じ標準を対照として測定した場合でも、試料中のエンドトキシンの由来等は不明なわけですから、LAL のロットによってその力価が変わる可能性があることになります。エンドトキシンの構造に多様性があることを考えれば、これも当然のことかもしれません。

もちろん、Table1 に示すように、その変動がとてつもなく大きいというわけではありませんし、現在のところ標準品を対照とした測定が最も推奨される方法と言えるでしょう。特に、医薬品の安全性試験としてのリムルステストにおいては、各国のエンドトキシン標準品を基準とすることが重要と思われます。

参考文献

  1. The United States Pharmacopeia 22th, p. 1493, Pharmacopial Convention Inc., MD (1989).
  2. 土谷正和:防菌防黴, 18, 287 (1990)
  3. Hochstein, H.D. et al : J. Biol. Standardization, 11.251 (1983)
  4. 第十一改正日本薬局方追補、B-11 (1988).
  5. 長寿関連基礎科学研究事業官民共同プロジェクト研究報告-第2分野-、p.184、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団、東京(1998)
  6. Guidline on validation of the Limulus amebocyte lysate test as an end-product endotoxin test for human and animal parentearal drugs, biological products, and medical devices (1987) FDA.

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