siyaku blog

- 研究の最前線、テクニカルレポート、実験のコツなどを幅広く紹介します。 -

【テクニカルレポート】有機溶媒取扱業務に従事する作業者の特殊健康診断に最適となる充てん剤は何か?

本記事は、Wako News No.4(1991年3月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。

Wakosil-II 5C18-100 充てん剤が最適となります。

有機溶媒取扱業務に従事する作業者の健康管理のために、特殊健康診断が年 2 回実施されています。体内に吸収されたトルエン、キシレン、スチレンは代謝されて、それぞれ馬尿酸、メチル馬尿酸、マンデル酸となり尿中に排泄されます。これらの代謝物とクレアチニンは、100 倍希釈尿を直接 HPLC に注入することにより分離定量が可能となります。

カラムサイズをコンパクトに、金属イオンとキレート形成能を有するマンデル酸のピーク形状をよりシャープに検出するためにも保持特性が大きく、しかも高純度シリカゲルを原料とした Wakosil-II 5C18-100 充てん剤が最適となるわけです。

図 1. に Wakosil-II 5C18-100、カラムサイズ 4.6 mm * 100 mm を用い移動相の pH3.0、分析温度 40 ℃で測定した場合のクロマトグラムと、定量時の各成分の再現性データを表 1. に示しましたが、いずれの場合も満足できる結果が得られています。また標準検体を用いたカラムの耐久性テストにおいても 1000 回をクリアーしており、十分に実用性のある分析方法だと確信しています。

図1.馬尿酸の分析

表1. 馬尿酸分析の再現性

MA HA o-MHA p-MHA m-MHA Creatine
1 112218 96473 145709 148837 178486 159941
2 111901 96372 145063 148806 177300 158725
3 112312 96997 145876 150056 178775 159176
4 112849 96328 144972 149031 178319 159707
5 111138 95428 143733 147321 176521 157175
6 110503 94998 142859 146667 174945 156048
7 111251 95727 143958 148376 176995 157018
8 110209 94501 142606 145556 175156 156014
9 111288 95711 144117 147918 177127 156740
10 110823 95078 142841 146925 175570 155628
11 111694 95819 144093 147696 177085 157094
12 110983 95130 143297 147076 174837 156984
13 111453 95862 144205 147755 176913 157053
14 110913 95255 143502 146661 175575 155734
15 110306 94602 142555 146434 174799 154919
16 110937 95066 143222 147116 175483 155527
17 110535 94693 142705 145930 175189 155126
18 110606 94788 143323 146634 175448 155062
19 111231 95626 143745 147474 176416 156723
20 110770 95171 145720 146852 175678 155409
mean 111196 95481 143905 147456 176331 156790
SD 703 683 1068 1124 1252 1533
CV% 0.63 0.72 0.74 0.76 0.71 0.98

クレアチニンを通常の生化学自動分析装置で測定する場合には、HPLC での同時分析の必要がなくなるため、本分析系からイオンペアー試薬(SDS・Na)を除いて分析が可能になります。この場合、分析時間が約 5 分短縮されます。

測定波長は通常 UV ; 210 nm が使用されますが、ベースラインの安定性などに問題がある場合には、UV ; 235 nm 付近まで実用上なんの支障もなく使用可能となります。参考のため図 2. に UV ; 210 nm と 234 nm で測定したクロマトグラムの比較を示します。

図2.馬尿酸の分析

移動相の調製の際、β-シクロデキストリン(β-CD)が溶けにくい場合があります。この場合は、スターラ攪拌下、リン酸バッファーの中に少量ずつβ-CD を添加する方法が有効になります。以降、0.45 µm 程度のメンブランフィルターで濾過されることをお薦めします。

キーワード検索

月別アーカイブ

当サイトの文章・画像等の無断転載・複製等を禁止します。