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胚凍結融解培地へのこだわり

ミオ・ファティリティ・クリニック 湯本先生

ミオ・ファティリティ・クリニックの湯本先生から、当社の凍結融解培地「Vit Kit-NX」の評価検討を行った背景や評価結果、保険適用に関するコメントを頂きました。

当社の胚凍結融解培地Vit Kit-NXに興味をもった理由を教えてください。

2021年度卵子学会にて山下湘南夢クリニックの河野先生が、Vit Kit-NXに含まれるデキストランにより培地の粘性が上がることで、凍結・融解胚移植時の臨床妊娠率が向上する可能性を示唆されており、発表内容に興味を持ちました。河野先生はDay5/6の胚で評価なさっていましたが、より胚の生存性が重要となる初期分割胚を対象とすれば、より胚へのダメージ軽減効果が期待でき、その結果臨床妊娠率が向上するのではないかという仮説を検証したく、Vit Kit-NXの評価検討に至りました。

Vit Kit-NXの採用理由を教えてください。

一番は、初期分割胚を対象とした評価結果が良好であったことです。凍結・融解培地の変更により、期待以上に臨床妊娠率の改善が見られました。なお、追加で後期胚を対象とした評価も開始したところ、共に好成績でした。この結果をもって、Vit Kit-NXを採用することとしました。また当院ではプロトコルに従って、誰もが同じ手技を行える環境を目指しているため、従来のプロトコルを変更することなくVit Kit-NXが使用できる点も大きなポイントでした。

Vit Kit-NX評価結果

評価背景

製品A Vit-Kit-NX
期間 2018.1~2020.12 2021.3~2022.3
症例数 438 142
平均年齢 34.0±3.2 34.9±5.0
凍結時期 初期分割胚 初期分割胚
融解数 859 186
移植周期数 813 182
プロトコル ES液:VS液=1:2
ES液の浸漬時間は12-15分間
ES液:VS液=1:2
ES液の浸漬時間は12-15分間
融解後生存率・妊娠率

保険適用で感じていることを教えてください。

まず、4月からの保険適用によりARTに携わる皆様は忙しい毎日を送っていらっしゃることと思います。当院も患者さんの数が増え、卵子学会認定培養士5名と新人培養士2名、計7名で一生懸命に培養業務に取り組んでいます。

私が保険適用で感じていることは二つあり、一つ目は移植回数の制限が設けられ、よりグレードの高い胚を移植するのが重要になったということです。そのためには胚へのダメージをより少なくすることが大切だと考え、Vit Kit-NX採用に至りました。

二つ目は、保険適用でARTの認知が広がって、治療を受けるべきかと悩んでいる患者さんの精神的ハードルが下がり、一人でも多くの妊娠を望む方のお役に立てるようになりたいと感じています。一方で43歳以上の患者さんは自己負担額が大きくなることにもどかしさを感じるのも事実です。「治療を止めてと言われている気がします」と患者さんからお言葉を頂いた時は、共感したと同時にやるせなさを覚えました。本当に必要としている方に治療を届けたいという率直な思いと、ARTが少子高齢化社会という社会課題にも繋がることを忘れずに業務に邁進したいものです。

胚凍結融解用培地
Vit Kit-NX

  • 凍結・融解時の胚へのストレスを軽減。
  • CSCM (ヒト胚用培養液)、二重緩衝剤との併用で更なる負担軽減。
  • 代替血清成分に含まれるコレステロール、デキストランにより耐凍効果あり。

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