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スズ化合物除去のニュースタンダード:炭酸カリウム/シリカゲル

本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しています。

概要

Stilleカップリングやラジカル還元などで生じるすずの副産物は、毒性などの問題もあることから完全に除去しておきたいものです。しかしカラムでテーリングしたり、分離がかなり難しいことも知られています。トリエチルアミンカラムやフッ化カリウム水溶液を加えて一晩撹拌するなど、よく知られた方法もありますが、時間がかかったりアミン臭が気になったりと一長一短です。

良い変換が多いにもかかわらず、後処理がなんとも面倒極まりないすず化合物ですが、今回はキレイに除去できる手法をご紹介します1)

内容

Potassium carbonate-silica: a highly effective stationary phase for the chromatographic removal of organotin impurities
Harrowven, D. C. et al.: Chem. Commun., 46, 6335 (2010).
DOI: 10.1039/c0cc01328e

この方法は至極簡単で、普通のシリカゲルの代わりに、無水炭酸カリウムを10wt%混ぜたシリカゲルを使ってカラムをするだけというものです。論文によると、たったこれだけの工夫にもかかわらず、すず反応での不要物(アルキルスズハライド・スズトリフレート・スズオキシド)を、ppmオーダーにまで除去できるそうです。

さらに都合の良いことに、すず化合物を壊す操作は必要なく、有機スズ化合物は除去されません。このためStilleカップリングの基質合成にも使えるというのがアドバンテージとなります。下記の例では、生成物がTLCの酸性で脱スズプロトン化を起こして壊れてしまいそうなのですが、炭酸カリウム/シリカゲルで問題なく精製することが可能とのことです。

本法はすず化合物除去のスタンダードとして有効かもしれません。一つのテクニックではありますが、こういうものを多数知っておくと、面倒な反応だからといって敬遠する機会が減るかもしれません。

参考文献

  1. Harrowven, D. C. et al., : Chem. Commun., 46, 6335 (2010). DOI: 10.1039/c0cc01328e

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