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比色法の化学

本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しています。

Colorimetric analysis

はじめに

今回は食品化学の分野で用いられる比色法について紹介します。食品化学に用いられる比色法は多種多様なので、そのうちの一つである亜硝酸ナトリウム (NaNO2) の測定を説明します。

概要

まずは吸光度についてです。いわゆる私達が見ている物の色とは、全波長の光のうち、特定波長 (特定の色) の光が物に吸収された後の、吸収されなかった光の色を見ていることになります。参考になるのがマンセル表色系です。互いに補色の関係にある色を対角線上に表示しています (図1)。例えば黄緑色の光が物に吸収されると、私たちの目には物は紫色に見えます。つまり、「吸光度が高い=その補色が濃く見える」ということになります。

図1. マンセル表色系の色相環 (参考: Wikipedia)
図1. マンセル表色系の色相環 (参考: Wikipedia)

では、ここで吸光度を改めて定義してみましょう。吸光度 (absorbance) とは、特定の波長の光に対して物質の吸収強度を示す尺度です。吸光度Aは次の定義に従って算出されます。

A = log10(lo / l)

lo = blank cell (溶媒のみ) の透過光強度  l = sample cell (溶液) の透過光強度

吸光度はSample Cellの光路長 (L) とSample濃度 (C) に比例し、

A = αLC  α = 吸光係数

で表されます。これをランベルト・ベールの法則 (Lambert-Beer law) と呼びます。この法則を使い、検量線から物質濃度を測定することが可能です。

また、吸光度を測定するためには分光光度計を用います。測定する光の波長帯により光源と検出器が異なり、赤外分光光度計、可視・紫外分光光度計のいずれかの装置で測定されます。つまり、紫外光 (〜380nm)、可視光 (380〜780nm)、赤外光 (780nm〜) によって、装置を使い分けているということです。

食品添加物の話

みなさんは食品添加物にどのようなイメージを持っているでしょうか?食品の安全性が問題になってきており、食品添加物の危険性もよく話題になっていると思われます。しかし、元来、食品添加物は食品の製造や加工に使用したり、品質を保持したり、味や見栄えをよくするために使われていました。

その一種である亜硝酸ナトリウムは、ハムやベーコン、明太子などの発色剤として使用されています。このような役割の他、食品中の菌の発生を抑えるという有用な働きをしますが、体内の2級アミンと反応してニトロソアミンとなり、発がん性を示すとも言われています。よって、食品中に添加してよい亜硝酸ナトリウムの量は法律により、安全性が保たれる量に制限されています。とはいえ、輸入品などには基準量を上回る食品もあるため、食品中の亜硝酸ナトリウムを測定する必要があります。

亜硝酸ナトリウムの測定方法

比色法を用いた亜硝酸ナトリウムの測定という本題に入ります。亜硝酸ナトリウムの測定にはジアゾ化法を用います (図2)。高校化学でみなさんが目にしたあのジアゾ化です。

原理は、水でホモジナイズして食品から抽出した亜硝酸ナトリウムを、スルファニルアミドと反応させジアゾニウム塩を作ります。これにナフチルエチレンジアミンを加えて、ジアゾカップリング反応させることでアゾ化合物が生成してピンク色の溶液となります。この溶液の540 nmでの吸光度を測定します。結果は亜硝酸イオン (亜硝酸根) の量で表します。

図2.ジアゾ化法の原理
図2.ジアゾ化法の原理

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