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反応後の後処理で困った場合の解決策

本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しています。

  • 分液漏斗

反応がうまくいったので、後処理して分析しようと思ったところでトラブルがあると、なんかもやもやしてしまいます。原因は反応によって違ってくるので、うまく切り抜けるには知識や経験が大事かもしれません。独自のメソッドを持っている先輩に相談したりできるといいですよね。ちょっとしたテクニックでも大きく時間短縮役立つことがありますので、そんな情報をいくつか紹介いたします。これ以外にも、役立つアイデアがあれば情報をお寄せください。

1:分液漏斗の中の有機層と水層の間に不要物が浮いている

思い当たる節がなければ、大抵はポリマーか副生成物であることが多く、普通は自分の追い求める目的化合物で無い場合がほとんどです。それが入らないように操作して、化合物を抽出してしまいましょう。有機層に混じっても、飽和食塩水で振る際に取り除くか、乾燥剤を入れた後のろ過時に除去しましょう。

2:スケールアップの際にエマルジョンになり、水や有機溶媒を追加しているうちに、溶液量がとてつもなく増えてしまう

30分程度分液漏斗を放置して分離するか待ち、ダメならあきらめて終夜静置してみましょう。特に溶媒量が多い液-液分離の場合は慎重になるべきです。先行サンプルを取って種々の条件を試し、エマルジョンが解消されるか確かめて適用しましょう。初めから酸やら塩基やらを分液漏斗に入れまくると、溶液量が増えて大変なことになります。化合物のロスが惜しい場合は、種々の検討で用いたサンプルを最後にすべて戻して大きなスケールで抽出処理すれば大丈夫です。その他、以下のような方法もあります。

  • NaClを加えたり、pHを変えたり、有機溶媒や水で希釈すると分離がよくなる場合があります。
  • MeOHやMeCNなどの溶媒で反応後の抽出・分液操作では、有機層と水層が分離しない事があります。溶媒を一旦飛ばし、適切な抽出溶媒を用いると、二層系に別れることがあります。
  • セライトで液体をろ過する方法もあります。ある程度大量のセライトを使い、不溶性の化合物で目詰まりを防ぎながらろ過を行えばきれいに層が分離する場合があります。
  • 酵素反応などを行った場合は遠心分離が有効です。例えば8,000 rpm 5 minでほとんどの分離が可能です。
  • 分離平衡は温度依存性ですので、加温した状態で抽出を行うという方法もあります。ただし、この場合は抽出溶媒にはくれぐれも注意してください。使える溶媒はトルエン-水などです。

3:ろ過がうまくいかない

基本的にろ過がうまくいかない場合は、モレキュラーシーブなどの微粒子がフィルターの目を詰まらせてしまうことが原因である場合がほとんどです。この場合はセライトろ過が有効です。不溶性の物質が多い場合は、大きめのブフナー漏斗に、多めのセライトを敷いて濾過するのが鉄則です。ろ過が遅いと予想される場合は、反応溶液に適当な量のセライトを入れ、1分ほど攪拌後にろ過すると、早い場合があります。基本的にセライトには化合物が吸着されないので、適当な溶媒で洗えばロス無く回収できます。

逆に化合物をろ過で回収する場合は、化合物の再結晶条件の検討が重要です。なるべく結晶のサイズを大きくして、ろ過効率を上げましょう。

4:クエンチを忘れ、炭酸水素ナトリウム水溶液を分液漏斗に加え、有機層から二酸化炭素が発生して噴出

まず、クエンチはフラスコ内で慎重に行うことです。そして、抽出前にしばらく攪拌しましょう。それから分液漏斗に移します。移した後も静かに振って頻繁に開放系にしてガスを逃がしましょう。

5:反応溶液が真っ黒、水溶を加えると均一な黒い混合物になり、境界が見えなくなってしまった

ハロゲン系以外の抽出溶媒を利用している場合、氷を一つ入れてみてください。氷は水の上に浮かびます。また、NMRチューブを入れてみると境界が見えやすくなるという方法も聞いたことがあります。あと界面付近を強いLEDライトで照らすと確認しやすくなることがあります。下層を抜き出すとき、分液漏斗の足を受器の内壁にピッタリつけて流体を少しずつ流していくと、粘度の変化で層の変化が分かるときもあります。

6:Crude NMRを見ても化合物が見当たらない。もしくは、TLCで有機層をチェックしたところ、化合物がいない。

化合物が分解したか、水層に溶けている可能性があります。水層をTLCにスポットして、十分に乾燥してからTLCを上げてみてください。もしくは水層をLC-MSで確認しましょう。こんなこともあるので水層は全て終わった後に捨てましょう。

基本的にトリオールやアミノ酸などはかなり水溶性が高いです。塩析した状態でモノを抽出するなどの方法が適切かと思われます。また、アミンやカルボン酸の場合、水溶液のpHもチェックしましょう。場合によっては反応を極小量の水や反応剤でクエンチし、溶媒を除去してから直接乾燥させてしまう方法もあります。また揮発性のあるような小分子の場合は、エバポレータートラップの溶媒をチェックしてください。

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