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短期的な成果ばかりを求められる研究現場

近年、日本人研究者からノーベル賞受賞者に選ばれ非常に喜ばしいニュースを目にする機会が増えました。とても明るい出来事であり、子供がなりたい職業ランキングにも学者・研究者がランクインしてくるようになっています。しかし、ノーベル賞を受賞された方々の多くが日本の研究の未来を危惧することを口にするのがとても印象深いです。

また、同時に悪いニュース―研究結果を不正に改ざんしたり捏造したりといったニュースも見ることも増えたように思います。明るい話題がある一方、こういった不正が起きる背景には、短期的な成果ばかり求められ、将来が不安な環境で研究せざるを得なく追い詰められていることも原因としてあるのではないでしょうか。

特に若手・中堅研究者の方が独立した研究を行う際に障害となる事項を挙げた際、特にポイントが高いものとなっています。短期的な成果ばかりを求めすぎた結果として、日本の研究現場では以下のようなことが起きています。

出典:文科省_次代を担う研究者をめぐる危機

任期付き研究者の増加

短期的な成果を求められるということは長期的な研究資金を確保できる見込みが減ってしまいます。そのため、雇用主側が人員確保の際に雇用の更新がしやすい任期付き研究者を雇う割合が増えています。CiRAも教職員の9割が非正規であるのは有名な話ですが、こういった事態はほかの研究機関でも起きており、より良い研究を長期的に行える状況ではなくなっています。

研究力の衰退

研究費の配分が短期に成果が上がる、またはすぐに産業に結び付くような研究テーマに集中してしまっているせいで、本来は腰を据えてじっくりと取り組むべき基礎研究が停滞し始めています。これにはノーベル賞を受賞された先生方も警鐘を鳴らしています。長期的に取り組んでいく基礎研究が基盤となり様々な研究に応用されることや、全く予想もしていなかったような新しい発見があり、ノーベル賞を受賞することがあると考えるとやはり疎かに出来ないのではないでしょうか。

研究の量と質についてもトップ10%論文の引用数をみると、近年の日本は大きく衰退していることがわかります。2017年にはNature誌からも日本の研究力の低下を指摘されています。

出典:令和元年版科学技術白書

まとめ

短期的な成果を求められる環境が続いている状況によって以下のことが起きています。

  • 任期付き研究者が増加
  • 研究力の衰退
  • 上記に挙げた以外にも様々な弊害が起きています

ただし、短期的な成果を求めることがすべて悪いわけではありません。企業であれば競合より早く研究成果を出し実用化する必要がありますし、いつまでも投資ができるわけではありません。基礎研究も応用研究も両輪で盛んになっていくことが必要です。

しかし、様々な問題がありすぐに解決できる問題ではないため、ただ嘆いているわけにはいかない状況です。装置の導入や受託サービスなどをうまく活用して短期間で成果を出せるようにすることも重要です。

富士フイルム和光純薬では長年の試薬メーカーとして研究現場に携わってきた経験やノウハウ、技術を活かし受託サービスも展開しているので、ぜひご検討ください。

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