【テクニカルレポート】グラジエント分析時の注意点について その2
本記事は、和光純薬時報 Vol.65 No.1(1997年1月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
前報において、グラジエント分析における注意点として(1) 装置間差があること、(2) その最大の原因はグラジエントミキサー容量、及び配管容量にあること、(3) そのチェック方法としてアセトングラジエント試験が有効であることを説明した。
今回は、カラムサイズ、流速などを変化させた場合のグラジエント条件の変更方法について説明する。
イソクラティク分析の場合、分離の効率はカラムの長さに直接関係し、カラムの長さが長いほど分離は改善される。そのために、グラジエント分析法の場合にもカラムの長さが長い方が有利になると考えがちであるが、実際にはカラムの長さが絶対的な要因とはならない。
その例として、同一ODS充てん剤を使用し、同一流速条件下にカラムの長さを変えた場合のクロマトグラムの変化を図1に示した。
イソクラティック条件下に溶出される成分の分離は、カラムの長さに影響を受けているが、グラジエント条件下に分離される成分の分離効率はほぼ同じであり、カラムの長さの影響を受けていないばかりか、短時間分析すら達成されている。この際の最大のポイントは、グラジエントの初期濃度と最終濃度を同一とし、グラジエントの時間をカラムの長さに比例して変化させることにある。
では同一カラムサイズにおいて、その流速を変化させた場合はどうであろうか?流速を1.5 mL/minから1.0 mL/minに変化させた場合のクロマトグラムの変化を図2に示した。
同一グラジエントカーブで、流速だけを変化させても同一分離は得られない。同一分離を得るためには、流速を遅くした分だけ分析時間を長くすることが必要となる。
最後にカラムの内径を変化させた場合はどうであろうか?カラムの長さを同一として、カラムの内径を 4.6 mmから4.0 mmへ変化させた場合のクロマトグラムの変化を図3に示した。
上記項目1)、2)から条件変更方法は容易に推察できると思われるが、カラムの断面積の変化に応じて、(1) 同一グラジエントカーブなら流速を遅くすること、(2) 同一流速ならグラジエント時間を短くすること、の2点が必須条件となる。
以上、同一分離を確保することを前提とした条件移行における注意点について説明した。これらの方法を有効に利用すれば、分離を変えることなく分析条件の移行が容易に達成できるメリットがあるばかりでなく、トライ&エラーを繰り返す分析条件の設定の際にも参考になるものと考えている。何かのお役に立てれば幸いである。