【テクニカルレポート】HPLC 法によるビスフェノール A とノニルフェノールの分析
本記事は、和光純薬時報 Vol.68 No.1(2000年1月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。
私達の身の回りには人為的に作り出された様々な有害化学物質が存在し、長期的な暴露により人間の健康および生態系への影響が懸念されている。環境庁は 1998 年 5 月に「外因性内分泌撹乱化学物質問題への環境庁の対応方針について」(環境ホルモン戦略 SPEED '98)を発表し、汚染の実態調査、試験研究の推進を図るなどの取組みについて示すとともに、1998 年 8-9 月に建設省と共同で第 1 次全国実態調査を実施し、同年 10 月に、暫定的な分析法が日本環境化学学会より開示された。
上記の調査結果から、ビスフェノール A とノニルフェノールはフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、17-β-エストラジオールとともに検出率の高い化合物として位置付けられた。分析法からみれば、ほとんどの化合物が液液抽出あるいは固相抽出により抽出・濃縮後、GC/MS により測定されているが、本報では HPLC 法による迅速分析法について検討を行ったので報告する。
筆者らは、先にゴルフ場使用農薬分析用として固相抽出カートリッジカラム:Presep-C Agri (Short) と分析用カラム:WakopakWS-Agri-9 を開発した。これらのカラムの特長は、極性が大きく異なる化合物をより温和な条件で溶出、あるいは分離できるよう設計されている点にあり、今回のように、化合物の極性が極端に異なるビスフェノール A とノニルフェノールの分析には最適となった。
水道水にビスフェノール A とノニルフェノールをそれぞれ 4.0 µg/L の濃度で添加し、Presep-C Agri (Short) により 250 倍濃縮を行った後、HPLC で分析した。その時の固相抽出条件を図 1. に、また HPLC 分析例を図 2. に示した。
この際、固相抽出の溶出溶媒にはアセトニトリルが使用でき、添加回収率は、ビスフェノール A で 98 %、ノニルフェノールで 80 %であった。HPLC 法は GC/MS 法に比べ、濃縮後の脱水操作やビスフェノール A の TMS 化処理が不要であるなどの利点があり、今後、LC/MS の普及と相まって利用度が高まるものと考えている。
現在、低濃度検体の前処理効率の検討と、セミミクロカラムを使用する高感度分析や LC/MS への適応を検討中である。