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【連載】Talking of LAL「第15話 プラスチック用具」

本記事は、和光純薬時報 Vol.62 No.2(1994年4月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第15話 プラスチック用具

リムルス試験においては、リムルス試薬(LAL)のみならず、エンドトキシン試験用水等、他の要素にも注意が必要であることを述べてきました。今回は、エンドトキシンを入れる容器、試薬を分注するピペットチップ等に盛んに使われ始めたプラスチック用具について考えてみたいと思います。

リムルス試験に使用する用具には、以下の事が要求されます。

(1)エンドトキシン(LAL 活性化物質)の汚染がないこと
(2)エンドトキシンや試料を吸着しないこと
(3)エンドトキシンの活性に影響を与えないこと

従来より、リムルス試験には、250℃以上で十分な時間乾熱滅菌したガラス器具が使用されています1)。その最も大きな理由は、エンドトキシンを十分に失活させるための加熱処理が、ガラス器具では容易に行えるということでしょう。

第 14 話で、ある種の軟質ガラス容器がエンドトキシン活性に影響を与える場合があることを紹介しましたが、パイレックス等の硬質ガラス器具ではこのような現象はほとんど認められません。エンドトキシンの吸着についても、ガラス器具でエンドトキシンの吸着が起こるという説がありますが2)、十分に洗浄したガラス器具では問題なく使用できるようです。

このように、リムルス試験における用具として標準的に使用されているのはガラス器具ですが、手軽さ等の理由で、使い捨て滅菌済みプラスチック用具が使われるようになってきました。

プラスチック用具は、乾熱滅菌によるエンドトキシンの不活化が行えませんから、製造時にエンドトキシン汚染がない状態である必要があります。幸いなことに、多くの使い捨て滅菌済みプラスチック用具から、エンドトキシンは検出されません。ただし、エンドトキシンフリーであることを保証した製品は少なく、これを保証した製品でも、感度の良い測定法では汚染が検出される場合がありますから注意が必要です。

すなわち、使用する器具のエンドトキシン汚染について、使用する測定法で確かめる必要があります。この汚染の検査には、水や生理食塩水が使用されることが多いようですが、この検査法には問題があります。筆者らは、プラスチックに吸着したエンドトキシンが、水や生理食塩水では検出されないが、アルブミン等の蛋白溶液で抽出される場合があることを発見しました3)

このような汚染は、水のような試料を測定する場合には問題になりませんが、血漿等の蛋白を試料とする場合には問題になります。この点については、また改めて紹介したいと考えています。

プラスチック用具をエンドトキシン溶液の調製や保存に用いる場合には、エンドトキシンの容器への吸着が問題となります。ポリスチレン製の用具は水溶液中のエンドトキシンを吸着することは少ないようですが、ポリプロピレン製の用具の中にはエンドトキシンを吸着するものがあり、注意が必要です。この吸着は、製造メーカーや製造ロットによって異なることがあり、共存物質(蛋白等)によっても影響を受けます。

プラスチックが吸着以外の理由でエンドトキシンの活性に影響を与えたという報告は見あたりませんが、製造時に使用される安定化剤や可塑剤がエンドトキシンの活性に影響を与える可能性は考えられます。筆者らも、ある種のポリスチレン製容器に保存した水によるエンドトキシン活性の増強を経験しており、その原因として容器からの溶出物を疑ったことがあります。

このように、プラスチック用具を使用する場合には、汚染と測定への影響について問題がないことを確認する必要があります。この確認は、それぞれの用具の使用条件で行う必要があるでしょう。ガラス用具に問題がないわけではありませんが、とりあえずガラス用具が標準と考えられていることも考慮し、便利なプラスチック用具をうまく使っていきたいものです。

参考文献

  1. 第十二改正日本薬局方解説, B-529, (廣川書店)(1991).
  2. Eight Supplement, USP-NF, p.3349-3350, (Pharmacopeial Convention Inc., MD) (1993).
  3. 日本動物実験代替法学会第6回大会要旨集、p.110-111 (1992).

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