- 研究の最前線、テクニカルレポート、実験のコツなどを幅広く紹介します。 - トップ siyaku blog 合成・材料 アルデヒドを分液操作で取り除く方法 2020年10月 合成・材料 アルデヒドを分液操作で取り除く方法 本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しています。 アルデヒドは入手しやすく高い反応性を持つので炭素-炭素結合形成によく用いられる化合物です。とりわけ多段階合成において有用な中間体ですが、反応後は大抵カラム精製で除去することになります。精製の手間を減らす方法として、Org. Process Res. Dev.に掲載されていた実験テクニック、アルデヒドを分液操作で除く手法をご紹介します。 "Liquid-Liquid Extraction Protocol for the Removal of Aldehydes and Highly Reactive Ketones from Mixtures" Boucher, M. M.; Furigay, M. H.; Quach, P.; K.; Brindle, C. S.* Org. Process Res. Dev., 21(9), 1394-1403(2017). DOI: 10.1021/acs.oprd.7b00231 原理自体は、アルデヒド精製法として知られる手順[関連文献1,2]と同じです。つまり、アルデヒドと亜硫酸水素ナトリウムを反応させてbisulfite adductとし、再結晶などで精製してから逆反応を起こして回収してくるという手順です。 本論文では、bisulfite adductの水溶性に着目し、分液除去するための手順へ変更されています。主に最初のbisulfite adductの形成過程に様々な検討・工夫が凝らされています。 化合物をメタノールに溶かして飽和NaHSO3水溶液を加え、30秒振とうします。 有機溶媒(ヘキサン もしくは 10%酢酸エチル/ヘキサン)で分液抽出します。 いくつかの傾向や基質による制限は以下の通りです。カラムができればそれに越したことはないですが、スケールが大きくなった時など、なるべく別の方法が必要となるケースでは、操作性の向上という点で検討する価値があります。 脂肪族アルデヒド除去の場合は、MeOHの代わりに倍量のDMF溶媒で30分攪拌する必要があります(bisulfite adduct形成が非効率なため)。反応性ケトンも除去可能です。 bisulfite形成の効率差を利用して、アルデヒド/低反応性ケトン間の分離も可能です。 電子の豊富なオレフィンをもつ化合物はSO2との反応副生物を生じる可能性が有ります。この場合、SO2溶解度の低いヘキサンで抽出すると解決します。 アミン化合物はNaHSO3と塩を形成するため、回収率が下がります。 関連文献 "A Novel, Nonaqueous Method for Regeneration of Aldehydes from Bisulfite Adducts" Kjel, D. P., Slattery, B. J. and Semo, M. J. : J. Org. Chem., 64, 5722 (1999). DOI: 10.1021/jo990543v "2-Methyl-3-phenylpropanal" Buntin, S. A. and Heck, R. F. : Org. Synth., 61, 82 (1983). DOI: 10.15227/orgsyn.061.0082 外部リンク 亜硫酸水素ナトリウム(Wikipedia) 関連タグ 実験のコツ Share Twitter Facebook LinkedIn 前の記事 次の記事 キーワード検索 最近の記事 実験の目的に合わせたRNA抽出方法と製品の選び方 【テクニカルレポート】次世代の発熱性物質試験用試薬 ~LumiMAT™の開発~ 【テクニカルレポート】ヒト腎細胞3D-RPTEC®の開発と創薬研究での有用性 【総説】CTGFとSTAT3を介した腫瘍間質反応による肝癌増大進展メカニズム 【総説】核酸合成用ユニバーサルリンカー「PTリンカー」 カテゴリ 合成・材料126 分析184 培養24 体外受精・生殖補助医療18 ライフサイエンス151 医薬品 製造・品質管理8 常用試薬・ラボウェア5 受託サービス6 研究全般41 試薬の日1 Talking of LAL76 Wako Organic Chemical News11 テクニカルレポート123 総説74 特別講座23 連載156 クロマトQ&A55 構造式検索TIPS4 月別アーカイブ 年月を選択してください 2024年10月 2024年09月 2024年07月 2024年06月 2024年05月 2024年04月 2024年03月 2024年02月 2024年01月 2023年12月 2023年10月 2023年09月 2023年08月 2023年07月 2023年05月 2023年04月 2023年03月 2023年02月 2023年01月 2022年11月 2022年08月 2022年07月 2022年06月 2022年05月 2022年04月 2022年03月 2022年02月 2022年01月 2021年12月 2021年11月 2021年10月 2021年09月 2021年08月 2021年07月 2021年06月 2021年05月 2021年04月 2021年03月 2021年02月 2021年01月 2020年12月 2020年11月 2020年10月 2020年09月 2020年08月 2020年07月 2020年06月 2020年04月 2020年03月 2020年02月 2020年01月 2019年12月 2019年11月 2019年10月 2019年07月 2019年06月 2019年02月 2019年01月 2018年12月 2018年10月 2018年07月 2018年06月 2018年05月 2018年04月 2018年01月 2017年12月 2017年10月 2017年09月 2017年08月 2017年07月 2017年04月 2017年03月 2017年01月 2016年12月 2016年11月 2016年10月 2016年09月 2016年07月 2016年06月 2016年04月 2016年03月 2016年01月 2015年12月 2015年11月 2015年10月 2015年09月 2015年07月 2015年06月 2015年05月 2015年04月 2015年03月 2015年01月 2014年12月 2014年10月 2014年09月 2014年06月 2014年05月 2014年03月 2014年01月 2013年12月 2013年09月 2013年07月 2013年06月 2013年04月 2013年01月 2012年12月 2012年09月 2012年07月 2012年06月 2012年04月 2012年03月 2011年12月 2011年10月 2011年06月 2011年03月 2011年02月 2011年01月 2010年12月 2010年09月 2010年04月 2010年01月 2009年12月 2009年09月 2009年07月 2009年03月 2008年06月 2008年04月 2008年03月 2007年10月 2007年07月 2007年06月 2007年03月 2007年01月 2006年10月 2006年07月 2006年04月 2006年03月 2006年01月 2005年10月 2005年09月 2005年07月 2005年04月 2005年03月 2005年01月 2004年07月 2004年06月 2004年04月 2004年03月 2004年01月 2003年12月 2003年10月 2003年09月 2003年07月 2003年06月 2003年04月 2003年02月 2003年01月 2002年10月 2002年07月 2002年04月 2002年03月 2002年01月 2001年10月 2001年09月 2001年07月 2001年06月 2001年04月 2001年01月 2000年10月 2000年07月 2000年06月 2000年04月 2000年03月 2000年01月 1999年12月 1999年10月 1999年09月 1999年07月 1999年06月 1999年04月 1999年03月 1999年01月 1998年12月 1998年10月 1998年07月 1998年04月 1998年03月 1998年01月 1997年12月 1997年10月 1997年09月 1997年07月 1997年06月 1997年04月 1997年01月 1996年11月 1996年10月 1996年08月 1996年07月 1996年05月 1996年04月 1996年01月 1995年10月 1995年07月 1995年04月 1995年01月 1994年10月 1994年07月 1994年04月 1994年01月 1993年10月 1993年07月 1993年04月 1993年01月 1992年10月 1992年07月 1992年04月 1992年01月 1991年10月 1991年08月 1991年03月 1990年12月 1990年10月 1990年07月 1798年03月 タグ Bredereck試薬 DNA ELISA ES/iPS細胞 Exosome Grignard試薬 iPS細胞 microRNA MPV還元 N-ヘテロサイクリックカルベン ncRNA NHC PAタグ PBG qNMR RAFT重合 RNA精製 ScreenFect Trost酸化 UV反応 α-グルコシダーゼ活性阻害 アフィニティータグシステム アミノ酸分析 アルコール酸化 アルツハイマー イオン液体 エクソソーム エンドトキシン クロスカップリング反応 クロマト グリーンケミストリー ジョンソン・マッセイ タンパク質精製 フィンケルシュタイン反応 フッ素化剤 ペプチド合成 ライブセルイメージング ラセミ化 リチウムイオン電池 リビング重合 リムルス試験 レクチン 光塩基発生剤 光学分割 免疫 公定法 再生医療 医薬品 固相抽出 基礎知識 大気汚染 定量分析 実験のコツ 実験データ 幹細胞 昆虫細胞 有機半導体 核酸抽出 機能性食品 水質管理 注目の論文 環境ホルモン 環境汚染 生活習慣病 胚凍結融解 腫瘍 蛍光イメージング 蛍光観察 触媒 試薬・化学の基礎知識 農薬分析 透明化 選択ガイド 遺伝子導入 酵素 酸化触媒 電極材料 電気泳動 当サイトの文章・画像等の無断転載・複製等を禁止します。