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【クロマトQ&A】:高極性物質をLC/MSで分析したいのですがどのような方法がありますか

本記事は、Analytical Circle No.42(2006年10月号)に掲載されたものです。

高極性物質を LC/MS で分析したいのですがどのような方法がありますか。

LC/MSで使用されるカラムは、汎用性の高い逆相系のODS充てん剤(C18、オクタデシルシリカゲル)が主流をなしています。しかしこのODS充てん剤も一部の化合物の分析には適さない場合があり、それを補完する目的でC18より短いC1、C4、C8またはC18より長いC22、C30の炭素鎖の充てん剤、その他フルオロアルキル充てん剤(Fluofix)などが使用されています。

高極性物質を LC/MS で分析する方法としては、上記逆相系充てん剤と移動相にイオンペア試薬を使う、試料を誘導体化する、あるいはイオン交換クロマトグラフィーを使う、などの方法があります。しかしながら逆相系充てん剤は、薬物及びその代謝物に代表される高極性物質に対しては、イオンペア試薬や溶出力の小さい水系の移動相を使用しても分離が達成されない場合があります。また誘導体化する方法も手間がかかり、イオン交換クロマトグラフィーも利用できる試料に制限があります。そこで、その解決策の1つとして、今回は最近注目されている親水性相互作用を利用する方法をご紹介します。

親水性相互作用とは "Hydrophilic Interaction" の訳で、これを利用したクロマトグラフィーは "Hydrophilic Interaction Chromatography (HILIC)" と呼ばれています。HILICとは親水性固定相と大部分が有機溶媒である疎水的な移動相との組み合わせによるクロマトグラフィーで、広義には順相液体クロマトグラフィーに属すると考えられます。

親水性固定相としては、未修飾シリカゲル(シラノール基を有する)のほか、ジオール基、アミノ基、アミド基などを有する固定相が代表的です。

例として未修飾シリカゲルを充てんした、高極性物質分析専用カラム Wakopak Wakosil-Ⅱ 5SIL-AQを使用した生薬成分の分析を示します(図1)。

図1.生薬成分の分析
図1.生薬成分の分析

図のように有機溶媒濃度80 %以上の酸性移動相条件下で分析が可能です。また三環性抗うつ薬(イミプラミン)のような塩基性化合物の分析においてもイオンペア試薬を使用することなく、テーリングを抑制し分析が可能です(図2)。移動相条件は、LC/MS分析にそのまま適応可能です。

図2.三環性抗うつ薬(イミプラミン)の分析
図2.三環性抗うつ薬(イミプラミン)の分析

このように親水性相互作用を利用する方法は、イオンペア試薬を必要とせず、有機溶媒濃度の高い移動相条件で分析が可能であることから、高極性物質を LC/MS で分析するのに有効な方法と考えられます。是非一度お試しください。

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